「のちほどお電話を差し上げます」――企業等の電話応対マニュアルにはかならず記載されていそうなこのいいまわし、どうやら、昨今は好まれないようです。 「差し上げる」は「上から目線」だから顧客や取引先を相手に用いるのはもってのほか、ということらしいのですが……。 「差し上げる」は「一 持ちあげる。二 ささげる。三 献上する。〈中略〉五 他人のために労をとる」(新潮国語辞典新装改訂版)です。動作の方向としては「下から上」であり、「上から下」ではありません。同様に「下から上」の、「『与える』『やる』の謙譲語。献呈する。受け手を敬う気持ちをこめていう語」(Yahoo!辞書:大辞林)の意味もあります。 (敬語には、大きく分けて、尊敬語、謙譲語、叮嚀語があります。謙譲語とは「話し手が聞き手や話中の人に対して敬意を表すために、自分または自分の側に立つと思われるものや動作などをへりくだって言い表すもの」〈同〉