今月号の『新潮』に、一月号に掲載された私の書評に対する鈴木貞美の反論が出た。案の定、完全に議論はすれ違っている。 はじめに断わっておくが、私は書評とは解説や概説ではないと考えている。そもそも、紙幅は限られているので、切り口は限定的とならざるを得ない。鈴木は、反論のはじめに自著(『「日本文学」の成立』)のポイントを解説しつつ、「中島は、この骨格がまるで把握できないまま、「批判」を試みている」と述べるが、鈴木のいう「骨格」は、ほぼ本書の「はしがき」が引用された「帯」の文句そのままだ。 さすがに、「帯」をなぞる程度の解説で貴重な紙幅を費すのは失礼だと考えただけで、その代わり、「近代を支えてきた概念総体を批判的に検討しなければならない」という鈴木のモチーフについては冒頭でそれなりに触れ、それに関わる問題点に絞って論じたのが、私の書評だったはずである。 以下、本をまとめた著者としては不満もあろうが(