人口扶養能力が高いコメを作ってきたために、アジアの農村部は人口密度が高い。そのアジアで経済発展が始まると、農村と都市との間に急速に経済格差が広がる。 この現象は世界中で観察されるが、農村人口が多いアジアでは大きな問題になる。中国農村の貧困も、タイのタクシン元首相を巡る政争(注:タクシン元首相は2006年の軍事クーデターで政権の座を追われ国外に亡命した)も、農工間格差問題として捉えることができる。 農工間格差を効果的に是正してきた自民党 日本は農工間格差を最も効果的に是正することに成功した国である。自民党というシステムがそれを可能にしたと言える。多くの自民党議員の地盤は農村にあるが、彼らの使命は地元へ公共事業や補助金を持ってくることである。その見返りに票をもらう。 マスコミや識者はこのような利益誘導政治を攻撃してきたが、利益誘導政治が有効に機能したおかげで、日本は中国のように都市と農村の間に
3月15日に安倍晋三首相が正式にTPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加を表明し、国内調整の焦点は関税撤廃の例外確保や農業対策予算の上積みといった条件闘争に移った。 これをにらみ、自民党の農業関係議員や全国農業協同組合中央会(JA全中)など農業関係団体が動きを強めている。 焦点は条件闘争に 「TPPはあなたの生活のさまざまな分野に影響する問題です」 今月12日付の主要大手紙の朝刊などにはJA全中によるTPP交渉参加反対の意見広告が一斉に掲載された。 同日午後にはJAグループが消費者団体と連携し都内で大規模な反対集会を開催。霞が関などをデモ行進し、気勢を上げた。それでも安倍首相はTPP交渉参加に踏み切った。振り上げたこぶしを降ろさないJA全中は15日、万歳章会長が緊急記者会見を開き、「前のめりな姿勢で参加表明に踏み切ったことは到底納得できず、強い憤りをもって抗議する」と語気を強めた。参院選
安倍総理大臣は、オバマ大統領との首脳会談を終え、TPP交渉への参加を、早い段階で、表明する考えを示しました。 しかし、農産物の自由化に反対するJAなど、国内の調整だけでなく、今後は自動車などアメリカ政府との調整作業も待っています。 その作業、一筋縄でいきそうにはありません。 今夜はTPP参加への道筋と課題についてお伝えします。 というのも、TPPに参加するためには、すでに参加している国からの承認(許可)が必要で、そのTPPを主導しているのがアメリカだからです。 TPPは、関税撤廃など高い水準の自由化を目標とし、サービスや投資ルールなどを含む幅広い経済連携協定で、アジア太平洋自由貿易圏の核となることを目指しています。 日本経済の復活を目指す安倍総理にとって、交渉参加は避けて通れない道でした。 一方、自民党は去年12月の衆議院議員選挙で「聖域無き関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉
いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。 伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論 「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する! バックナンバー一覧 農業者はTPPに反対か? TP
野田首相はTPP、日中韓FTA(自由貿易協定)、ASEAN(東南アジア諸国連合)に日中韓など6カ国を加えた東アジア地域包括的経済連携を同時並行で進めるとの指示を出しています。いずれも国内の推進力は弱いのではないでしょうか。 近藤:野田首相の立場は9月の民主党代表選のときから明確です。国益の確保を前提に、TPPと日中韓FTA、東アジア包括連携を同時に進めると明言しています。代表選の他の候補者は「TPPはけしからん」と言っていました。TPPも含めて同時に進めると言ったのは野田首相だけだったのです。 残念なことに安倍晋三総裁を中心に自民党もTPPには反対の姿勢を打ち出しています。野田首相は日本の主要な政治家のうちで唯一、TPPで前を向いていると言えるでしょう。 TPPであれ、日豪FTAであれ、行き着くところは農業問題です。自動車や医療問題などに論点を広げようとする識者もいますが、それは筋違いです
遺伝子組換え表示制度 感情的な主張では国際交渉は闘えない TPP参加で「食の安全」は揺らぐのか?(後篇) TPP参加と「食の安全」を結びつける議論は、往々にして科学的とは言い難いものです。国内の関係者が自分たちの優位性を守るために、市民、消費者の「国産の方が高品質、安全」という錯覚を利用している面を否定できません。前篇のBSE問題に引き続き、具体的に解説しましょう。 残留農薬・動物用医薬品の国内基準が厳しい理由 農薬や動物用医薬品の食品の残留に関して、現行の国内基準が非常に厳しいというのは事実です。しかし、それは、「ポジティブリスト制度」という新しい制度を導入してからまだ時間が長くはたっていない“過渡期”だから、という側面が強いのです。 それまでの残留に関する規制は「ネガティブリスト」方式でした。ネガティブリストは、残留してはならないものを示す制度で、一部の農薬と食品の組み合わせについて基
関税はもちろん、労働や金融、医療サービスなど、国と国の間の規制や非関税障壁を撤廃し、自由な貿易・投資の実現を目指す「環太平洋経済連携協定」(TPP)。13日、野田佳彦首相は、その交渉参加に向け、関係国と協議に入ることを表明した。しかし、TPPへの評価については、与党内でも意見が真っ二つに割れている上、医療業界からは、参加を危ぶむ声が次々と噴出している。TPPとは、この国の医療や介護に、どんなインパクトをもたらし、何を変えるのか。そして日本は、この協定とどのように向き合うべきなのか―。まずは、「医療の中にも、日本から他国にTPPの交渉を呼び掛けるべき分野もある」と提言する日本総合研究所・湯元健治理事の言葉に耳を傾けたい。(多●正芳、●は木へんに朶) 「医療を、外貨を稼げる産業とすべき」と語る日本総研の湯元理事(東京都内) ■TPPを生かし、医療ツーリズムの推進を ―医療の中でも、日本が他国に
2011/11/910:41 TPPの憂鬱 ―― 誤解と反感と不信を超えて 若田部昌澄 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐる議論がにわかに熱くなってきた。反対論を唱える本がすでに昨年から今年はじめにかけて出版されているように、議論そのものはすでに1年近くつづいている。反対派の代表ともいえる中野剛志氏(京都大学工学部准教授)の『TPP亡国論』(集英社新書)は2011年3月の刊行だ。だが、野田佳彦首相が11月12、13日に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に向けて、交渉参加の決定を下すとしたことで議論のボルテージが上がってきている。 ■自由貿易をめぐる誤解 TPP反対論は、煎じつめれば貿易自由化への誤解、アメリカへの反感、政治への不信の3点くらいになるのではないだろうか。 第一に、貿易自由化をめぐる誤解だ。去る10月27日、中野剛志氏がフジテレビ系の『特ダネ!』に出演したと
日本はTPP交渉に参加するのか否か…政府が結論を急ぎだしたことから、政界、メディア、そしてネット世界でも賛否を巡って議論が活発化しているが、反対論にも賛成論にも思うところがいろいろある。 今回の論争は、自由化反対の常連である農業関係団体が異業種を巻き込む「統一戦線」を組むことに成功した点が目新しい。「TPPが農産品自由化だけだと思ったら大間違い」というのである。 なるほど、ネットに盛んに流されている反対意見をみると、TPPが及ぼす影響が懸念される農業以外の分野として表1の諸点などが挙げられている。反対論の共通した特徴は、懸念の論拠として米国政府が米ビジネス界の対日要望をとりまとめた 「年次改革要望書」 (日米双方が要望をまとめてぶつける対話。 いまは「日米経済調和対話」という)を挙げていることだ。 これら懸念のすべてを「荒唐無稽」と一笑に付すつもりはないが、幾つもの誤解があると思う。 「2
この線がいわゆるTPP(環太平洋経済連携協定)発祥の場であることは、米国がなぜTPPに強い関心を寄せるかをよく説明する。 ちなみにこの点が、経済面に偏す我が国のTPP論からはまるで見えてこない。 TPPが天然の対中要害をなす事実に、外務省などは気づいているだろう。けれども菅内閣の誰彼にシャレた説明でもした日には、次の瞬間、「実はアレ、中国への抵抗ラインでしてネ」などとぺらぺらやりかねない。言わぬが花を決め込んでいると想像する。 主役はオバマでなくクリントン 大四角形を図示するのは後回しにし、まず指摘しておくべきは、我々の関心をオバマ大統領からクリントン国務長官へ思い切って転換しなくてはならないということである。 オバマ氏のアジア歴訪は、めぼしい成果に至らなかった。最大の失点は、米韓自由貿易協定(FTA)を仕上げるのに欠かせない妥協を韓国側から取り付け損ねたことだ。 米国産自動車と牛肉に対し
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に対する議論が日本で盛り上がっている。最初に立場を明らかにしておくと、私はTPPに是非参加するべきだと考えている。なぜなら大多数の国民がメリットを受けられるからである。しかし報道記事、とくに日経をみていると農業VS製造業という構図で捉えられることが多い。もちろんこれも間違いではないが、私はもっと一般消費者の利益を強調すべきだと思うし、それが世論を生み出すことにつながっていくはずである。 本稿の読者には釈迦に説法かもしれないが、貿易のロジックをおさらいしたい。200年前にデヴィット・リカードは、貿易が参加国全てに利益をもたらすことの理論的裏づけを与えた。そのロジックはシンプルだ。あるところに大工仕事が得意な弁護士がいたとしよう。彼は並の大工よりも仕事ができるが、大工仕事をするよりは同じ時間で弁護士をやる方がお金を稼げる。であれば、弁護士としてお金を稼ぎその
ここにきて、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)がにわかに注目を集めている。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を前に米国の動向などもにらみながら、日本もこれに参加するという議論が急浮上しているのだ。背景には、米国への接近で中国を牽制(けんせい)する思惑もある。各省庁もTPPによる経済効果の試算を公表し、そのすれ違いがまた、メディアの関心を煽(あお)っているようだ。 TPP推進は政策の方向として間違いなく正しい。だが、現在、描かれているように、官邸が推進派で農水省が抵抗勢力という構図でのとらえ方は本質を見誤っている。いわんや、推進派が反小沢で反対派が親小沢という政局中心的な注目のし方をや、である。 ≪WTO違反の一方でTPP?≫ 重要なのは、TPPが民主党のマニフェスト(政権公約)と相いれない性格のものである点だ。真にTPPを推進したいなら菅直人首相自らがマニフェストの全面見直しを
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