「こんな場所で死ねたらしあわせだろう」 中学時代、地理の資料集で厳島神社の写真を見て、そう考えた。 こんなに静かで、美しくて、神秘的な場所にひとりでいたら、誰も悲しませることもなく、誰にも悲しませられることもなく、石や草みたいに平和な気持ちで死ねるんじゃないか。そんなことを考えていた。 中学生の頃は、学校にうまく馴染めなかった。「自分」というものにも馴染めなかった。けがらわしい獣の肉体に自分が閉じ込められているような気がしていた。 写真の中の厳島神社は、神秘のかたまりだった。鳥居と、海と、遠くにみえる山のほか何もなく、鏡のような水面は空だけを映し出している。どうして海の上に神社を建てたのだろうか。意味がわからない。すごい。不純物を一切排除するような空間であると同時に、その場所自体が世界から隔絶されているようにも見えた。風ひとつ立たないような静けさを、写真から感じ取った。 自分のなかにある薄