引用第7章 越境学習 7.2 越境学習の深層に存在する主要な社会的ニーズ 一般的に人は同じ組織のなかに長くいると、「過剰適応の罠」 や 「能動的惰性」 にとらわれる可能性が高くなるといわれている。ここで 「過剰適応」とは、組織に人が過剰に適応しだすことによるデメリットである (Chao 1988)。また、能動的惰性とは 過去の成功体験にしがみつき、それを永遠に繰り返そうとする個人の状態をさす(松尾2011)。 第3章で論じたような組織社会化の諸力の影響が強ければ強いほど、個人は組織に慣れていく一方で、 ともすれば組織に過剰適応を果たす。自己の組織の特殊性,ステレオタイプ、特有の思考形式を獲得し、 次第に無自覚になり、「文化的無自覚性」の境地に至る。それが進行しだすと、今度は「能動的惰性」 を獲得する。かくして、創造的な仕事を行おうとする個人,自らのキャリアや能力開発に意識的な個人は次第に減