詞書(ことばがき)と絵を組み合わせた六つの段と、絵のみが残る一段の計七段からなる絵巻で、隋の闍那崛多(じゃなくった)が漢訳した『起世経(きせきょう)』に説かれる十六小地獄を表わしたものである。地獄には八大地獄があり、その周辺には十六小地獄があるとされる。『起世経』は、①黒雲沙(こくうんしゃ)、②糞屎泥(ふんしでい)、③五叉(ごしゃ)、④飢餓(きが)、⑤燋渇(しょうかつ)、⑥膿血(のうけつ)、⑦一銅釜(いちどうふ)、⑧多銅釜(たどうふ)、⑨鉄磑(てつがい)、⑩凾量(かんりょう)、⑪鶏(とり)、⑫灰河(かいが)、⑬斫截(しゃくせつ)、⑭剣葉(けんよう)、⑮狐狼(ころう)、⑯寒氷(かんぴょう)、の小地獄をあげているが、現存する場面は②⑩⑨⑪①⑥⑮の順となっており、順序が入れ替わっている。また米国・ボストン美術館が所蔵する⑦一銅釜処にあたる断簡は、かつて本巻の一部であったものと考えられる。なお絵第