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ノーベル賞
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その1 森下祐行 ■以下の文中では、すべて敬称を略させていただいております。 その1 その2 その3 かつての“本格ミステリ冬の時代”が嘘だったかのように、このジャンルはかつてないほどの活況を呈しています。 これは鮎川哲也の『人それを情死と呼ぶ』(光文社文庫)の巻末につけられた「街角のイリュージョン」という芦辺拓のエッセイにある文章です。芦辺拓はさらにこう続けます。 実際、今となっては非常に奇異な感じがし、説明もしにくいのは、そうした状況が時代の淘汰にあったとか、もっと端的に商業的にペイしないとかいう理由とは無関係なところからもたらされたということです。さて何にたとえればいいのか、かつての社会主義国で市場経済を語ることが“進歩”にそむくナンセンスであると考えられたのにも似て、それは問答無用のタブーといっていいぐらいでした。 知らない若い読者がこれを読んだら、「いやあ、本格ミステリ好きの僕た
まず、ミステリの分類でもっともやっかいな「本格」という言葉についてからはじめます。「本格」という言葉の本来の意味を、歴史的にふりかえりつつ、その中で、現在のわたしの考えも順次述べていきます。 **** 「本格探偵小説」という言葉を作ったのは甲賀三郎ということになっています。 甲賀が「本格探偵小説」という言葉をどう使用したのか、《ぷろふいる》に連載された「探偵小説講話――まえ書」からいくつか引用してみます。(引用は『現代推理小説体系・別巻2』[講談社1980]による) 私が探偵小説の名から排斥しようというのは、所謂変格探偵小説として、探偵は勿論犯罪らしきものさえないものをいうので、之等のものは後に論ずるように、宜しく他の名称を附すべきであると信ずるのである。 我国で変格探偵小説と呼ばれるものは、みな同じ種類のものが欧米で書かれている。只、彼等はこれを探偵小説と呼ばないだけである。 トリックは
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