●各駅停車の二十世紀(1) 【ドレフュス事件/H・アレント「全体主義の起源」(1)・第4章より】(川上 徹) 国民の多くが金儲けに狂奔した果てにその夢が破れ、五十万を超える中産階級が一夜にして一文無しに転落した荒涼を背景にその事件は進行した。 金儲けに熱中したのは、植民地事業への投資の見返りを期待した小金持ちばかりではなかった。国家機構を利用して国民から金を巻き上げ私腹を肥したのは、この国の政治家、議員たち、そして官僚、更にはスキャンダルをタネに議員たちをゆすってひと儲けを企んだ新聞界、要するに徒党に分裂したフランス共和政そのものであった。スキャンダルの連続と破産の大波の中から、社会は大量のモップを生み出した。モップは、自分たちが代表されていない議会を憎み、そして自分たちを締めだした社会を憎んだ。 彼らの凶暴な憎しみを煽り、組織し、方向を与えたものは、減びつつある古い社会の基盤に依って立ち