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体力トレーニング
note.com/note1blue
安息の地 わたしがそのホテルに列車に乗ってやって来たのは冬がはじまるまえだったように思う。 住み込みで働ける二十代の女性。条件には合っていた。採用がきまり、部屋をあてがわれた。客室と変わらぬ豪華な造りだった。 夜中の十二時になると、地下の一室へわたしは降りていく。エレベーターに乗り、深いふかい場所へ。ところどころランプの火がゆれる曲がりくねった廊下を進み、鉄格子で閉ざされた部屋へと入る。正面、左右の壁はすべて赤レンガでできている。顔が陰になった二人の男がいる。わたしは着ていたものをすべて脱ぎ、両腕を横へ拡げたかたちで正面の壁に固定される。手首のところに冷たい鉄の留め具がくる。宿泊客たちがそのあと部屋へ入ってくる。男も女も、年配のものもいる。 彼らは注射器を手にし、たがいに血を抜き合う。血をゴムまりのなかに注入する。みずからの血液の入ったボールをそれぞれが持つ。そしてそれを、わたし目がけて投
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