サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
大谷翔平
left-over-junk.hatenablog.com
昨日のエントリのおまけとして,小ネタを2つ. その1:「習慣」の意味を読みとる 最初のパラグラフをとりあげます: 5年以上にわたってブランドン・ブライアントが働いていた職場は,トレーラーほどの大きさの,窓1つない楕円形のコンテナだった.空調は摂氏17度(華氏63度)に維持され,保安上の理由から,ドアは開けられないようになっていた.ブライアントと同僚たちが座る席の前には,14台のモニターと4つのキーボードが並ぶ. さて,問題はこのあとのセンテンスです: When Bryant pressed a button in New Mexico, someone died on the other side of the world. たんに訳すだけなら困らないと思います.たとえば,高校生の英文和訳ならこんな感じになるかもしれません: 訳例 1.「ブライアントがニューメキシコでボタンを押したとき,地
「あまりにもブログを放置しすぎなのでちょっとはエントリを書きましょう」キャンペーン.翻訳上のコツを1つ,書いてみます. まずは,同じ英文の翻訳を2つ,ご覧いただきましょう: version A 5年以上にわたってブランドン・ブライアントが働いていた職場は,トレーラーほどの大きさの,窓1つない長方形のコンテナだった.空調は摂氏17度(華氏63度)に維持され,保安上の理由から,ドアは開けられないようになっていた.ブライアントと同僚たちが座る席の前には,14台のモニターと4つのキーボードが並ぶ.ブライアントがニューメキシコでボタンを押すたび,地球の裏側で誰かが死んだ. version B ブランドン・ブライアントは、エアコンで摂氏17度に保たれ、治安上の理由でドアを開けることができない長方形の窓のないトレーラーほどの大きさのコンテナの中で5年以上働いていた。ブライアントと同僚達は14台のコンピュ
じわじわとやってます. 原文が(ぼくにとっては)なかなか難しいこともあって,進み具合はゆっくりしてます.12月18日現在で,ようやく第7章にとりかかろうか,というところ. 序文 Preface 1 導入 Introduction 2 ユーモアはなんのためにある? What Is Humor For? 3 ユーモアの現象学 The Phenomenology of Humor 4 ユーモア理論の学説略史 A Brief History of Humor Theories 5 ユーモアの認知・進化的理論が答えるべき20の問い Twenty Questions for a Cognitive and Evolutionary Theory of Humor 6 感情と計算 Emotion and Computation 7 ユーモアをこなせる心 A Mind That Can Sustain H
原文:"Ento Box: The Elegant Insect Meal Of The Future" 虫はタンパク質豊富で,飼育しやすく,そして……あんまりよろこんで食べたいものじゃない.でも,そんな虫でも,ステキでおいしそうな盛りつけにして出されたなら,どうだろう? この6本脚のいきものこそが20年後の食べ物だとしたら,料理はこんないい感じの外見になってくれた方がうれしいよね. 世界中で消費されてはいるものの,虫を食べるなんていうと西洋人は軽く吐き気を催してしまいがちだ.でも,イギリスのデザイン学生のグループによる新しいプロジェクトでは,食用昆虫をもっとグルメなものに見せられないかと考えている. これまで,前衛的なシェフが昆虫食を世間に広めようとがんばってみたことはときどきあった.でも,この学生たちのアプローチでは,昆虫食の問題を美食じゃなくてデザインの問題として取り上げている:つま
ナレーションの訳 ハンガリーでは,税金の 1% を慈善団体に寄付できます.WWFの目標は自然保護なので,あるアイディアを考案しました.たいていのキャンペーンとはちがって,できるだけ少ない紙を使うアイディアです. WWFのチラシを,たった1枚だけ印刷しました.そして2人のボランティアにお願いして,パンダの格好でショッピングモールのエスカレーターの上と下に立ってもらいました.ボランティア1号はチラシをお客さんに渡します.でも,読み終わったあとも,ふつうとちがってチラシはゴミ箱に放り込まれません.どうしてかって? 再利用したからです.ボランティア2号はチラシを返してもらって,逆方向に向かう別のお客さんにそのまま渡したのです. もちろん,チラシ1枚とボランティア2人が永遠にこれをやるわけにもいきません.そこで,この活動を短い動画に撮って,これをジャーナリストやブロガーたちに送りました.このメッセー
小ネタです. Tim Harford, "Three PowerPoint tips you really need to know," Undercover Economist, 31st of July, 2012. マイクロソフトがパワーポイントを買収して25年目になる.おめでとう. 近頃パワーポイントは奇妙な地位にある――いたるところで使われ幅広い人たちに疎まれている.多用ぶりも疎まれぶりも,度が過ぎてる. スピーカーとしてぼくがとても有益だと思ったコツを3つ挙げよう. 1) パワーポイント(や競合製品の大半)でできることは3つある.視覚的な補助をスクリーンに映せる.話し手の覚え書きを箇条書きにできる.みんなに持ち帰ってもらう資料をつくれる.このどれも完璧にまっとうなことだけど,全部をいっぺんにはできない.覚え書きなら小さいカードにして手にもった方がいい.資料は問い合わせ先の詳細だ
このブログをもっとフリーダムな感じで使ってみよう企画. 今回は,プラグ付近で断線を起こしたまま放置していたイヤホンを直してみました. 修理したのは,むかし愛用していた audio-technica の ATH-EM700ti せんせい.このごろは売り場でもあんまり見かけない,耳掛けタイプのややお高いイヤホンです.なかなかよい音を鳴らしてくれます.チタンのハウジングもかっこいいぞ! 実は保証期間中に断線をメーカーさんに無償修理してもらったこともありました.しかし,いまはもう保証期間はとっくに過ぎ去り,製品じたいも生産中止. プラグ付近の断線はありがちなケースのため,ネットに修理のやり方があれこれ書かれております. 参考にしたページ 断線の修理の仕方(耳かけ式イヤホンATH-EM5の場合) - Object Avenue イヤホン、断線、プラグ、修理! - まったりまったり色々と。 イヤホン(
Paul Krugman, "Think of the Children," June 6, 2012) どこぞのうぬぼれた評論家や政治家が「支出を増やして雇用を創出するわけにはいかない,それでは我々の子供たちに重荷を課すことになるからだ」と言うのを耳にするたび,腹が立つ――こういうレポートがあるからだ: いまの世代の若者たちにとって,未来は暗澹たるものだ.フルタイムで働いているのは,6人に1人にすぎない.5人に3人は,親元や親類のもとで暮らしている.大多数(73パーセント)は,キャリアで成功するにはもっと教育が必要だと考えているが,そのうち半分しか来年かならずどこかに入学する予定はないという. といっても,彼らはギリシャやスペインやエジプトの自堕落な若者じゃあない.彼らはアメリカの若者だ――世界でいちばん豊かな国の若者で,大卒の学位をもたず,近いうちに手に入れる見通しもない若者たちのこと
Part 2 からの続き. 『アメリカン・ヘリティッジ』は,アコセラの言いたいことに都合よくはまってくれない.彼女はこれを「恥知らずなまでに規範的」と称する.だけど,この形容はアメリカン・ヘリティッジならではの特徴と矛盾している――同辞典は,用法審議会の投票結果レポートを公表して読者が自分に合ったように利用できるようにしている.アコセラがとくに困惑を表明しているのは,辞書の巻頭にある2本のエッセイだ.1本の執筆者は言語学者ジョン・リックフォードで,彼はカリブ・クレオール諸言語の研究者だ.もう1本の執筆者はぼく. リックフォードはこう記している.「言語学習と言語使用は,体系的な規則と制限なしには実質的に不可能だ.この一般化は,あらゆる言語の変種に当てはまる.俗語も例外ではない」 これこそ規範主義でしょう――疑問の余地はありませんよ. 疑問の余地はない? 一級の馬鹿話だ.リックフォードを知る人
Part 1 からの続きです. たしかに辞書は言語の慣習が変化するのを押しとどめる力をもってはいないけれど,だからって,二分法屋たちが恐れるようにその時代に有効な慣習を規定できないってことにはならない.だからこそ,『アメリカン・ヘリティッジ』は用法審議会(ぼくは座長をやってる)をつくっている.これは,言葉を注意深く選んでいることをその著作が示している200名の著作家・ジャーナリスト・編集者・学者その他の公的人物からなるパネルだ.毎年,彼らは発音・意味・語法に関するアンケートに回答する.同辞書はその結果を問題含みの単語の項目に「用法ノート」として報告している.これには,抽選で選ばれた単語の何十年にもわたる変化も含まれる.用法審議会は注意深い書き手たちの仮想のコミュニティを代表するよう意図されている.用法に関する最良の実践として,このコミュニティにまさる権威はありえない. また,言語変化を凍結
ピラハ語に関して「チョムスキーの言語学を否定する発見をした」とされるエヴェレットの研究について,ピンカーが否定的なコメントを書いています(くろきさんのtwitter経由): "Re: "RECURSION AND HUMAN THOUGHT: WHY THE PIRAHÃ DON'T HAVE NUMBERS" A Talk With Daniel L. Everett," Edge. これは,Edge誌に掲載されたエヴェレットのインタビューへのコメントで,他にエヴェレット本人,ヴァーリン,ペセツキーがコメント(再反論)をしています.ここではピンカーのコメントのみ訳します. STEVEN PINKER [6.13.07] ぼくはダニエル・エヴェレットのピラハ語〔Pirahã,ピダハン〕に関する研究を学術論文と近著の両方で好意的に引用したことがあるし,この分野に向けた彼の批判を言語学者は真剣
ぼやき芸,自嘲的な冗談というものが世の中にはあるのでございます > ある意味でまじめなみなさま 『シュピーゲル』誌インタビューでの発言: シュピーゲル:では,日本で起きたのと同様に,西洋でも「失われた10年」を目の当たりにしているんでしょうか? クルーグマン:それどころか,日を追って日本よりひどくなってますね.日本が味わったのよりも深い停滞にあり,かつての日本より苦しみは大きく,産出ギャップも大きい.10年前に日本について批判的なことを書いていたぼくみたいな手合いは,そろって東京に行って天皇に謝らなきゃいけないくらいです.といっても,彼らの政策がよかったからじゃあなくてですね――日本の政策はひどいもんでした――ぼくらの政策の方が輪をかけてひどいからですよ. SPIEGEL: So, are we looking at a lost decade in the West similar to
いなば先生からご教示いただいた論文 (pdf) をとりいそぎメモ: アブストラクト ケインズ「孫の世代の経済的可能性*1」を踏襲し,本稿では孫たちに残される世界について推測を展開する.まず,過去100年間にわたる経済的・社会的・政治的な生活におきた最重要な潮流を10点とりあげ,概略を述べる.次に,こうした潮流を解釈するための枠組みを提示する.ここで力点を置くのは,こうした過程において政治的権利・市民の権利の拡大と制度の変化が果たした役割である.さらに,この枠組みをもちいて,これら10大潮流をこの先100年に外挿する. (Following on Keynes’s Economic Possibilities for Our Grandchildren, this paper develops conjectures about the world we will leave to our
ジャッケンドフせんせいの『思考と意味のユーザーズガイド』訳読からのながれで再訪. もうずいぶん昔のことですが,『サイエンス』誌に掲載されたハウザー+チョムスキー+フィッチの「言語機能」論文に端を発する,ジャッケンドフ+ピンカーとの論争がありまして,これまたずいぶん前に Language Log で Liberman が論争の流れをまとめていました: Mark Liberman "JP VERSUS FHC+CHF VERSUS PJ VERSUS HCF" (Language Log, August 25, 2005) ウェブ上にある論文へのリンクを拾うついでに,彼のまとめをかんたんに借用しておきます(※注意:原文に忠実な翻訳ではありません): ステップ 1(HCF, 2002):ハウザー+チョムスキー+フィッチによる『サイエンス』誌掲載論文がでる. Marc Hauser, Noam C
「こんなんありますよ」とご教示いただいたので. Making the Social World: The Structure of Human Civilization 作者: John R. Searle出版社/メーカー: Oxford Univ Pr発売日: 2011/08/01メディア: ペーパーバック購入: 1人 クリック: 22回この商品を含むブログを見る Searle, John R. 2009. Making the Social World: The Structure of Human Civilization. Oxford University Press. Preface Acknowledgement ch. 1 本書の目的 The Purpose of This Book 付論:本書の一般理論と『社会現実の構築』の特殊理論 Appendix: Compariso
ともすれば法助動詞の must には「〜しないといけない」(義務・必要)と「〜にちがいない」(認識的必然性)の2つくらいしか意味がないと言われがちですが,これらからはっきり区別されるべき「不可避性」(inevitability) の意味もあります. たとえば,こんな例: a. What this means is that a lot of "demand destruction" must take place over the next few months. (Paul Krugman, "A Pig In A Jacket," New York Times, Oct 7, 2005) b. Even optimists generally concede that the housing boom must eventually end, and that consumers wi
ついついうっかり訳してしまいまった.無許可翻訳につき,今日から2週間の期限付き公開とします. 追記:というわけで,消しました.(12/29)
(updated: 2011/12/11) こわいお兄さんが訳せとおっしゃる.*1 "Bee learning and communication," wikipedia. (http://en.wikipedia.org/wiki/Bee_learning_and_communication) とりあえず途中まで.だれか手伝ってください. 学習 (Learning) 食糧を効率よく収集するには学習が欠かせない.花粉拡散の見返りに花から得られる蜜はわずかであるから,同じ花にミツバチが何度も繰り返しやってくることはほとんどない.1匹のミツバチは朝のうちにさまざまな花を訪ねわたる.そのさいに特定種の花で十分な報酬がえられれば,以後はその花が報酬を産みださなくなったり天候が変化するまでそのタイプの花を訪ねてまわる.ミツバチは連合学習に長けている.古典的条件付けの実験には脊椎動物の方が用いられるこ
ほんらい意図していたこのブログの使い方をさっき電車の中で思い出したので. Larkin, Don (1976). "Some notes on English modals," in J. D. McCawley (ed.) Syntax and Semantics, vol. 7: Note from the Linguistic Underground, Academic Press, New York. (1976), pp. 387-398. 発話時点からみてひとしく「未来」の出来事であっても,関係節に法助動詞 will を使う場合と使わない(使えない)場合とがあります.この使い分けに関連して,ラーキン (Larkin) は興味深い観察をしています(大昔の文献ですが): A variety of terms, such as "future", "volitional", "cha
メモですよメモ.なぜか序文も訳してありますけど,メモですよ. Why We Cooperate (Boston Review Books) 作者: Michael Tomasello,Carol Dweck,Joan Silk,Brian Skyrms,Elizabeth S. Spelke,Deborah Chasman出版社/メーカー: The MIT Press発売日: 2009/08/28メディア: ハードカバー購入: 4人 クリック: 75回この商品を含むブログ (7件) を見る 本書はマイケル・トマセロのタナー講義(スタンフォード,2008年)をもとにしてあり,第1部が講義録,第2部が関連する研究者らによるコメントとなっています. 議論の主題については,トマセロ本人が「序文」で述べてくれているので,そちらを参照してください. 目次 Introduction Part I Why
ちょっとした誤訳を例に,たまには語学的なことを書いてみます. 誤訳の例 CNET の記事から: しかし、エンジニア中心のGoogleの社風、そして、自社ソフトを多様なシステムでテストする必要性は、通常、少なくとも一部のGoogle社員が同環境を好んでいたことを示す。 (グーグル、Windowsシステムの社内利用を中止--Financial Times報道,CNET, 2010年6月2日) 一読してみて,なんとなくおかしな感じがしますね. 太字で強調した箇所に注意しつつ,原文と照らし合わせてみます: (...) but Google's engineering-driven culture and need to test its software on a variety of systems usually meant that at least some portion of its
【追記】:wimble/wirnbleさんからのコメントで,当該の図で意図されていることについてご説明いただきました. コムリーの翻訳エントリで,"he had already left again before Jane arrived" の時間順序を見やすくするため,次の図を付け足しました: これに対し,「はてなブックマーク」の方で,id:wimbleさんに次の図を提示していただきました: 拝見したところ,おそらくは John had left と Jane arrived が同時であることを図示しているものと思います(図の右側). ぼくの図は,この2つの出来事が先後関係にあることを示していますから,これが間違いであることを指摘する意図で提示されているとぼくは理解しています. しかしながら,この例文において,leave と arrive で指示される出来事が同時であるという解釈はありえ
言語学系の様相=モダリティ研究(とくに形式意味論以外のそれ)で一種の古典になっている Lyons (1977) 第17章から一部だけ抜粋してメモしていきます.ライオンズの議論にはおかしい部分があるとぼく自身は考えていますが,それ以前に誤解・歪曲をされやすい文献なので,あらためてていねいにつきあっておきたいというのがその趣旨です. そういう次第ですので,このまま読んでも,たいていの方にとっては「知るかそんなもん」という感じだと思います. 事実の直截簡明な言明(i.e. 定言的断定)は認識的に非-様相的だと記述できる.限定抜きの断定を発話するとき,断定の発語内行為を統率する適切性条件により,話し手はその断定内容が真であることにみずからを拘束(コミット)することとなる*1.しかし,話し手は発話そのものの中で明示的に知識の主張を提示してはいない:彼は「私は〜であると知っている」という認識的に様相化
根拠のない説を信じ込み,増幅していったこの事件には,うんざりするような特徴が多々ある.その一つが,たとえば仮に一部の北極圏言語に雪を表す語根が多数あったとしても,そのこと自体は知的関心をもつに値しないという事実である.そんなことはありふれている.馬の育種者は馬の血統,大きさ,年齢などを数々の単語で区別する.植物学者は葉の形をさまざまに呼び分ける.印刷業者はフォントにいろいろな名前(カスロン,ガラモンド,ヘルヴェティカ,タイムズ・ローマンなどなど)をつけている.どれも当然だろう. しかし,できのわるい言語学教科書に載せられたイヌイットの例のような与太話を,印刷業者について書こうなどと誰が思うだろう.たとえば,ある教科書は大真面目に,「イヌイットの文化においては明らかに,雪が重要な意味をもっているために,英語では一つの単語,一つの意味に対応する概念領域が,いくつかの分明なカテゴリーに切り分けら
アセモグルのインタビュー,今回でおわりです. PDF を例によってアップロードしておきます:こちら Romesh: ダロン,この25年間で経済成長の理解がどれほど進んだのか,おおまかに言ってくれますか.つまり,70年代には,経済成長についてはあまり研究がなされてませんでしたよね.当時は,技術変化は外生的だからぼくらにはこれを説明する手立てはないとされてました.あれから,ものすごい進歩があったわけですよね? そこで,そのへんがどうなっているのか,説明願えますか. ダロン:うん,たしかにものすごい進歩があったと思う.いま言ってくれたとおりね.ソローの成長モデル*1は一時代の知的記念碑ではある.でも,あれは先に進むための理論的な道具立てだったんですよ.ただ,周知のとおり,おおくの政策論議・知的論議はソロー的成長モデルを土台にしていて,そのソロー的成長モデルは物的資本を強調するわけね.物的資本はも
昨日の続きです. Romesh: 現代の経済成長をみると,第二次世界大戦いらい長きにわたって途上国を成長させようと努力を重ねながら,大方は不首尾に終わっていますよね.つまり,せいぜい日本と,少しあとになって韓国や香港あたりがつづいたくらいで,ほんのわずかなものです.近年になって,中国やインドといった一部の大国で大幅な成長がみられました.これを心強く思っていいものでしょうか? 世界のいまなお貧しい地域があれほどの速度の成長を達成して私たちのような発展水準に到達できるという見通しをもてるでしょうか? ダロン:「イエス」でも「ノー」でもあるね.次の意味で,1950年代と60年代の記録はそれほど悪いものじゃなかったとぼくは思う.つまり,ブラジルみたいに急速に成長した大きな国がいくつかあったし,それにいま言ってくれた韓国もあるし,日本はすごく急速に成長してたよね.そこで問題なのは,こうした成長のプロ
【追記:この訳文の PDF をアップロードしました:tr_Acemoglu_2009_INTERVIEW_modern-economic-growth.pdf 】 ダロン・アセモグルの下記インタビューを訳して紹介します: Daron Acemoglu, "Modern economic growth." Interviewed by Romesh Vaitilingam, 27 February 2009. レギュラー先生 (regular_1981) が twitter で,これと「相補的な内容になってるワン」とおっしゃっていたので,遅まきながら手をつけました.全3回にわけてやります. ようこそ,Vox Talks へ.このシリーズでは世界の先進的な経済学者のインタビューをお送りしています.私は Romesh Vailtilingam.本日は MIT のダロン・アセモグル教授のインタビュ
【訳文を追加しました】 【PDF をアップロードしました】 昨日のつづきです: 制度がそれほどまでに国々の貧富にとって重要だと,どうしてわかる? まずはノガレスに目を向けてみよう.ノガレスはメキシコ-アメリカ国境のフェンスで二分されている都市だ.どちらの片割れも,地理のちがいはない.天候も同じだ.同じ風が吹き,同じ土壌の上にある.地理と天候によりもたらされる病気の種類も同じだし,住人たちの民族・文化・言語といった背景も変わらない.論理上,この都市のそれぞれの片割れは経済的に同一となるはずだ. ところが,2つは同一どころの話じゃない. 国境のフェンスをはさんだ片方,アリゾナ州サンタ・クルーズ側では,家計の所得の中央値は3万ドルだ.ほんの数フィート向こうでは,それが1万ドルとなっている.一方ではティーンエイジャーの大半は公立高校に通っていて,成人の大半は高卒.もう一方では,住民のうち高校に通う
【PDF をアップロードしました】 『エスクァイア』誌にダロン・アセモグルが寄稿した文章を訳してみます.3回に分けてゆっくりやります 2回でおわってしまいました.正直,内容はいまいちな感じですが,関心がおありならどうぞ. 国を豊かにするのはなにか? 壮大な問いに経済学者が答える "What Makes a Nation Rich? One Economist's Big Answer," Equire, Nov 18, 2009 あなたが世界の指導者で,自国の経済を繁栄させたいとお望みなら,MIT の学者でクラークメダル受賞者でもあるアセモグル氏が,かんたんな解決策をおしえてくれる:「手始めに自由選挙を」 by ダロン・アセモグル ぼくらは豊かな先進国の人間,持てる者だ.あとの大半の人たち――アフリカ・南アジア・南米・ソマリア・ボリヴィア・バングラデシュの人たちは持たざる者だ.世界はいまま
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『left over junk』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く