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アメリカ大統領選
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私の交友は誰々かとお尋ねになるのですか。貴問は私を怏々とさせます。私には友達といふものがないからです。それは私の孤独な、人と和しがたい性格から来てゐるのでせう。どうもさうらしい。 考へて見ると、私には少年時代の昔から友達といふべき者はなかつたやうな気がします。私が十二歳の時、私はちやうど、今日貴社から与へられたと全く同じ質問を、小学校の先生から与へられたことがありました。その時も私は今日と同じやうな不愉快を感じました。 その時先生の質問といふのは、生徒たちの学校外での生活を知るために、各の生徒たちが持ってゐる友達を五六人数へ上げよ、といふのであつた。雨の日の体操の時間で、雨天体操場などのあるべき筈もない田舎の小学校では時をり、そんな機会にそんな事をする時間があつたのです。先生が紙をくばつてくれると、生徒はそれへ返答するのです。人に見られないやうにと肘でしつかりと囲をして、それぞれに小さな頭
東一番丁、 ブラザー軒。 硝子簾がキラキラ波うち、 あたりいちめん氷を噛む音。 死んだおやじが入って来る。 死んだ妹をつれて 氷水喰べに、 ぼくのわきへ。 色あせたメリンスの着物。 おできいっぱいつけた妹。 ミルクセーキの音に、 びっくりしながら 細い脛だして 椅子にずり上がる。 外は濃藍色のたなばたの夜。 肥ったおやじは 小さい妹をながめ、 満足気に氷を噛み、 ひげを拭く。 妹は匙ですくう 白い氷のかけら。 ぼくも噛む 白い氷のかけら。 ふたりには声がない。 ふたりにはぼくが見えない。 おやじはひげを拭く。 妹は氷をこぼす。 簾はキラキラ、 風鈴の音、 あたりいちめん氷を噛む音。 死者ふたり、 つれだって帰る、 ぼくの前を。 小さい妹がさきに立ち、 おやじはゆったりと。 東一番丁、 ブラザー軒。 たなばたの夜。 キラキラ波うつ 硝子簾の向うの闇に。 菅原克己 「ブラザー軒」 『日の底
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