『天才伝説 横山やすし』(文春文庫) 週刊誌は野球チームと考えるとわかりやすい。編集長が監督。その下のデスクと呼ばれる人がコーチの役目。記者は選手である。誰をどこで使うかが監督同様、編集長の力量。足の遅い選手に盗塁をさせても意味がないように、相手によって適材適所で記者を使う。名編集長と呼ばれた人は記者の使い方に長けていた。 横山やすしは天才漫才師と呼ばれていた。今では数えきれないほどの芸人が活躍する時代だが、現在もやすしに敵う者はいないだろう。芸だけではなく、私生活でも敵わない破天荒な人生だった。二日酔いのままテレビ出演などは日常茶番事。運転手とのトラブルや数々の暴言はキリがない。著者が本格的にやすしの取材をしたのは、所属の吉本興業から謹慎処分が出て、大阪の自宅で謹慎生活をしているときだった。表向きは謹慎生活中、だが本当の目的は別なところにあった。 まだ10代だった長男でタレントの木村一八