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訪問者 ちょ、ちょっと待ってください。さっきまで私が話していたデモクリトス様はどこへ行ってしまったのですか? デモクリトス 同じ人間が2人存在すると都合が悪いので、オリジナルは消去されました。正確に言うと、オリジナルは原子レベルまで細かく分解された。もちろん、今はすでに、私がオリジナルですが。 訪問者 細かく分解って……。テレポートというのは、素早く移動することではなくて、本人は消滅してしまい、別の場所で本人と同じ人物が誕生するということですか? デモクリトス どう解釈しようがあなたの自由です。ただ確かなことは、テレポート前の彼と、テレポート後の私は、全くの同一人物だということです。ちなみに今回は、テレポート後にオリジナルを消去する設定にしました。この設定だとオリジナルがテレポートの成功を確認できます。 ただ、違和感がある場合は、オリジナルのスキャンが終わった時点で、オリジナルを消去する設
イタリアのボローニャ大学の研究者が、日本の「レズビアン風俗」について調査した。サービスを提供するセックスワーカーや利用者たちに取材を重ねた筆者は、この風俗がとりわけ異性愛者の女性の間で人気が高いことに着目した──。 日本社会では、売春は「必要悪」、つまり男性の鬱積した性的欲求のはけ口を提供することで社会の調和を保つ手段と考えられる場合が多い。 この見方にはいくつか問題がある。男性は本質的に性的衝動を制御できないと暗に認めている点などだ。そのうえ重大な欠陥もはらんでいる。それは、売春を男性だけが求めるもの、あるいは必要とするものという枠にはめていることだ。 日本では、女性のセクシュアリティは異性間の恋愛や母性という狭いレンズを通して見られることが多い。 こうした視点を覆すのが「レズビアン風俗」だ。 レズビアン風俗とは、女性のセックスワーカーが女性客に性的サービスを提供する風俗店を指す。日本で
新生デモクリトス(以下、略) どうです。簡単でしょう。それではリサ様を病院に置かれているスワンプに転送しましょう。 訪問者 ちょ、ちょっと待ってください。さっきまで私が話していたデモクリトス様はどこへ行ってしまったのですか? デモクリトス 同じ人間が2人存在すると都合が悪いので、オリジナルは消去されました。正確に言うと、オリジナルは原子レベルまで細かく分解された。もちろん、今はすでに、私がオリジナルですが。(続く) ※ この記事は『哲学者と象牙の塔』からの抜粋です。 『哲学者と象牙の塔』(著:田中正人)は好評発売中! ヒット作『哲学用語図鑑』の著者が、悩める現代人に贈る哲学ファンタジー。マンガと文章で構成される物語は、哲学入門にも、深く哲学を理解したい人にも最適。
2024年、京都市京セラ美術館で村上隆の個展「村上隆 もののけ 京都」が開催された。ここで展示された作品の多くは、現在ロンドンで開催中の彼の個展で見ることができる。これを機に、英紙「ガーディアン」が村上にインタビューをおこなった。なぜいま、「洛中洛外図」や「風神雷神図」を描こうと思ったのか。テレビドラマ『SHOGUN 将軍』を見て感じたこととは──。 きっかけは『SHOGUN 将軍』 それはたしかに京都なのだが、我々の知る京都とは違う。桜の景色と金色の寺社は忘れよう。村上隆によるこの巨大な新作をじっくり眺めると、そこにたなびく雲には漫画風のどくろが浮かび上がる。 村上いわく、それは古代からある京都の葬送地、鳥辺野を意味しており、また彼にとっては戦後日本の幽霊たちを呼び覚ます重要なモチーフらしい。 「観光客にとって美しかったり楽しかったりするのではない京都を、どうしても描いてみたかったんです
ロシアが拡大した「金ビジネス」 スーダンでは2023年4月から、スーダン国軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」との内戦が続く。 RSF司令官のモハメド・ハムダン・ダガロはラクダ販売業者から軍人に転身した人物だ。彼は2017年にスーダン有数の金鉱山のひとつを手に入れ、莫大な富と権力を獲得した。 RSFの司令官ダガロ。米政府は1月7日(現地時間)、RSFがジェノサイド(集団虐殺)をおこなったとして、ダガロに制裁を課すと発表した Photo: Declan Walsh/The New York Times 国連の報告によれば、ダガロは金鉱山で得た利益を50社もの関連企業へ流し、その対価として武器と戦闘員を手に入れ、RSFを強力な軍事組織へと変えたという。自身の「帝国」を築いたダガロは、後に金鉱山をスーダン政府に2億ドル(約315億円)で売却し、さらに多くの武器と政治的影響力を手中に
1機のプライベートジェットが、南スーダンの首都にあるジュバ国際空港に着陸した。 乗っているのは、隣国スーダン共和国の準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の幹部だ。 彼は、スーダン西部ダルフール地方から密輸された数百キロの金塊を回収するためにジュバにやってきた。RSFが実行支配するダルフールでは人々は暴力に怯え、飢餓に直面している。 ポーターが、2500万ドル(約39億4000万円)相当の金塊が詰まった重いケースをジェット機内に運び入れた。世界最貧国のひとつであるアフリカ東部の主要空港では、異様さが際立つ光景だ。 90分後に離陸したこの飛行機は、2024年3月6日の未明にアラブ首長国連邦(UAE)の私有空港に着陸した。飛行機から降ろされた積み荷は、たちまち金の国際市場へと消えていった。 金がスーダンを破壊する 街が焼かれ、市民が飢えに苦しむ一方で、スーダンはいま“ゴールドラッシュ”に沸いてい
USスチールの買収をめぐり日本製鉄とライバル関係にある米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスのCEOが、「日本は悪」と発言。大企業トップらしからぬ暴言だが、トランプ2期目の米国ではこのようなジャパン・バッシングが再燃すると、英紙「フィナンシャル・タイムズ」は警鐘を鳴らす。 日本製鉄CEOの「家も犬も奪ってやる」 創業177年の歴史を持つ上場企業のトップにとって、マフィアのボス呼ばわりされるのを防ぐ確実な方法はない。それでも従来からある戦術の一つとして、106分間の記者会見を開いて、競合を破滅させてやるとか、そのCEOの家や飼い犬まで奪ってやるとか脅迫することは避けてきた。 ところが、2025年の幕開け、その慣例は米鉄鋼大手クリーブランド・クリフスのローレンソ・ゴンカルベスCEOによって破られた。そして米企業界ではこれから日本に対するもっと痛烈な暴言が飛び出してくるだろう。 21世紀の日本は悪よ
SNSの登場により、あまりにも多くの人がオンライン上で自分自身のことを積極的に発信するようになった。しかし、ここには大きな「罠」がある。自分について語ることの依存性と悪影響、そしてその習慣を断ち切る方法を、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)で幸福とリーダーシップについて教えているアーサー・C・ブルックスが解説する。 8割は「自分のこと」 自伝を書こうと思ったことはあるだろうか。最近では、有名でなくても自伝を書く人が増えている。私たちは私生活を見知らぬ他人と気軽に共有するようになり、自伝は身近なものになった。 だが、書きはじめる前にちょっと考えてほしい。あなたが自分の人生について魅力的だと思うことが、他人にとっては魅力的に映らないかもしれない。ある出版社の言葉を借りれば、「個人的な体験談に過ぎず、退屈このうえない」原稿があまりにも多いのだ。 そして、自伝の執筆計画を考え直すなら、もう一
デカルト そうですか。まあ、限界状況に立たされたときでしか、人は真理に気づくことができないと考えるヤスパースのような人物もいますからね。 訪問者 ヤスパース? どなたでしょう。 デカルト 実存主義の哲学者です。「限界状況に立たされたとき、人は包括者と出会う」。彼の言葉です。 訪問者 包括者? 誰ですか? デカルト ヤスパースによれば、包括者は人とは限りません。包括者とは、仕事や家事などの生活にとって大切な何かではなく、その人の人生にとって大切な何かだそうです。いずれにせよ、今回はお役に立てなくて申し訳ありません。 訪問者 そんなことはありません。お会いできて本当によかったです。 デカルト それは何より。ああ、それから……。先ほどお話に出たVRやAR機器なら、ここヴァルカンシュタイン城には、超高性能グラスの貸し出しがあります。私もよく、VRグラスで白亜紀の地球を旅したり、ARグラスでこの城を
小国モナコに次いで、高齢化率が世界で2番目に高い日本。そんな日本のなかで、高齢化率1位の村が、群馬県にある。スペイン「エル・パイス」紙の記者が現地を訪ね、地方が直面する「過疎化」と「出生率の急落」という二大問題の解決策を探る。 群馬県南牧(なんもく)村は、世界的に突出して高い日本の高齢化率の先頭を行く村だ。南牧村では65歳以上の人口が全体の3分の2以上を占め、子供は3%に満たない。村民のうち約100人が、村にある高齢者施設に入居しているか、毎日通っている。一方、村の学校では教員の数(26人)が生徒の数(22人)を上回る。日本の大都市では住宅価格が高騰しているが、南牧村には空き家が597軒あり、どうやっても住人が見つからない状況だ。 南牧村の人口は約1500人。130キロほど離れた東京を走る電車1編成に収まる人数だ。村の平均年齢は69歳以上。人口ピラミッドの形は、ハート型にも似た逆三角形で、
※本記事は『ロックの歴史』(中山康樹)の抜粋です。 ロックはどうやって生まれた? 定番のフレーズに従い、「ビートルズからすべてが始まった」ことにすれば、どんなに楽だろう。実際にこれまでのイギリス・ロック史は、ビートルズを出発点として語られることが多かった。だがビートルズ以前にも無数のミュージシャンやグループが存在した。 そして「ビートルズが初めて」とされる事柄のいくつかも、すでに彼らの手によって実践されていた。しかし、そうした事例を列挙したところで、「イギリスの謎」が解けるとは思えない。 そこで試みとして、音楽の地図を1900年代初期にまで遡って広げてみる。そうすることによって、主にアメリカとの関係性から、ビートルズやローリング・ストーンズが登場するまでの音楽的な推移や変遷が、ある程度はつかめるだろう。 どうしてイギリスに「あのようなロック」が生まれたのかということもわかるかもしれない。そ
※本記事は『ロックの歴史』(中山康樹)の抜粋です。 戦争の傷痕が残る故郷 のちに「戦争は終わる。もしもあなたが望むなら」と歌うジョン・レノンとその世代にとって、第二次世界大戦はどのように映っていたのだろう。 第二次世界大戦が終結した1945年当時、近未来にビートルズやローリング・ストーンズとして世界を制覇する若者たちは、まだ音楽にも出会っていない少年や子供だった。生まれていない者さえいた。ローリング・ストーンズのキース・リチャーズは次のように語っている。 「俺たちは、戦争の名残の空爆の残骸と瓦礫に囲まれて育ったんだ。ロンドンには大きな建物もあったけど、角を曲がると、突然3エーカーの空き地が広がっていたし、車もほとんどなかった。通りは馬糞だらけさ。馬糞の臭いと石炭の煙があちこちでディーゼルの黒煙と入り混じっていた、あのころのロンドンが懐かしいよ。命取りになる猛毒の混合物さ」 ビートルズのメン
「ペイパル」「オープンAI」「パランティア」などテック大手の共同創設者、起業家、投資家、億万長者であり、ドナルド・トランプ米大統領の一期目では政策顧問も務めたピーター・ティールが、英高級紙「フィナンシャル・タイムズ」に論説を寄稿し、物議を醸している。 「真実と和解のとき」と題されたその論説で、ティールは“予言者”めいた書き出し方をしている。 「トランプが米大統領に返り咲くことは、アンシャン・レジーム(旧体制)のさまざまな秘密のアポカリプシス(暴露)の前兆だ」 フランス革命前の政治・社会体制を指す言葉を使ったり、わざわざギリシャ語の「アポカリプシス」という単語を持ち出してみたりと仰々しいが、トランプ二期目では、米国の「旧体制」が国民に開示してこなかった、もろもろの「真実」が徐々に明らかにされていくだろうと言いたいようだ。 このアポカリプシスは報復を正当化するものではなく、「再建と和解」のため
歴史家・人類学者のエマニュエル・トッドはかつて、米ドナルド・トランプの第一次政権について、「偉大な大統領だったとは言えないが、重要な大統領ではあった」と評価していた。そのトッドが、仏紙「フィガロ」のインタビュー番組に出演。トランプ次期政権についての展望を語った。 ソ連の崩壊や英国のEU離脱を予言したフランス最大の「知性」はいま、「トランプ2.0」の世界をどう見るのか。 「米国が敗北したときの大統領」として名を残す インタビューは、「トランプが大統領に返り咲いても、米国は偉大な国には戻れないのか」という問いから始まる。 これに対しトッドの答えは、「米国が偉大な国に戻れるとは考えていません」。「いま、多くの人がトランプを勝者だとみなしていますし、実際、トランプのシステムのなかでは彼は勝者ではあります。ですが、彼は経済がボロボロになりつつある米国で、勝者になっているに過ぎません。しかも、その米国
世界一の金持ちで、次期トランプ政権では要職に就くイーロン・マスクが、その「帝国」を着々と築いている米テキサス州に、モンテッソーリ式の幼稚園を開く。その動機は何なのか。米経済メディア「ブルームバーグ」が取材した。 この幼稚園は「アド・アストラ」と呼ばれ、米テキサス州バストロップ市郊外で開園することが、公開請求によって入手した、同州当局への提出書類からわかっている。 ロケットや電気自動車、脳インプラント、ソーシャルメディア、さらには次期トランプ政権と並行して、イーロン・マスクは幼稚園から大学に至るまで、教育にますます注力するようになっている。 2023年には、「ブルームバーグ・ニュース」の報道で、マスクの構想の一部が明らかになった。「マスク財団」がおよそ1億ドル(160億円弱)を確保して、テクノロジーに特化した初等・中等学校をテキサス州オースティンに開き、やがては大学まで開く計画があることがわ
日本にとって史上最大の賭け 世界的な最重要技術を専門とする日本の第一人者らは、138回にわたるZoom会議を経て計画を策定し終えた。ここ半世紀あまりで日本最大となるであろう産業復興に向けた青写真が完成したのだ。 2020年に安倍晋三首相(当時)に進言されたこの極秘プロジェクトは、世界をリードする半導体産業を短期間でにわかに出現させることを目的としていた。日本はかつて、6000億ドル(約90兆円)もの規模をもつ半導体業界をリードする国だったが、やがて米国、韓国、台湾にその座を明け渡すこととなった。それを取り戻そうというわけだ。 半導体業界のベテラン経営者で、このプロジェクトグループを率いた小池淳義は「日本にとっては明治時代以降でもっとも重要なプロジェクトだと、私は安倍元首相にお話ししました」と振り返る。日本が近代世界への仲間入りを果たして変貌を遂げた19世紀になぞらえたのだ。 この青写真から
日本製鉄によるUSスチールの買収計画について、米国のジョー・バイデン大統領が国家安全保障上の懸念を理由に禁止命令を出してから10日後の1月13日、米製鉄大手「クリーブランド・クリフス」が別の米鉄鋼メーカーと協力してUSスチールを買収する可能性があると、米経済メディア「CNBC」が報じた。 クリーブランド・クリフスはUSスチール全体をすべて現金で買収し、それからその子会社「ビッグ・リバー・スチール」を鉄鋼メーカーの「ニューコア」に売却するとの情報を関係者から入手したと同メディアは伝えている。買収額は、1株あたり30ドル台後半の見通しだという。 一方、日本製鉄は1株あたり55ドル、総額140億ドル(2兆2000億円超)以上でUSスチールを買収する計画を提示している。 13日、クリーブランド・クリフスのローレンソ・ゴンカルベスCEOは記者会見を開き、USスチール買収に改めて意欲を示したが、詳細は
成人男性が、妻の母乳を毎日飲む──そんな衝撃的な慣習が、2018年にウガンダの保険相の発言によって明らかになった。こうした行為は、母体だけでなく赤ちゃんに与える悪影響も懸念されている。 母乳を摂取する男性たちは「元気がでる」「セックスのきっかけ作りになる」と言うが──。 ジェーン(仮名)の夫は母乳が好きだ。 「味が好みだし、健康にもいいと言っています。母乳を飲んだあとは、体調がいいと言うんです」 ウガンダ在住で、生後6ヵ月の赤ちゃんがいる20歳のジェーンはそう語る。彼女によると、夫が母乳を求めるようになったのは、彼女が出産を終えて病院から帰宅したその晩のことだったという。 「夫は、私の母乳を出やすくするためだと言いました。私も、飲ませても問題ないと思ったのです」 赤ちゃんを差し置いて母乳を飲む夫 ウガンダの一部地域やタンザニア、ケニアの一部で、パートナーの母乳を飲む男性は珍しくない。しかし
『ワーク・シフト』『LIFE SHIFT──100年時代の人生戦略』の著者リンダ・グラットンが、変化の激しい現代のワーク・ライフ・バランスを論じる連載。 パンデミックの時期は、日々の事柄にうまく対処するマネージャーの役割が重要視された。しかし「ポスト・パンデミック」のいま、組織のなかで働く人々のやる気や当事者意識は、長期的な明るいビジョンをトップのリーダーが示せるかどうかにかかっている。 時代の変化は意識の変化 組織の頂点に立つリーダーには何が求められるだろうか? こんな時代だからこそ、私たちはそんなことを考えるものだ。 ビジネスにおいて、部下への接し方がリーダーの手腕の判断基準となっている場合も多い。最もシンプルな形であれば、「この会社にむこう3年の間は在籍するつもりだ」というアンケート項目への回答から判断できる。 あなたの会社が従業員の意識調査アンケートを使っているなら、この問いは最も
遺体は「コレクション」していいのか 2024年10月初旬、オックスフォードシャー州テッツワースの競売会社「スワン」は、西アフリカの頭蓋骨や南米の干し首など、数点の遺体を出品した。ところが、オックスフォードのピットリバース博物館の代表者や先住民活動家がこれに異を唱えたため、数日も経たないうちに出品は取り下げられることになった。 ピットリバース博物館は考古学と人類学を専門としている。同博物館は脱植民地化プロセスの一環として、自らのコレクションから品物を返却してきた過去がある。 スワンによって出品を取り下げられた遺体(装飾された頭蓋骨が大部分を占めていた)は、植民地時代に収集されたものと思われる。推定価格は2000ポンドから2万5000ポンド(およそ38万~480万円)だった。 これらは、雑誌「プレイボーイ」の創刊者でいまは亡きヒュー・ヘフナーや、「ヘッドハンター」を自称する悪名高いカナダの古物
米マクドナルドが多様性への取り組み「DEI」を縮小すると発表。その理由として「the shifting legal landscape(変化している司法の風景)」を挙げたが、いったい何のことなのか? 元NHK解説主幹でジャーナリストの池畑修平が解説する。 世界中でハンバーガーを提供してきたマクドナルドは、米国の一つの象徴といえよう。その米マクドナルド社が1月6日に発表した声明も、いまの米国を端的に表す内容であった。従業員の多様性などを確保するDEIの取り組みに関して、その一部を取りやめると明らかにしたのだ。 DEIは、Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包摂性)の頭文字からなる。性別、人種、国籍、宗教、性的指向などによって差別されることなく、多様な人々が尊重され、またその多様性が組織の強みにつながるという考えに基づく取り組みだ。近年、国境を越えて多くの
結論から言ってしまおう。中道政党だけを集めて新たな連立政権を組もうとするやり方を続けているかぎり、フランスがいま陥っている政治の危機から抜け出すことはできない。いわゆる「常識をわきまえている政党」だけを集めて国の統治に当たらせようとする考え方は危うい幻想なのだ。 ここで言っているのは、中道左派の「社会党」から中道右派の「共和党」までを結集して政権を担わせ、「急進的な政党」である左派の「不服従のフランス」や右派の「国民連合」を政権から排除する考え方のことである。 そんなやり方をしていても、失望が重なっていくだけだ。その結果、問題となっている急進政党をさらに伸長させてしまう。 まず言っておきたいのは、「常識をわきまえている人たち」だけを集めて連立政権を作ると、まるで「恵まれている人たち」だけを集めて作った連立政権にそっくりになってしまうことだ。いまは民主主義の危機を切り抜けようとしているときな
大勢の人間をひどく傷つける不倫をした筆者。自分の気持ちに罪悪感を抱きながら、それでも心が求める幸せを諦めることはできず……。 この記事は、愛をテーマにした米紙「ニューヨーク・タイムズ」の人気コラム「モダン・ラブ」の全訳です。読者が寄稿した物語を、毎週日曜日に独占翻訳でお届けしています。 すべてを壊す「裏切り」 どんよりとした11月のある日、アイダホ州のボイシにあるDKドーナツで、ロンドンにいるセラピストと電話で話していた。現地には夫もいて、もし別の男性と恋に落ちて世界をひっくり返さなければ、私もあっちにいるはずだった。 壮大な裏切りだった。デイヴィッドの妻と、私は何年も仲良くしていた。彼が私の夫と親しくしていたのと同じように。私たちは日曜日のランチや祝日の食事を共にし、両家あわせて50年にわたる結婚生活を送っていて、5人の子供がいる。デイヴィッドと私はいつも静かに惹かれあっていたけれど、そ
新年の始まりはいつも投資家にとって課題となる。戦略とポートフォリオを見直す機会だからだ。 2025年は特に難しい年となる。ドナルド・トランプ氏が1月20日にホワイトハウスに復帰することで、投資家は多くの政策変更を予想している。その中には、移民規制の強化、企業規制の緩和、2017年の減税措置の延長、関税の引き上げなどがある。 さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを続けると予想される。株式のバリュエーションは、特にテクノロジーや通信サービスなど成長の早いセクターで割高に見える。 つまり、投資家が注視すべき点は多い。金融の専門家10人に市場と経済の見通し、投資家への提言を聞いた。 1.マグニフィセント・セブンを超えて ゴールドマン・サックスの米国株チーフストラテジストのデービッド・コスティン氏は、2025年は市場の上昇銘柄が増えると予想している。 これまで数年間は、グーグルの親会社アル
ニューヨークで見知らぬ人に声をかけ、その人の自宅を訪ねるインフルエンサーがいる。ニューヨーク版の「家、ついて行ってイイですか?」を実践したこのインフルエンサーは、日本を訪れて価値観が変わったという。 2年ほど前、ケイレブ・シンプソンは、ニューヨークに暮らす一般人に自宅を紹介してもらうという試みを開始した。iPhone片手に通りすがりの人々に突然声をかけ、持ち家なのか賃貸なのか、月々の家賃はいくらかと質問を投げかける。もし相手が答えてくれれば(これは稀だったが)、さらに踏み込んで、自宅を見せてもらえないかと頼み、それをSNSに投稿したいと伝えるのだ。 「最初に声をかけた100人全員に断られ、かなりへこみました」と、2015年にマンハッタンのクラブでテニスのコーチをするためにニューヨークに移住した、ノースカロライナ出身のシンプソン(32)は語る。 それでも、めげずに声をかけ続けたが、断られ続け
主演が彼だったら… 1993年に公開されたカズオ・イシグロの長篇第三作目『日の名残り』の映画版で、感情を抑圧した執事スティーブンズを演じたのはアンソニー・ホプキンスだった。しかしいま、イシグロは、ジョン・クリーズが同役を演じていた可能性を夢想する。 「早い段階で出ていた案だったんですよ」。コッツウォルズにある彼の隠れ家から車で少しのところにあるホテルのティールームで、イシグロはサンドイッチとスコーンをつまみながら言う。 執事役にクリーズの名前をあげたのは劇作家のハロルド・ピンターだったが(ピンターは原作の大ファンで、自ら権利を取得して最初の脚本を執筆していた)、結局その案はボツとなった。ホプキンスを「素晴らしい」と褒めたたえながらも、イシグロはこう打ち明ける。 「残念なことに、ジョン・クリーズは自分にはこの役を演じられないと思ったそうです。彼はもっと優れた役者になれたかもしれないと思うんで
ある日の午後、ケースワーカーのブライオン・ジョンソンは、華やかなラスベガス中心部の地下にある暗いトンネルの中を懐中電灯で照らしていた。内部はゴミや脱ぎ捨てられた衣類が散乱している。彼は、この地下トンネルで暮らすホームレスたちを探しに来たのだ。 ジョンソンは「シーザーズ・パレス ホテル&カジノ」の地下で、一人のホームレスが合板のベッドに横になっているのを見つけた。ジェイ・フランダース(49)だ。 背中から腕、手の指にかけて痛みがあるという彼は、ときどき覚醒剤を使用すること、メンタルヘルスの問題があることを認めた。自分がここにどれくらい住んでいるのか正確には覚えていなかったが、数年は経っているとのことだった。 ジョンソンの仕事は、ラスベガスの地下に伸びる排水トンネルから、こうしたホームレスの人々を地上へ誘導することだ。排水トンネルは、警察や異常気象から彼らを守ってくれる一方、洪水で押し流される
3度目の挑戦で生まれた名作 『わたしを離さないで』の新たな舞台版が、2024年9月から英国で上演された。原作は2005年に書かれたイシグロにとって長篇第6作となるディストピア小説で、「もちろん『リアルな英国』ではないが、かといって完全な空想とも言えない」場所を舞台としている。 『日の名残り』と同様に、物語は英国の田舎のある建物を中心に展開する。『わたしを離さないで』で描かれるのは、寄宿学校ヘールシャムだ。その恐るべき真の目的は、増加した人口に対し新鮮な臓器を供給すべく、国家の承認を受けてクローン人間の子供たちを育成することだった。 この悪魔の所業を、クローンたちを「提供者(ドナー)」、臓器提供による死を「終了」と呼ぶ、欺瞞的な言葉遣いが覆い隠す。 イシグロいわく、『わたしを離さないで』の中心となるアイデアは「もともと1980年代の後半に書こうとしていたものだった」のだが、それは簡単には進ま
化石燃料から再生可能エネルギーへの切り替えが世界各国で進むなか、課題となっているのが太陽光や風力で生成された電力をいかにムダにせず、蓄電するかだ。こうしたなか、住友電工が開発を進める北海道安平町のレドックスフロー蓄電施設は、長寿命で環境負荷が少ないことから、「2050年ゼロ排出」の目標達成に向けて重要な役割を果たすとみられる。 日本のGX(グリーン・トランスフォーメーション)革命を牽引する北海道を、米紙「ワシントン・ポスト」が取り上げた。 海からの風が、砂浜から丘の斜面を通り、広々とした高原を駆け抜ける。 日本北端の島・北海道に吹きつける風は強い。この島の電力を賄うだけでなく、日本の他の地域にクリーンな電気を送るのにも充分だ。 だが、風が吹く日に発電した電力を蓄電する技術がなければ、それ以外の日にはせっかくの再生可能エネルギーを利用することはできない。そのため北海道では、大量の電力を貯蔵す
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