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体力トレーニング
mibunochikara.hatenablog.com
私の躰は汚れている…心は躰より穢れている。…お前の今の言葉は同情か…それとも…お前は…こんな鬼を好いてくれるというのか…… 剣に生き Daichi Hirahara Amazon 流転の海(第一部~第九部)合本版(新潮文庫) 作者:宮本 輝 新潮社 Amazon 「なぜ止まる。かすみ、さっ行くぞ」 足下は砂丘が途切れて草地になっていた。 「鷹丸、お前…先に行ってくれ…後から追いつくから…」 「後からって…まさか、かすみ…」 心中を語る代わりにかすみは手にしている小太刀を帯の背に差した。 「才賀丸の怖さは、お前が一番知ってるだろう。俺等が戻ったところで大して加勢にならない…」 「やっぱりわたし…やっと会えた兄ちゃんと共に闘いたいよ。たとえそれで死んだとしても…それにあの悪鬼から逃げてばかりのままじゃ…悔しすぎるじゃないか」 本音を云えば、鷹丸は才賀丸が怖かった。鷹丸の武芸武術の技量は才賀丸の
かすみを救ってくれるなら、俺の命などいつでも殺(と)ってくれ。お願いだ、助けてくれ。 時代小説 ザ・ベスト2023 (集英社文庫) 作者:佐々木 功,矢野 隆,今村 翔吾,米澤 穂信,伊吹 亜門,木下 昌輝,蝉谷 めぐ実,斜線堂 有紀,武川 佑,花房 観音 集英社 Amazon さぶ 作者:山本周五郎 Amazon 承前 再びの曳間宿 かすみが木賃宿を出ていってから丸一日が経っていた。小一郎と玄明(重蔵)が押し黙った夕餉の後、小一郎は二組の布団を敷いた。 本来ならば今朝、曳間を出て遠江から三河(愛知県東部)に入っている筈だった。二人は出発を先延ばしにしていた。お互い口には出さないが、万が一のかすみの還りを待っているのだった。 柱を背にし、忍刀を抱え込んで座って微動だにしない玄明の闇を凝視する黒目には、窓から射し込む月光が反射していた。 小一郎も横臥はしているが、寝られないのは、玄明と同様だ
「あなたに私を殺めるなどできるはずもない」 微かな笑みを浮かべてかすみは出て行った。まさに拈華微笑(ねんげみしょう)であった。 なみだあめ<哀愁> 時代小説傑作選 (PHP文芸文庫) 作者:宮部 みゆき,諸田 玲子,志川 節子,梓澤 要,馳月 基矢,高瀬 乃一 PHP研究所 Amazon えどめぐり <名所>時代小説傑作選 (PHP文芸文庫) 作者:宮部 みゆき,朝井 まかて,田牧 大和,宮本 紀子,篠 綾子 PHP研究所 Amazon 承前 「いきなり何を云う…妹などと、狂ってしまったか」 かすみとて逃げ出すのを忘れていた。 「この護り袋が何よりの証。まぁ聞け、かすみ」 「かすみなどではない。名前などもう捨てた」 小一郎がかすみの縛りを切りながら、 「かすみ殿、あの乱破に帰参するなり、このまま兄重蔵(玄明)の元にいるなりすきにせよ。ただ重蔵の話を聞いてから決めて遅くあるまい」 幽(かす)
さぁ、全て申されませ。玄蕃さま。早魚が、あなた様の苦しみや悲しみの全て背負って差し上げます 峠 最後のサムライ 役所広司 Amazon 山本周五郎全集〈第15巻〉虚空遍歴 (1982年) 作者:山本 周五郎 新潮社 Amazon 承前 小一郎は、早魚(さな)と名乗る女の発する艶麗な色香に逡巡(たじろ)いでしまった。ましてや、女を縁取る彩光に恐怖を感じた。 「俺はどうしたというのだ。頭が可怪しくなったのか…」 早魚の真っ白な指が小一郎の掌をそっと何度も撫でた。撫でられた掌からざわつく快感が小波(さざなみ)のように五体を巡った。小一郎の体は指一本さえ己(おの)のままにならなかった。 「玄蕃さま、お辛かったですね。まだ幼き童(わらべ)が、いかに才を愛でられたとはいえ、他家に仕えるなんて…よくぞ耐えられた。よくぞ頑張りましたね」 小一郎の耳元で囁く早魚の声音が、湯に浸かっているような浮揚感と温もり
悪御所だと!万人恐怖だと!好きに呼ぶがいい!! 余は征夷大将軍足利義教である。余の道を阻む者が仏ならば仏を殺し、神ならば神をも殺す。 籤引き将軍足利義教 (講談社選書メチエ) 作者:今谷 明 講談社 Amazon 前節からの続き 本稿において、足利義教は悪役で登場している。これまでの足利義教の歴史的評価は散々である。悪御所、万人恐怖と称され専制恐怖政治を布いた。彼の意向で誅殺された大名も少なくないとされる。当時の記録よれば、義教の逆鱗に触れ処罰された者は、公卿五九人、神官三人、僧侶十一人、女房七名、この数字には武士と庶民は含まれておらず、実数は更に増えるとされる。中には酒の酌が不調法として尼にさせられ侍女、説法した僧侶の舌を切るなどなど、もはややりたい放題である。 誇張であると思うが、義教に召された武士は、出掛けに家族と水盃を交わし、直垂(ひたたれ)の下には経帷子(きょうかたびら)を着て御
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