「増田、またアイツ来てるよ。カオリちゃん」 バイキングレストランのホールの仕事に就いて5年。 店には様々な客が来る。近隣のOL、交際費をケチりたいママ友や主婦、ランチ難民と化したおっさん…。 カオリちゃんとは、過食嘔吐する客の事だ。スポーツ実業団選手レベルの量の料理をテーブルに並べ、 貪り、吐き、また盛る。決まって小柄でやせ型の若い女で、バイキング店には1-2名の固定のカオリちゃんがいる。 しばらく姿を見せないと思っていたら、また来るようになったか。 「増田皿下げて来てよ。お前が行くと早く帰るような気がするからさ」店長が笑う。 話し声、笑い声が犇めく明るい店内の片隅に、憐れみとも畏れともつかないスタッフたちの無言が佇む。 鷹と呼ばれる背の高い中年男の常連がいた。来店は決まってポイント付与が2倍になる雨の日。 話をする事はなく、こちらがポイント付与を間違えると傘を見せ、外を指差し雨である事を