このたびの笹井芳樹博士の訃報に際して、発生生物学分野で研究を行ってきた研究者の一人として、心よりお悔やみ申し上げます。 10数年前の早春の頃、笹井博士よりも数歳年上の、やはり京都大学から輩出された逸材の生命科学研究者が自らの命を断ちました。確か、笹井博士はその追悼のための会の1つを開催されたはずです。 世界の生命科学界が失ったものが大きいことは、この2日の間に国内外含め多数の文書やコメントが発出されていますので、そこに加えることは何もありません。強いて言うなら、拙著の中の神経誘導という項目の中でもコーディンの発見者として研究成果を取り上げていました。 後に残された方々の気持ちを思い計ってもなお上回る念慮というものは、私の理解をはるかに超えている部分もあるでしょう。授かった命を全うするのに、他人と比較するべきではありません。遺書にどのような言葉が書かれていたのか明らかではない時点で、笹井博士