「もう一度あのカレーが食べたい」。 カレーファンの間で記憶に残るカレー店として、たびたび名前が挙がるのが、 今はなき、笹塚「M’s Curry」だ。 独自に探究したカレー、好みのはっきりしたBGMなど、 店を構成する要素はまさに、クラフトカレー店そのもの。 2010年、店主・釘宮真之さんの急逝により閉店した「M’s」が、今も語り継がれるのはなぜなのか。当時の常連であり、ご遺族とも親しいコピーライターの萩原慎一さんにM’sの世界を振り返ってもらった。 マスターが遺した永遠のM’sワールド 渋谷区の下町風情あふれる笹塚十号通り商店街の路地深くにあったM’sカレー。その大きな扉を引くと、スタンダードジャズのスウィングとともに、スパイスの強烈な香りが煙りのように纏わりついてくる。「いらっしゃいませー」と、か細い声の主は、色黒で小顔、パリッと白い調理服を端正に着こなしている。でも、どこの国の人?と最