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今朝(4月2日)の日経朝刊に、 「デジタルカルテルの挑戦状 AIが価格調整 法的責任は」 という記事がありました。 見出しを見たときは、「お~、いよいよ来たかぁ」と思いましたが、中身を読むと「あれれ??」という感じでした。 というのは、そこで紹介されているウーバーの訴訟が、まったく的外れ(見出しとかみ合っていない)だったからです。 ウーバーの事件というのは、この記事によると、ウーバーが同社の価格アルゴリズム(AI?)にしたがってウーバーの運転手(ウーバーの社員ではない)に価格を提示するのが、独立事業者であるウーバーの運転手の価格カルテルを促している、というものだそうです。 でもこの事件の本質は、ウーバーの価格が何らかのアルゴリズムで算定されているかどうかとか、そのアルゴリズムがAIを使ったものなのか、とは何の関係もありません。 ウーバーの価格がアルゴリズムを使ったものでなく、たとえばウーバ
懸賞により提供する景品類については、その総額について、 「当該懸賞に係る取引の予定総額の100分の2を超えてはならない。」 という制限があります(懸賞制限告示3項)。 そして、懸賞運用基準7項では、 「告示3項・・・の『懸賞に係る取引の予定総額』について 懸賞販売実施期間中における対象商品の売上予定総額とする。」 とされています。 つまり、景品類の総額は、懸賞販売実施期間中における対象商品の売上予定総額の2%を超えてはいけない、ということになります。 では、メーカーが懸賞により景品類を提供する場合、運用基準7項の、 「対象商品の売上」 というのは、メーカーの売上(卸売価格が基準)でしょうか、それとも、小売店の売上(小売価格が基準)でしょうか。 たとえば、缶コーヒーのメーカーが、メーカー→卸→小売→消費者、という商流で、小売価格1個120円(卸への販売価格1個50円)の缶コーヒーを販売してい
最恵国待遇条項が流通取引慣行ガイドライン第1部第6-1(対抗的価格設定による競争者との取引の制限)に該当するという見解があるようですが、間違いです。 山本一郎(個人投資家・ブロガー)「アマゾン(amazon)が独占禁止法違反の疑いで公正取引委員会に突入される」 流通取引慣行ガイドラインをみてみましょう。 該当箇所は、 「(2) 市場における有力な事業者が、 継続的な取引関係にある取引の相手方に対し、 その取引関係を維持するための手段として、 〔①〕自己の競争者から取引の申込みを受けたときには必ずその内容を自己に通知し、 〔②〕自己が対抗的に販売価格を当該競争者の提示する価格と同一の価格又はこれよりも有利な価格に引き下げれば、相手方は当該競争者とは取引しないこと又は自己との従来の取引数量を維持すること を約束させて取引し、 これによって当該競争者の取引の機会が減少し、他に代わり得る取引先を容
アップルやグーグルが従業員の非勧誘協定について司法省と和解をしましたが、日本では、労働契約に独禁法が適用されるのか、実務上の微妙な議論があります。 例えば今回のアップルのケースが仮に日本で問題になった場合、金井・川濱・泉水『独占禁止法(第3版)』23頁では、 「〔スポーツ選手等に対する報酬カルテルが独禁法違反であることは〕使用者が共同して、事業者にはあたらない労働者の賃金について協定(最高賃金カルテル)を結べば独禁法違反であることと同じである。」 と、労働契約にも独禁法が適用される(賃金カルテルは違法である)ことが、当然のこととして記載されています。 ところが公取委の立場はこれとはことなっていて、例えば、平成24年3月28日事務総長会見では、 「(問) プロ野球の新人契約の関連の話で,読売新聞の報道では,公正取引委員会が平成6年に,契約金に上限を設けると12球団がカルテルを組んで入り口を閉
弁護士植村幸也公式ブログ: みんなの独禁法。 独禁法だって法律です。誰にでも納得できる独禁法を目指します。 ※このブログは私の個人的な見解を述べるものであり、私の所属する 日比谷総合法律事務所の見解とは関係ありません。 This is Uemura, Koya's official blog, "Your Antitrust Law." 最近、あるホテルが、いわゆる牛脂注入肉(念のためですが、成形肉(牛等の生肉、脂身、横隔膜等に酵素添加物や植物たん白等を加えるなどして人工的に結着し、形状を整えたもの)ではありません。)を使ったステーキを、 「和風ステーキ膳」(これも念のためですが、「和牛ステーキ膳」ではありません。) と表示したことが、景表法違反ではないかが問題になっています。 私は、これは景表法には違反しないと考えます。 この論点については消費者庁のホームページにQ&Aがあって、少し長い
メーカーによる販売店の販売方法の拘束が拘束条件付取引(一般指定12項)に該当するか、という問題があります。 有名なところでは、化粧品メーカーが販売店に対面販売を義務づけるのが拘束条件付取引に該当しないとされた事件があります(資生堂事件・最高裁平成10年12月18日判決)。 平成23年度相談事例集でも、インターネット販売の制限(これも一種の販売方法の制限です)が問題になった事例が2つあります(事例1と2)。 平成24年7月4日の事務総長定例会見では、これら2つの相談事例がなぜ異なる結論になったのか、興味深い説明がなされています。 引用すると、事例1は、 「相談のあった医療機器は調整が必要な商品であり,通信販売では調整を行うことができないといった合理的な理由があること, 2点目として,全ての取引先に同等の制限を課すとしていること, そして3点目に,取引先の販売価格について制限を行うものではなか
2種類以上のカードの一定の組み合わせを揃えると景品がもらえる、という方法での景品提供(いわゆる「カード合わせ」)は、景表法上、一律に禁止されています。 例えば、 ①ポテトチップス1袋に ②プロ野球選手のカードが1枚付いていて、 ③プロ野球選手のカードを一定種類(2種類以上)揃えると、 ④豪華(でなくてもいいですが・・・)景品、例えばトロフィーがもらえる、 というようなものです。 「カード合わせ」というのは、あくまで「景品類」の一種として規制されているもので、他の「景品類」の規制のように景品類の額によって規制するのではなく、「カード合わせ」という景品提供方法を一律に禁止する(提供方法の制限)であることが特徴です。 さて、この「カード合わせ」の仕組みは、どのモノが、どの要件に該当するのか、ちょっと分かりにくいので、条文に従って整理しておきます。 景表法3条(景品類の制限及び禁止)では、 「内閣
「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」(以下「インターネット広告ガイドライン」)が一部改正されました。 具体的には、 「商品・サービスを提供する店舗を経営する事業者が、 口コミ投稿の代行を行う事業者に依頼し、 自己の供給する商品・サービスに関するサイトの口コミ情報コーナーに口コミを多数書き込ませ、 口コミサイト上の評価自体を変動させて、 もともと口コミサイト上で当該商品・サービスに対する好意的な評価はさほど多くなかったにもかかわらず、 提供する商品・サービスの品質その他の内容について、 あたかも一般消費者の多数から好意的評価を受けているかのように表示させること。」 というのが、「問題となる事例」に加えられました。 今年に入ってから「食べログ」のやらせ投稿が大きく報道されたのを受けて改正したものですね。 さてこの問題については以前このブログで書いた
カルテルの合意があったのか無かったのか、微妙なケースというのが時々生じます。 例えば、業界団体の分科会に出席したら、公式のアジェンダの討議が終わった後に1社が値上げの話を始めた、というような場合に、それを黙って聞いているだけでも、カルテルの合意があったと認定されるおそれが充分にあります。 なので、こういうことが起こったら、直ちに異議を述べてその場から立ち去る必要があります。 その他には、例えば同業者のゴルフコンペで、4人で回っていたら、自分以外の3人がグリーン上で値上げの話を始めたのが聞こえたが、自分は話には加わらなかった、というのでも、相当危ないです。 この場合は、プレーを即刻止めるくらいの覚悟が必要でしょう。 あと、カルテルの会合に出席した社員の言い訳として時々あるのが、 「自分は同業他社の動向を探るために、情報収集目的で出席していただけで、カルテルの話し合いには加わっていない。」 と
知的財産権にかかわる標準化と独禁法の関係について判断した有名なアメリカの判決に、ラムバス事件判決(2008年)というのがあります。 Rambus Inc. v. FTC, 522 F. 3d 456 (D.C. Cir. 2008) どういう事件かと言うと、ラムバス社が、JEDECという標準化団体に参加しながら、当時JEDECで議論されていたDRAMに関する標準に含まれる技術に関して自社が特許権を持っていた(あるいは出願中であった)のを隠して、まんまと自社の特許技術を標準に採用させ、その後高額なライセンスを請求した、というものです。 いわゆる特許の待ち伏せ(patent ambush)というものです。 これに対して米国FTCが、FTC法5条違反(独占化)で訴追しました。 ワシントンDCの控訴審は、ラムバス社の行為によって同社の技術が標準に採用されたとの立証がなされていない、という理由で、ラ
私は外国のお客さんに独禁法のアドバイスをすることも多いですが、そういうときに、外国人が日本の独禁法について特徴的と感じる点を、思いつくままに挙げてみます。 ①ハードコアカルテルが当然違法ではないこと 欧米はじめ多くの国では、ハードコアカルテルは、競争制限効果の程度を問わず、当然に違法とされています。 これに対して日本では、競争の実質的制限が必要であると明文で書かれているので、当然違法でないことは明白です。 日本でも、ハードコアカルテルが競争制限効果が無かったから違法でないという弁解は、実際にはなかなか通りにくいので、ある意味では理屈の上の話かも知れないのですが、それでも、欧米人からみると特徴的に映るようです。 ②届出義務の無い売上規模の小さな企業結合も違法となりうること 欧州や、その他のいくつかの国では、届出義務がなければ、実体法上も違法とならない、という制度になっています。 でも日本では
弁護士植村幸也公式ブログ: みんなの独禁法。 独禁法だって法律です。誰にでも納得できる独禁法を目指します。 ※このブログは私の個人的な見解を述べるものであり、私の所属する 日比谷総合法律事務所の見解とは関係ありません。 This is Uemura, Koya's official blog, "Your Antitrust Law." 「ポイントカード」や「マイレージサービス」が、景表法の規制に服するのか、という論点があります。 結論からいえば、抽選でポイントやマイレージを与える場合を除いては、一般的には景表法の規制には服さないのですが、説明はちょっと複雑です。 順番に説明しましょう。 実は論点は2つあって、 論点A:ポイントカードやマイレージは景表法上の「景品類」に該当するか、 論点B:景品類に該当するとして、景表法の制限に服するか、 ということを、それぞれ考えないといけません。 まず
よく法令の読み方の基本として、「並びに」と「及び」の違いが説明されたりします。 そして、 1段階だけの接続の場合には「及び」だけを使うけれど、 2段階以上の接続の場合には、大きいグループの接続には「並びに」を使い、小さいグループの接続には「及び」を使う、 という説明がなされるのが一般的です。 しかし、これだけでは条文を読み解くには不十分で、もう一つ押さえておくべきポイントがあります。 それは、「、」(読点)の使い方です。 まず、通常の「及び」と「並びに」の使い方の説明の仕方を見てみましょう。 例えば独禁法7条の2第5項1号(中小企業の場合の課徴金の軽減)では、 「5 第一項の場合において、当該事業者が次のいずれかに該当する者であるときは、同項中「百分の十」とあるのは「百分の四」と、「百分の三」とあるのは「百分の一・二」と、「百分の二」とあるのは「百分の一」とする。 一 資本金の額又は出
インターネットで商品を販売する場合に、事業者が、当該インターネットのサイトへの会員登録を促すために、会員登録してくれた人の全員または一部に何らかのグッズをあげたい、と考えることがあります。 このようなグッズは景表法の「景品類」に該当するでしょうか。 そもそも「景品類」に該当するのとしないのとで何が違うのかというと、提供できるグッズの価格に差が出てきます。 もし「景品類」に該当するとすると、景表法の適用があることになり、登録者全員にグッズをあげる場合には総付景品告示の範囲内、登録者の一部にあげる場合には「懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」(告示)の範囲内でのみグッズを提供できることになります。 これに対して、もし「景品類」に該当しないとすると、景表法の適用がないことになり、提供できるグッズの価格に制限はなくなります(以前はこのような「オープン懸賞」にも一定の制限がありましたが、廃止さ
弁護士植村幸也公式ブログ: みんなの独禁法。 独禁法だって法律です。誰にでも納得できる独禁法を目指します。 ※このブログは私の個人的な見解を述べるものであり、私の所属する 日比谷総合法律事務所の見解とは関係ありません。 This is Uemura, Koya's official blog, "Your Antitrust Law." ロースクール制度が始まってから、法学部以外から法曹を目指す方も増えたようで、なかでも理科系の学部から知財を専門にしようと弁護士を目指す方も相当数いらっしゃるようです。 しかし、理科系の学部からロースクールに入った方は、優秀であるはずなのに成績が伸び悩むという話も聞きます。 私も大学1年生までは工学部におりましたし、法学部に移ったときには理科系科目と法学との余りの違いに戸惑い、「理科系出身者がロースクールで伸び悩む」という話は痛いほどよく分かります。 そこで
不公正な取引方法においては、「不当に」という枕詞がつくものと、「正当な理由がないのに」というのがつくものとがあります。 一般に、 「不当に」とあるのは、その行為があるだけでは違法とはいえず、個別的に公正競争阻害性を判断する必要があるもの、 「正当な理由がないのに」というのは、その行為があるだけで原則違法であるもの、 というようにいわれます。 さて、どうして「不当に」と「正当な理由がないのに」という言葉で、立証責任が転換されるという読み方ができるのか、とくに法律に馴染みの薄い人には分かりにくいと思うので、私なりに整理しておきます。 (なお、「正常な商慣習に照らして不当に」というのもありますが(優越的地位濫用に関する独禁法2条9項5号)、これは「不当」であるかどうかの判断のために正常な商慣習を参酌するということなので、今回は割愛します。) 「不当に○○すること」が「不公正な取引方法」に該当する
下請法に、いわゆるトンネル会社規制というものがあります(下請法2条9項)。 下請法の適用範囲は親事業者と下請事業者の資本金額で形式的に決まります。 例えば、発注者の資本金3億超なら、下請業者の資本金は3億以下の場合に、下請法が適用されます(「親事業者」、「下請事業者」の定義に関する下請法2条7項1号、同条8項1号参照)。 そのため、親事業者に該当しないような小さな資本金の会社を間に挟むことで下請法の適用を免れようとする企業が出てくるかも知れません。 例えば、本来の発注者(A社)の資本金が10億円、下請(B社)の資本金が3億円とすると、A社がB社に直接発注すれば下請法が適用されますが(下請法2条7項1号、8項1号)、A社とB社の間に、資本金1億円のa社を挟むと、a社とB社との間に下請法は適用されないことになります。 そのような脱法的な行為を禁止するとされるのが、トンネル会社規制です。 では、
メーカーが小売店に対してインターネット販売を禁止することは、拘束条件付き取引(一般指定12項)に該当するのでしょうか。 この点、アップルがネット販売を停止したことに関する記事で、 「公取委は「一般論でいうと、メーカーが『このルートで売りたい』と販路を絞り込むことは問題にはならない」(取引企画課)と指摘」 した、と報じられています。 (産経新聞電子版 2010年4月27日 http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100427/biz1004271938043-n1.htm) この公取委取引企画課の指摘は、化粧品の対面販売について定めた資生堂事件(最高裁平成10年12月18日)が、 「メーカーや卸売業者が販売政策や販売方法について有する選択の自由は原則として尊重されるべきである・・・」 としているのと軌を一にするといえます。つまり、メーカーが「このル
カラダファクトリーの屋号で整体サロンを経営するファクトリージャパンに対して、2020年3月18日に、392万円の課徴金支払いを命じる課徴金納付命令が出ています。 この事件は、いわゆるキャンペーンの繰り返しに対して措置命令が出ていた事件ですが、キャンペーンの繰り返しをした場合の課徴金額算定という観点からは、ちょっと興味深い内容になっています。 すなわち、命令書を読むと、 ①2018年1月1日から2月28日までの間に、”今なら通常8,964円が3,980円”といった趣旨の表示をした行為 と ②2018年3月1日から4月30日までの間に、同様の表示をした行為 が、課徴金の対象になっています。 そして、同じく命令書では、 ①の行為の期間中の売上額は62,714,800円、課徴金額は1,880,000円 ②の行為の期間中の売上額は68,311,900円、課徴金額は2,040,000円 と認定されてい
独禁法の実務でもしばしば問題になる米国のattorney-client privilege (弁護士・依頼者間の秘匿特権)について簡単にまとめておきます。 アメリカの民事訴訟にはdiscoveryという証拠開示の手続があり、手元の資料は原則として全て相手方に開示しなければならないことになっています。 このような全部開示の原則に対する例外の1つがattorney-client privilegeというものです。この特権は文字通り、弁護士と依頼者の間のコミュニケーションの内容を秘密とするものです。 またAttorney-client privilegeは刑事手続においても認められます。 以前は、捜査機関が企業に秘匿特権を放棄するよう要請する(放棄しない場合には不利な取り扱いをすることをほのめかしつつ)、ということが行われていて各方面から問題視されていましたが、司法省の2008年の「Princi
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