結婚して少し経って、同棲していたマンションから今のところに引っ越してきたとき、わたしは「主婦らしくなろう」と意気込んだ。 同棲時代があまりにもひどかった。 天才はいつも寝ていた。 わたしはDSでどうぶつの森をやって、我に返ると、我に返ったことが嫌で寝た。 常にどちらかが畳に敷きっぱなしの布団の上にいた。 引っ越して心機一転、いっきにまともな大人でまともな主婦になろうとした。 気負いすぎたせいか、別に遠くから引っ越してきたわけでもないのに……たった1駅最寄りの駅が変わっただけなのに、心細くて自信がなくて、寂しかった。 引っ越し数日後に、スーパーへ行く途中にある駐車場に、1匹の野良猫が住み着いていることを知った。 焦げ茶のトラ模様で、尻尾が短く曲がった猫だった。 片足が悪かった。 駐車場の周りには、ちょうどよく猫じゃらしが生えていたから、その猫と遊ぼうとした。 初日は「フーッ!」と息をかけられ