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「藤田嗣治の戦争画 東京国立近代美術館 無期限貸与」は、私が以前にネットにあげたpdfファイルであるが、なかなかその全14点を見ることができななかった。 今回、MOMATコレクションの特集「藤田嗣治 全所蔵作品展示」で、ようやく全14点を見ることができたので、その全画像をアップし、以前の記事を引用しながら各作品について解説を行い、併せて私見を開陳することにする。 1.南昌飛行場の焼打 1938-39: 再掲。 昭和12年に日中戦争が始まり、昭和13年に藤田は中国に海軍省嘱託として派遣され、現地を見て、日本軍の華々しい戦果を描いた。これは江西省南昌の飛行場に強制着陸する状景である。 大きくて明るい戦争画で、人間よりも機械類に焦点が絞られている。こういった作品が第二次大戦の進展とともに暗い戦争画に変質していく。 2.武漢進撃 1938-40: 再見。 南京から長江を600Km溯った「漢口」に突
美術散歩(とら)のブログ
千葉市美の若冲展は大人気。前期については記事を2本書いているが(その1 白と黒、その2 前期水墨画のお気に入り)、もう後期も半ばを過ぎて、お目当ての《鯨と象図屏風》↓も登場している。 これは近年再発見された作品で、すでにMIHO MUSEUMや静岡県立美術館で展示されており、関東からも出かけた若冲フリークも少なくなかったようであるが、わたしは「果報は寝て待て」で、今回になってしまった。 右隻↓は水辺の白象。ゆで卵のような耳が印象的である。牙や尻尾も面白い。目がチョット淫靡な気がする。背中の牡丹には白く輪郭が残っている。右上の斜めの部分は何を描いたのだろうか。
モネ展の流れで、この「ムンク版画展」を見た。 2013年はムンクの生誕150周年に当たり、オスロ国立美術館と市立ムンク美術館と共同で、世界中から代表作271点を集めた空前の規模の大回顧展が開かれた。 国立西洋美術館で開かれているこの小企画展も「生誕150周年」と銘打っている。ムンクは版画を約850点も制作しているというから、彼の版画は無視できない存在である。 彼の初期の版画作品の多くは、彼自身の油彩画の主題に基づいたものであり、今回もいくつか展示されていたが、それらについては第2報にゆずり、この第1報では初見の 版画集《アルファとオメガ》 について述べることにする。画像は版画素描展示室でフラッシュなしで撮影した写真から作成したものである。 ムンクは1908年秋に神経衰弱のためコペンハーゲンの療養所に入院した。医師の勧めに従って、ムンクは一連のデッサンと文によって一つの物語の制作に取り組んだ
1951年に米国に接収された戦争記録画153点が、「無期限貸与」という形で日本に返還され、東京国立近代美術館が保管しているが、そのすべてが公開されることはなかった。その理由は、① 第二次大戦で被害を受けた近隣諸国に配慮したこと、② 修復すべき作品があったこと、③ 著作権者の許諾が得られない作品があったことの3点だった(参照:「さまよえる戦争画」再考)。 最近、東京国立近代美術館に行ってみると、③以外のものは全点公開されたという掲示↑が出ていた(公開されたものの総数は明らかにされていない)。 しかし、「所蔵作品展」ないし「MOMATコレクション展」を、何年間にもわたって、展示換え毎に見に行ける人は皆無なのではなかろうか。 だとすると、「全点公開」という美術館側の主張と「全点鑑賞」という鑑賞者側の希望とは、著しく乖離している可能性がある。 そこで、2006‐2013年の8年間に訪れた17回の展
これは、東洋館リニューアルオープン記念の特別展で、 2013年10月1日(火) ~ 2013年11月24日(日)に前後期に分けて 、上海博物館所蔵の宋元から明清までの中国絵画40件が展示されている。その中の19件は中国の国家指定「一級文物」である。 日本には存在していない中国絵画の名品をこれほど揃って見る機会はまずないと考えられるので、ちょっと予習をして出かけ、会場ではジックリと見てきた。双眼鏡がとても役立った。 以下、前期に観た作品を章別に概述していく。 第1章 五代・北宋─中国山水画の完成 北宋時代になると、貴族に代わって、社会の中枢をにぎった士大夫たちが自らの感情を表現するために文人画を描きだした。 ・王詵《 煙江畳嶂図巻》: 王詵(おうしん)は、皇帝の妹を妻として迎えていたエリート文人。この図巻は北宋士大夫山水画を代表する名品で、徽宗皇帝が痩金体で題署を書いており、蘇軾もこの画を讃
東京国立近代美術館に153点の戦争画が残っている。これについては、自分自身でリスト「東京国立近代美術館所蔵(無期限貸与)戦争画美術展 一覧」を作成している(こちら)。 これらは国民の戦意高揚のために、日本軍が画家たちに描くことを命じたものであるが、藤田嗣治は率先してこの戦争画を描いた結果、現在、東京国立近代美術館に14点もの作品が残っている。これについて自分で作成したリスト「藤田嗣治戦争画一覧」は、こちらである。 もちろんこの戦争画は他の有名画家も描いていた。中村研一の《マレー沖海戦》↓、鶴田吾郎の《神兵パレンバンに降下す》↓↓、向井潤吉の《四月九日の記録(バタアン半島総攻撃)》、宮本三郎の《山下、パーシバル両司令官会見図》↓↓↓などが、その代表的なものである。 これらの戦争画は、終戦後、一旦GHQに接収された後に返還されたものであるが、公開前日になって、「近隣諸国へ悪影響を及ぼす」などと
室町時代の絵巻《つきしま(築島物語絵巻)》(日本民芸館蔵、↑上図)と絵入本《かるかや》(サントリー美術館蔵、↑下図)を軸にして、江戸時代までのわが国の「素朴絵」を展観した展覧会が開かれているからである。 上記の2点の他に、お伽草子絵巻をはじめとする絵巻物、曽我物語屏風などの物語絵、十王図などの絵解きで用いられた仏教説話画など、素朴表現がなされた作品が多数展示されていた。《かるかや》(サントリー美術館蔵)以外はすべて日本民芸館の所蔵品である。 会期は、2013年6月11日(火)-8月18日(日)であるが、巻替えや場面替えが多いので全部を見ようとすると10回も通う必要がある。そこでやむなく3000円近い図録を買う羽目になったが、帰宅してじっくり読むと、とても良くできた図録だと分かった。 この記事では、展覧会の全貌を紹介しながら、特に興味を抱いた作品のストーリーについて記述する。 会場には個々の
今年の10月は天気が良く展覧会も素晴らしいものが多かったが、11月に入ると気温が急降下し、展覧会もレベルダウンして、見たいものを探すほどになってしまった。たまたま一昨日は天気予報がはずれて、早く雨があがったので、ダウンジャケット・マフラー・手袋の完全防備で六本木に出かけた。 美術館入口に設置された横長の看板↓や大きな赤い提灯↓↓には不思議な存在感があった。この辺のデザイン感覚は流石である。 会田誠という現代作家の作品には何回かお目にかかっているが、どうもわたしの肌に合わない作品が多かった。幸い今まで見たものは、山口晃との合同展が多く、山口晃の作品が会田誠の毒消しとなっていた。 この画家との最初の出会いは、旧知の高階秀爾大原美術館館長から送っていただいた「会田誠・小沢剛・山口晃@大原美術館・有隣荘」の記録集である(記事はこちら)。この展覧会については、artscapeのアーカイヴにも残ってい
1月23日(土)、NHKのBS20周年ベストセレクションとして2003年8月にハイビジョンスペシャルとして放映された「さまよえる戦争画―従軍画家と遺族たちの証言」が再放映され、これに対するコメントもその後に放送された。 戦争画には以前から興味を持っているので見ることにした。とくに2003年と2010年の7年間に戦争画に対する見方がどのように変わったかという点に注意して聴いた。 まず東京国立近代美術館(近美)にある153点の戦争画(わたしの作成した132点の展覧会別リストはこちら)のうち、2003年当時は6割が未公開であるということが紹介された。これは戦争被害を受けた近隣諸国に配慮しているからということだった。 この番組の企画は元戦争画家で戦後倶知安に引きこもっていた小川原脩が2002年8月に死亡する前に、「戦争画は全面公開すべき」という趣旨の手紙をNHKに送ったことからスタートしたようであ
冨山・能登の美術館巡りから戻ってきた翌日、誘われて都美に行ってきた。関係者のご好意で、今回の展覧会の意図や実現までの過程について、美術館連絡協議会の関係者や都美の担当学芸員から直接お話を伺う機会を得た。 美術館連絡協議会(美連協)とは、全国124の公立美術館の連絡協議会であるが、今回の展覧会はその創立25周年記念展とのことである。実際には、100館から220点もの作品が集められた。 今回、北陸の公立美術館を4つ周ってきたが、それぞれの美術館が一生懸命に頑張っておられることが実感できた。しかし、その地域の人たちにどのように受け入れられているかについては、美術館の間に格差があることもうかがい知ることができた。たまたま乗ったタクシーの運転手からは、「XX美術館は、市の道楽ですよ」という言葉まで聞いたし、別なタクシーの運転手からは「YY美術館は私たちの誇りです」という言葉も聞いた。 こういった多様
油彩画ですが幻想的なタッチ。鮮やかの反対…カスミがかかったような色調です。しかしテーマが外国の美しい町の風景。老若男女が歩いていて犬も猫もいて、私もその街を歩いて眺めているような錯覚すらします。絵巻物のように横長の絵が多く、実際のヨーロッパの街の美しい部分を切り取ってつないで作ったような絵でした。あまりにも美し過ぎる感もします。
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