【本居宣長と出版業】 私自身が、本居宣長に関心を寄せたのは、10代に遡る。大学生時代、「日本とは何か」という疑問を解き明かしたいと考え、2年生と3年生時の教養ゼミ「古代研究」で記紀万葉集を読み、さらに3年生と4年生時の専門ゼミ「政治思想史」で本居宣長『古事記伝』などに取り組んだ。一筋縄で処すことのできる対象ではなく、何も成果を生むことはなかったが、関心はその後も続いた。 現在の関心「日本における学術出版、大学出版の源流は何か」に即して言うと、拙文「福澤諭吉と出版業」(『福澤諭吉年鑑』42, 2015.12)において「大学出版人の祖」は福澤諭吉であることを明らかにしたが、では、その福澤の出版思想や福澤の出版の基盤となる出版システムはどうであったのかが課題となる。これに関わって大きく前面に登場してきたのが、本居宣長と平田篤胤である。 本居宣長と平田篤胤とによる日本認識と世界認識の変化は、文字意