五所川原の旅、第三弾。 行きの飛行機で太宰の『津軽』を読み返しました。クライマックスは、太宰を3歳から6年間育てた子守りのたけとの再会。太宰は「生まれてはじめての心の平和を体験した」と表現するぐらい感動しています。 先年なくなった私の生みの親は、気品高くおだやかな立派な母であったが、このような不思議な安堵感を私に与えてはくれなかった。世の中の母というものは、皆、その子にこのような甘い放心の憩いを与えてやっているものなのだろうか。そうだったら、これは、何を置いても親孝行をしたくなるに決まっている。そんな有難い母というものがありながら、病気になったり、なまけたりしている奴の気が知れない。親孝行は自然の情だ。倫理ではなかった。 たけが太宰の家に奉公に来たのは太宰が3歳の時で、たけは14歳。太宰の思い出の中ではたけはそんな若い娘ではなく、老成していたということは、感情が安定して愛情深い理想的な養育