多様性が担保される社会のかたちとはどのようなものか。 民主主義における「多数者の専制」 フランスの思想家トクヴィルは『アメリカのデモクラシー』という本で、デモクラシー(民主主義)にとっていちばん重要なのは国家と個人の間のアソシエーション(中間的組織)だと強調しました。労働組合や社会団体、宗教団体といったアソシエーションへの参加を通じて、自分とは違う他者の考え方を尊重し、合意形成していくパブリック・マインド(公について考える気持ち)が醸成されていくのです。 トクヴィルはデモクラシーにおける「多数者の専制」に警鐘を鳴らしました。人々はメディアが煽る熱狂的な気分に左右され、さまざまな個性や信仰の自由を抑圧していきがちで、それがデモクラシーのいちばんよくないところだと述べています。たとえば18世紀末にフランス革命が起きたあと、フランスではナポレオンによる専制政治が起きました。デモクラシーの盲点であ