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体力トレーニング
tsugata.hatenablog.com
この3月17日から新潟国際アニメーション映画祭が開催された。会期は6日間にも及び、長編アニメ専門のコンペティションというユニークさが際立つ映画祭の、記念すべき第1回である。 日本開催の国際アニメーション映画祭は長らく広島国際アニメーションフェスティバル(広島フェス)がその役割を担ってきたが、これは2020年のコロナ禍によるオンライン開催を最後に30数年に及ぶ歴史に幕を閉じた。この広島フェスの後を受けて、昨年8月に第1回として開催されたのが、ひろしまアニメーションシーズン(アニシズ)である。 そのほか、昨年11月に第9回目の開催となった北海道・新千歳空港国際アニメーション映画祭、そして今年3月に第10回目となった東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)が順調に実績を積み重ねてきている。そこへ新設されたのが新潟フェスである。 今回は新潟フェスの印象を、前編、中編、後編の3回に分けて書いてい
ディズニーは、良くも悪くも今日のアニメーションの基本形を構築し、また特に1928年のミッキー誕生以降、そして1937年の『白雪姫』以降、世界中のアニメーションに影響を及ぼし、それは現在に継続している。 したがって、その研究も世界レベルで継続しているというべきだが、こと日本に関する限り、日本語で読めるディズニー研究関連文献は非常に少ない。 ディズニー関連の文献そのものは多いのだが、そのほとんどが、いわゆる「ディズニー伝説」を声高に述べているものであり、信頼性に乏しい文献も少なくない。もっともこの傾向は、英語文献も同様である。 そうした中で、ディズニー研究に供することのできる数少ない基本文献を3つ紹介しておきたい。 ●「ディズニーの芸術」 著 者: クリストファー・フィンチ(前田三恵子・訳) 出版社: 講談社 刊行年: 2001年 定 価: 8000円 1973年の初版以来信頼され続けているフ
●「世界映画大事典」 監 修: 岩本憲児・高村倉太郎 出版社: 日本図書センター 刊行年: 2008年 定 価: 28,000円 これを読むのに時間がかかったわけではないが、国内外の映画関連のさまざまな事項と人名をまとめたこの大事典を、久々の更新で取り上げてみたい。 定価が2万8000円+税、B5判・上製・箱入、約1200ページという、何かの重しになりそうなライブラリー仕様の大事典なので、個人で所有するかどうか悩ましいところだが、アニメーションだけではなく、映画分野を広く包括しつつ研究を進めたければ、やはり手元にあったほうがラクだと思う。 この中で、さっそく、アニメーション関連の項目について、見てみたい。 その前に。 この事典は、私の知人の間でもずいぶん前から話題になっており、実際、刊行までに10年以上を費やしている。その間、項目を精査し、また日々刻々と変わる映画界の事象を踏まえて加筆修正
編 者: アニメージュ編集部 出版社: 徳間書店 刊行年: 1988年、1989年 「劇場アニメ70年史」は翌年刊行となったが、実質2巻セットの作品事典で、先に紹介した「日本アニメーション映画史」に次ぐ、日本アニメーション研究の基本図書の一つ。 どちらも、A4判タテの判型で、1ページを4区分し、1区分で1作品を紹介している。掲載されている1作品あたりの情報は、画像1点、公開年月日または放映年月日、あらすじ、作品解説、スタッフ名が基本で、限られた紙面を最大限活用して、充実した内容となっている。 「TVアニメ」は、文字通り『鉄腕アトム』(1963)以降から刊行年に至るテレビアニメを扱っているが、掲載第1作品は『アトム』ではなく、前々年におとぎプロダクションが制作した『インスタント・ヒストリー』になっているあたり、実質的な編集長を務めた、完璧主義の原口正宏らしい。 「劇場アニメ」のほうは3部に分
●「ジャパニメーション」はなぜ敗れるか 著 者: 大塚英志・大澤信亮 出版社: 角川書店 刊行年: 2005年 定 価: 743円 (書籍画像省略) 刊行から早や3年が経ち、さすがに話題にのぼることも少なくなったが、その内容、もしくはその内容から導き出される視点は、これからも議論する価値のあるもので、遅まきながら、ここで取り上げておきたい。 大枠としては、日本の漫画・アニメーションの表現様式の起源を戦前から戦時中の「戦時下」に求め、戦後の、主に漫画におけるさまざまな変節点を分析、そして現在、とりわけ刊行時に顕在化していた国家や自治体における日本の漫画・アニメ称揚傾向に対して厳しく批判する、という流れである。 その上で、海外における「ジャパニメーション」人気や、国内における活況は幻影に過ぎない、という結論に向かっていく。 私自身、一般のアニメファンであり、最近では研究者・文筆家として発言し、
●「アニメージュ オリジナル」第1号 出版社:徳間書店 刊行年:2008年9月 定 価:1300円 本当は第2号が出てから取り上げようと思っていたのだが、なかなか出ないので(そろそろ出ているとは思うが)、書いてしまおうと思う。 大人向け、すなわちアニメに関するリテラシーを相当に有するマニア向けの「アニメージュ」として創刊されたと察する本誌、『マクロスF』と『機動戦士ガンダムOO』を2大特集として、アニメの現在形を、主に映像造形に着目する形で捉えている。 たとえば、作画解説にあたって原画をひもとき、絵コンテやレイアウトの重要性を強調するなど、これは疑いなく1970年代にアニメに開眼し、ひいては80年代にそのことにこだわった「オールド・ファン」の視点だ。 私の記憶では、80年代後半あたりから、コミケで売られている同人誌などに、当時人気のアニメーターたちの原画を満載し、「作画パターン」を詳細に解
押井守の最新作『スカイ・クロラ』は、残念ながらヴェネツィアでの受賞を逃したが、北野武、宮崎駿らの作品とともに日本映画3本がコンペティション部門にエントリーされたというのは、それだけでも壮観だった。 それにしても、この押井守という監督も、なんやかんや言われながら、長編をコンスタントに発表できている、世界的に見ても稀有な存在である。それに、宮崎駿のことを「本人が作りたければどんな作品でも作れる監督になった」と評するむきがあるが、その意味で言えば、『立喰師列伝』のようなケッタイな作品まで制作・公開できる押井も相当なものだ。もっとも、『スカイ・クロラ』は、けっこう楽しめたのだが、個人的には、押井の作品履歴の中では、さほど印象に残るものにはなりそうにない。 さて、押井守関連の文献も数多い。それは、押井が(インタビューなどで)お喋りであり、自ら筆をとって雑誌等に寄稿することも多いからだ。抽象的で虚無感
●「宮崎駿・大塚康生の世界」 監 修: 宮崎駿・大塚康生 編 者: 銀英社 出版社: オフィスアクション 刊行年: 1982年 定 価: 4500円 『崖の上のポニョ』公開記念ではないが、宮崎駿関連の少しマイナーな文献を紹介したい。 ちなみに『ポニョ』、私は非常に楽しく鑑賞することができたが、感想を一言で書くと、「宮崎駿も、監督としては「最晩年」に差し掛かってきたのではないか」という感じか。 さてさて、この文献だが、熱心なアニメファン以外にはまだ無名といってもよかった1982年、宮崎駿と大塚康生が関わってきた作品をピックアップして、カラー図版、設定資料、絵コンテを中心に収録し、B5判ハードカバー、318ページという密度の濃い資料集として刊行された。 刷り部数はわからないのだが、1985年に再版されており、私はこの再版本を、88年頃、大阪市内のアニメショップ「アニメイト」で購入した記憶がある
●季報「唯物論研究」第104号 特集「アニメ批評のエクソダス」 発 行: 季報「唯物論研究」刊行会 刊行年: 2008年 定 価: 1200円 今、ちまたで話題沸騰中の本誌。 まだすべてのテキストを熟読していないので、総括的な発言にとどめようと思うが、熟読した上で、あとでまたエントリを変えて加筆するかもしれない。 ここ1〜2年、「日本にはアニメ批評がない」という論調が、また増えてきた。 よく知られているように、『エヴァ』の頃にもそうした論調が脚光を浴びたが、その後落ち着いていた感があった。そして今、再び「アニメ批評の不在」を嘆く声が、一つの潮流を形成していると見ていいだろう。 ここで言われる「アニメ批評の不在」が実態を反映したものか、またその実態を覆すために彼らの主張が有効なものかはまだ不透明だが、基本的には、こうした論調は歓迎したい。私自身、歴史を掘り起こす研究者という立場であり、いわゆ
●「現代漫画博物館 1945-2005」 編 者: 小学館漫画賞事務局 出版社: 小学館 刊行年: 2006年 定 価: 4200円 日本のアニメと漫画との密接な関係については述べるまでもなく、したがってアニメーション研究にあっては、漫画関連の文献に眼を通す機会が多い。 私も、何人もの漫画研究者の知人・友人がいるが、どういうわけか、漫画研究者がアニメーション研究に興味を持つ度合いと、アニメーション研究者が漫画研究に興味を持つ度合いには、少なからず差があるような気がする。 おおざっぱに言えば、アニメーション研究者が漫画研究に興味を持つ度合いは、逆の場合に比較して、かなり低い。これは、個々の研究者単位の度合いではなく、研究者群単位の傾向であって、つまり、漫画研究「にも」興味を持ち、アンテナを張っているアニメーション研究者の割合が少ない、ということである。 さて、本書は、「別冊・資料編」を含む2
もはや宮崎駿研究は、多くの専門家やマニアがいるし、私の出番はないだろうが、今、宮崎作品がらみの仕事を進めていることもあるので、古典的文献を中心に、いくつか挙げてみたい。 ●「宮崎駿イメージボード集」 著 者: 宮崎駿 出版社: 講談社 刊行年: 1983年 定 価: 1300円 「少年マガジン別冊」というムックとして刊行されたものだが、「もののけ姫」原型の絵物語の初出本であり、後の宮崎作品のイメージに直結するスケッチが多く収録されたフルカラー画集。 原典主義に則るとすれば、本書から得られる情報は非常に多いと思われる。 古書のみでの流通だが、まんだらけではたまに見かける。しかし、初版・美本であれば1万円を超える。コレクターアイテムとして求めるのでなければ、多少傷みのあるものを数千円程度で買い求めるほうが得策。 ●「天空の城ラピュタ絵コンテ集」 著 者: 宮崎駿 出版社: 徳間書店 刊行年:
富野由悠季関連の文献を紹介したところで触れたので、再び自著の紹介。ご容赦いただきたい。 ●「アニメ作家としての手塚治虫」 著 者: 津堅信之 出版社: NTT出版 刊行年: 2007年 定 価: 2400円 日本の戦後アニメ界の流れには東映動画系と虫プロ系がある、と言うと、必ず例外的事象を指摘して批判する人たちがいるし、その意見もよくわかるのだが、総体として、この2系統を認識すると、日本のアニメ史は非常にわかりやすくなる。 そして、現在のアニメ発展は、東映動画系か虫プロ系か、どちらの功労ゆえかという質問に答えると、その人のアニメ史観がよく現れる。 もちろん私は、虫プロ系の功労ゆえと評価する側であるが、これは圧倒的に少数派だろう。なにより、東映動画系のスタジオジブリの存在感が巨大だし、年配アニメファンの中には、『太陽の王子ホルスの大冒険』(1968)など、東映動画長編全盛期の「マニア」が多く
●「アニメ大好き!」 編 者: 池田憲章 出版社: 徳間書店 刊行年: 1982年 定 価: 980円 最近、大学などでアニメ史を教えていて痛感するのだが、例えば『機動戦士ガンダム』について、「思い入れもないし、なぜエポックになったのか、わからない」という学生は多い。 現在20歳前後の学生にとってみれば、『ガンダム』第1作は、彼らが生まれるよりも遥か前の作品であり、考えてみれば、やむを得ない。 そういうなかで、本書は、いわゆるアニメブームの熱気を伝える、密度の濃い内容で、一読する価値がある。 サブタイトルに「ヤマトからガンダムへ」とあるように、1977年の『宇宙戦艦ヤマト』劇場版に端を発するブームを中心として、『マジンガーZ』、『勇者ライディーン』、『無敵超人ザンボット3』などを発端とする巨大ロボットものから『ガンダム』以降の富野アニメへの系譜、『銀河鉄道999』を中心とする松本零士アニメ
日本における前衛文学の旗手であり、戦後最大の知性とも評された、作家・批評家の花田清輝(はなだ・きよてる、1909〜74)は、1950〜60年代、文学者が大量に映画批評に参入していた時期において、最も精力的に映画批評に取り組んだ一人である。 しかし、吉本隆明との戦争責任をめぐる議論で「敗北」したことが影響してか、死後現在に至るまで、再評価されているとは言えない。 私がなぜ花田清輝の名を挙げたかというと、彼を含む映画批評を手掛けた文学者の中でも、最も多くアニメーションを批評材料として取り上げ、しかもその批評内容が斬新だったからである。 特に、1950年代、礼賛される以外になかったディズニー映画について、そのリアリズム志向を「なぜアニメーションであんな記録映画のような映像を作る必要があるのか」と、厳しく批判していた点が印象的だった。 具体的には、「漫画映画の方法」というタイトルで、雑誌「キネマ旬
3月15日~20日まで開催された第2回新潟国際アニメーション映画祭(新潟フェス)について、前編ではコンペティション部門への応募作が大きく増え、国際映画祭として高く評価できる点を書いた。 後編では、コンペ作について、具体的に述べてみたい。 全12作を見て感じた全体的な印象からだが、49作の応募作から12作を選出した選考審査委員は、作品の出来の良い順に12作を選んだのではなさそうだ、というものである。 長編アニメといってもさまざまな技法、ストーリーなどがあり、制作国のお国柄や、何より制作者の独創性によって、その内容はさまざまである。49の応募作の全貌を私は知らないので、私の想像になるが、今回の12作は、技法であれば2D手描き系、2Dライブアクション系、3DCG、ストップモーション(人形)まで、多様な選出になっている。ストーリーでいえば、エンタテインメント、民族問題、環境問題、ジェンダー、ドキュ
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