「愛している」とメールを送信される、食事や旅行に誘われる、タクシーの中で手を握られる、唇を押しつけられる。 執拗な性的誘いに耐えきれず、意を決して「ノ―」と言った。すると、今度は何を言っても無視される、仕事の連絡をしてくれない。嫌がらせがエスカレートしていく。半年後、心療内科に。「適応障害」「不安障害」「うつ状態」と診断される。 被害者は、派遣社員の佐藤香さん(写真左側)。加害者は、派遣先である大手通信会社の上司。 佐藤さんは、勇敢にも実名で、「セクハラ労災補償給付訴訟」を闘った。2015年3月6日、佐藤香原告の訴えが全面的に認められた。請求した全期間の労災補償給付が決まった瞬間だった。被害を受けてから、12年間の月日が流れていた。 その闘いを振り返る佐藤香元原告の裁判報告会が、2015年6月29日、都内であった。 彼女は、こう言った。 「私は派遣社員でした。仕事を失うかもしれないという覚