犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。 p.59~ p.124~ グループホームの居間で、幾人かの女性が和気あいあいと談笑しています。アルツハイマー型の認知症と診断された方々で、どうも会話の内容がバラバラです。 「主人なんてやっかいなもんです。でもいないと困るし……」 「そうそう、うちの息子が公認会計士になりましたんで忙しくてね」 「あら、いいじゃないとっても。浴衣を着ればステキに見えるよ」 認知症のケアにあたる人の間でよく知られた「偽会話」ですが、「共に楽しむ」という情動レベルでは、コミュニケーションは立派に成立しています。論理より雰囲気、情報より情動が、生存にとって基本的に重要なのです。哺乳動物だけが情動という働きを発達させたのは、情動のない生物より生存に有利だからでしょう。コトバを用いた知的活動を細かく