(本記事は、電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジンB-plusに掲載予定のエッセーをベースにして動画等を埋め込んだ形に再編集したものです。編集部の許可を得て公開します) はじめに動物学者でありシュルレアリスムの画家としても知られるデズモンド・モリスは、アートを「脳を楽しませるため、日常的なものから非日常的なものを作り出すこと」と定義した(1)。人文学的にもっと洗練された定義はあるだろうが、脳がアートに介在しているのは確かだろう。アート体験の基盤は、知覚・記憶・感情などに関わる脳の機能である。文化的・歴史的な解釈も重要だが、それらも脳にコードされる情報と考えることもできる。脳が美や醜にどのように反応するかを脳イメージング等を用いて解明する「神経美学」という研究分野も生まれている(2)。 アートの制作にも脳は不可欠であろう。手や指の運動は脳によって制御されているし、制作中の作品を評価しなが