奥村晃作は1936年生まれ。東京大学経済学部卒業。大学在学中に「コスモス」に入会し、宮柊二に師事した。現在は「コスモス」の選者である。 奥村は「ただごと歌」の標榜者として知られている。ただごと歌という概念はなかなか複雑なものがあるが、端的に言ってしまえば当たり前のことをあまりにも当たり前に歌うがゆえに当たり前に思えなくってしまうような歌である。ただごと歌の代表と言われるような歌を引くと次のようなものである。 次々に走り過ぎ行く自動車の運転する人みな前を向く もし豚をかくの如くに詰め込みて電車走らば非難起こるべし ボールペンはミツビシがよくミツビシのボールペン買ひに文具店に行く 不思議なり千の音符のただ一つ弾きちがへてもへんな音がす 運転手一人の判断でバスはいま追越車線に入りて行くなり 信号の赤に対ひて自動車は次々止まる前から順に 1首目の自動車の歌などを読むと、オートマティックに進行してい