サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
大谷翔平
humour.hateblo.jp
自分の住む市の図書館で、今月から読書会を開催できることになった。前々から「死ぬまでに一度は自分主催で読書会をやってみたい」と考えていたので、大げさに言うと「夢がかなった!」というレベルで喜ばしいことである。 しかし前途は多難というかそれ以上で、早くも暗礁に乗り上げているというレベルで困っている。ひとつは参加者がなかなか集まらないことと、集まっても「普段から本をあまり読まない」「難しい本はわからない」という参加者が混じっているため、そうそう自分の好きな本ばかりを扱うことができない。 よって比較的読みやすく、親しみやすく、かつ面白い本を課題図書として選びたいと思うのだが、それがかなりの難題なのである。しかも課題図書リストから選ぼうにもリスト自体が今ひとつパッとしない。 そんな中で最近、これはいいなと思って読んだのは沢木耕太郎の「凍」で、登るのが困難な山に挑む登山家に関するノンフィクションである
歌人の穂村弘の書評集を読んだ。いかにも義理で引き受けていそうな文章もあれば、これは魂の底の底から書いていると、こちらが勝手に確信するような文章もあって、基本的にこの人の批評とか書評は面白くてためになる。 これから泳ぎにいきませんか: 穂村弘の書評集 作者: 穂村弘 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2017/11/28 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (2件) を見る 読んでいる間、この本は面白そうだなと思っても、どこかに書かないと必ず忘れるので、二冊だけメモしておく。 句集 海藻漂本 作者: 佐藤文香 出版社/メーカー: ふらんす堂 発売日: 2008/06/01 メディア: 単行本 購入: 4人 クリック: 6回 この商品を含むブログを見る 一冊は佐藤文香の句集「海藻標本」で、十代から二十三歳にかけての作品集だという。これが少しも若者っぽさのない句で、渋い落ち着きが
小林賢太郎はコントや芝居、あるいは一人芝居風の独自のコントを行い、映像作品を作り漫画も描く人である。名前の通りクレバーで、物言いがシンプルでストレートで飾り気がない。 といって作品は難解ではなく、むしろ親しみやすい雰囲気がある。 難解さを取り払うだけの配慮や、丁寧な「行き届いた感じ」があるという印象である。今ではユーチューブで昔のコントを大量に見ることができる。 ちなみに私が最初に衝撃を受けたのは「新噺」というコントで、これは再見してもかなり凄い。 ラーメンズ『ATOM』より「新噺」 ラーメンズ第12回公演『ATOM』 [DVD] 出版社/メーカー: ポニーキャニオン 発売日: 2009/10/21 メディア: DVD 購入: 1人 クリック: 16回 この商品を含むブログ (10件) を見る ごく一般的な「落語家」のイメージをなぞる様な感じで始まるのだが、物まね芸というよりは落語家のする
パラダイス山元はミュージシャンとして知られている他に、盆栽や温泉の本を出しており、さらに公認サンタ他あれこれと幅広い活動をしており、何がメインの仕事なのかちょっと把握しづらい。 www.youtube.com 東京パノラママンボボーイズ TWIN PERFECT COLLECTION アーティスト: 東京パノラママンボボーイズ,MANCINI HENRY NICOLA,JUSTI BARRETO,MONTY NORMAN,DAMASO PEREZ PRADO,AL CASTELLANOS,STEVE CROPPER,ERNEST TITO PUENTE,志賀大介,PETE RUGOLO 出版社/メーカー: インペリアルレコード 発売日: 2002/02/27 メディア: CD クリック: 7回 この商品を含むブログ (6件) を見る 本書は日本で一番「餃」の字が多い本ということで、本当にど
本書は映画監督の西川美和が、映画「永い言い訳」を製作した時期に書かれたエッセー集なので、7割くらいは本人による製作過程の報告のような側面もある。 映画にまつわるXについて2 作者: 西川美和 出版社/メーカー: 実業之日本社 発売日: 2017/04/14 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る タイトルは堅苦しそうだが、「X=子供たち」「X=主役」「X=音楽」といった短いエッセーが並んでいるので、Xの部分に言葉を入れて読み替えるような形になっている。 しかし、おそらくそういう意味がほとんど伝わっていない。調べたわけではないが、小難しそうなタイトル→敬遠される、というコースをたどっているだけではないだろうか(書店の映画コーナーは本書より親しみやすい感じの表紙が多いし)。 ちょっとそれは勿体ない。西川監督は堅苦しさを感じさせない雰囲気の人だし、どちらかというと物事がうまくいかずに意気
山本夏彦より簡潔で辛辣なことを言っている本はないかと探し求めているうちに箴言集を読むようになり、さらに聖書を読んでいるうちに、なぜかケルト民話やファンタジーを読むようになってしまった。 ケルト関係の面白い本はないかな~と思ってふらっと古本屋で買ったこの「愛蘭土紀行」だが、予想を遥かに上回る面白さだった。 街道をゆく 30 愛蘭土紀行I (朝日文庫) 作者: 司馬遼太郎 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2009/03/06 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る アイルランド及びイギリスに関係する人物が次々と出てくる、そのメンツが漱石、ビートルズ、小泉八雲、ジョン・フォード、スウィフト、イエイツ、ベケット、そしてジョイス。ロンドンからリバプールへ移動し、さらにアイルランドのダブリンへと移動しつつ、これらの人物に関するあれこれ、アイルランドとイギリスの関係、カトリ
広告関係の講座の講師を務めていたというジャック・フォスターによる本で、やはり広告業界周辺の話題が多い。 内容はちょっと目次を見た限りでは、大したことがないようではある。 第1章 アイデアって何だろう 第5章 子供に戻ろう 第6章 「知りたがり」になろう 第9章 いろいろなものを組み合わせてみよう 第11章 情報をかき集めよう この程度のことであれば「もう知っている」と思われても仕方がない。その辺のまとめサイトに書いてあることなので。 アイデアのヒント 作者: ジャックフォスター,青島淑子 出版社/メーカー: CCCメディアハウス 発売日: 2003/01/10 メディア: 単行本 購入: 15人 クリック: 212回 この商品を含むブログ (46件) を見る ところが再読してみると、本質的にこの本は要約できない本ではないかと思えるようになってきた。 というのは、個々の意見を支えるための例が
チェーホフを読んだのは吉田秋生の「櫻の園」を読んだ際に、漫画の中で上演される戯曲も読んでおこうとしたのが最初ではないかと思う。 櫻の園 完全版 (花とゆめCOMICSスペシャル) 作者: 吉田秋生 出版社/メーカー: 白泉社 発売日: 2013/09/05 メディア: コミック この商品を含むブログ (3件) を見る 桜の園・三人姉妹 (新潮文庫) 作者: チェーホフ,神西清 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1967/09/01 メディア: 文庫 購入: 5人 クリック: 38回 この商品を含むブログ (42件) を見る しかしどうもチェーホフの小説も戯曲も、ゴニョゴニョして、もやもやとして、メリハリに乏しい印象なので、その後に読んだ幾つかの作品もほとんど記憶に残っていない。 かもめ (集英社文庫) 作者: アントン・チェーホフ 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2015/02/
タイトルがストレートに「自殺」、テーマが一貫して「自殺」なので、重苦しい内容かというとそうでもなかった。 自殺 作者: 末井昭 出版社/メーカー: 朝日出版社 発売日: 2013/11/01 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (26件) を見る 母親のダイナマイト心中から約60年――衝撃の半生と自殺者への想い、「悼む」ということ。伝説の編集者がひょうひょうと丸裸で綴る。笑って脱力して、きっと死ぬのがバカらしくなります。 この内容紹介の通り、飄々とした筆致で半生を振り返り、合間にインタビューが入ったり、自殺ではないにしても病死や自死遺族の問題に触れたりするエッセーである(2014年講談社エッセイ賞受賞)。 以前、集中的に「死体(遺体)」「死刑」に関する本をまとめて読んだことがあるので、死や自殺という話題も一応は読み慣れているが、この手の本を始めて読む人にはひどく重い本
今回で投稿数が100になるので、記念すべき100回目の更新に特別な本を持ってくるかというと、そういう余裕や感慨や特別企画のようなものはない。 そもそもこのブログは「ユーモアのある本」に絞って、そういう本を紹介しつつ自分なりにコレクションするつもりで始めたのだが、表看板にでかでかと「ユーモア」を掲げているたぐいの本はかえって厳しい目で読んでしまうし、面白いと思える本は少ない。 それ以外の本も扱うことにしようと考え直して、チャランポランに、いい加減気味に書くようになって(さらに過去に書いた感想も混ぜるようになってきて)やっとホイホイ書けるようになってきた。 それ以外の本と言っても、結局はユーモアのある部分を探しながら読んでいるような姿勢ではあるので、一つの例として今回は城山三郎の「少しだけ、無理をして生きる」を挙げてみたい。 少しだけ、無理をして生きる (新潮文庫) 作者: 城山三郎 出版社/
およそ3分の1、第4章まで読んだ感想。ディズニーの伝記は徹底的に悪く書かれたものと、その反対の大甘路線のものとがあるようで、この本は偏りが少ないらしい。 創造の狂気 ウォルト・ディズニー 作者: ニール・ガブラー,中谷和男 出版社/メーカー: ダイヤモンド社 発売日: 2007/07/27 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 46回 この商品を含むブログ (21件) を見る 出版社からのコメントには、 ディズニーの伝記は公認本や暴露本など日本でも数冊出ています。本書は、ディズニー社の全面的な協力を得て必要な資料への閲覧を許されながら、同社の検閲なしで出版できました。そのため、ディズニーにとって都合の悪い話も描かれており、リアルです。 とあって、新聞の書評でも誉められていたので買ってみたのだが、今のところ「創造の狂気」というタイトルとはかなり遠い。創造的なアニメーションの製作という
カルヴィーノの翻訳などでよく目にする「米川良夫」という人がいる。 この名前の読み方が! 不在の騎士 (白水Uブックス) 作者: イタロ・カルヴィーノ,米川良夫 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 2017/03/16 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 実は何と、「よねかわりょうふ」なのであった。 ちなみにこの人のお父さんが「米川正夫」で、こちらの読み方は「よねかわまさお」。 名前が「よしお」ではなく「りょうふ」なのは、父正夫が当時レフ・トルストイの全集を翻訳していたことに因む[1](ロシア語のЛев(レフ)はЛёв(リョーフ)とも発音されるため)。 米川良夫 - Wikipedia 私は今まで、何の疑いもなく「よしお」かとばかり思っていた。 このブログを読んでいる皆さんは、暇な時にちょっとしたクイズとして(あるいは賭けとして)誰かに出題してみていただきたい。そして、「自分は前
手塚治虫の絵を完コピしたパロディ漫画集、という紹介の仕方にとりあえずはなるのだが、読んでみるとそれだけではない。 #こんなブラック・ジャックはイヤだ 作者: つのがい,手塚治虫 出版社/メーカー: 小学館クリエイティブ 発売日: 2017/03/06 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 原作崩壊!?ゆとりのB.J、良い子なキリコ、パリピなロック達にピノコのツッコミが炸裂する!彗星の如く現れた新人イタコ漫画家、つのがいが天才的画力で描いた神をも恐れぬブラック・ジャックパロディ、ついに単行本化!しかも手塚プロダクション公認!!著者のSNSに公開された作品だけでなく、この本でしか読むことができない合計40ページを超える描き下ろし漫画(B.Jレシピや学園モノや手塚治虫タッチに目覚めるまでのエッセイコミックなどなど)も収録。そして巻末には、マジメに描いた美麗カラーイラストギャラリ
このブログは比較的「いい加減にやる」という方針だったので、これまで書く気が起きない時は一ヶ月以上も放置したり、更新ペースもバラバラであった。 しかし、先月あたりから妙にペースが上がって、読書欲も高まってきた。 すると今度は読了済の、感想を書くべき本が溜まってきて、精神的な宿題のようで面倒くさい。意外と読書系のブログというものは難しいものだなと今頃になって気がついたので、幾つか難しい点を挙げてみたい。 1.良い本、好きな本ほど書きづらい これは良い!これは好き!と言いたい本があったとしても、万人に勧めたいとまでは思っていないので、「大絶賛!」という風には書けない。 「この本のこういう点を嫌いな人もいるでしょうね」といった言い訳めいた文章をチラチラ意識したりして、それを書いたり書かなかったり、うじうじ悩んだりして、そういう自分がまた面倒くさくなってくる。 2.特に何とも思わない本がある 「読ん
前々からこのブログで、夏樹静子の書いた腰痛の本(「椅子がこわい」「腰痛放浪記」)について書きたいと考えていたのだが、何となく延び延びになっているうちに別の病気の本を読み終えてしまった。 うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち 作者: 田中圭一 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2017/01/19 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (8件) を見る 本書は品切れ状態が続いていて、アマゾンでもしばらく購入できない期間があった。近所の書店にもまったく無くて、アマゾンで買えるようになってからも普通の書店では見かけないままだった。今日たまたま大宮駅構内の書店に入ったら6冊ほどまとまっていて「再入荷しました!」という書店側のメッセージもついていたので購入し、仕事で長距離バスに乗った車中で読了した。 内容はうつ病になって、完治またはほぼ治った、という有名人および一般人のドキュメンタ
シャーロック・ホームズのパロディということに一応なってはいるものの、形式が小説ではなくて戯曲で、内容はよく言えば軽妙、悪く言えば小学生が考えたようなトリックが満載なので、かなり評価が分かれそうな本である。 ルーフォック・オルメスの冒険 (創元推理文庫) 作者: カミ,高野優 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2016/05/30 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (14件) を見る オルメスはホームズのフランス語読み。ルーフォックは「頭のおかしい」とか「いかれた」の意味。ホームズのパロディと言うには、ぶっ飛びすぎの、とんでもユーモア・ミステリ・コント集。34編の掌編を集めたもの。たとえば、寝ている間に自分の骸骨を盗まれてしまった男の話、とか、巨大なインク壺のなかに閉じ込められた男たちの話とか……「アホカ! 」というような掌編ばかり。ミステリ・マニアとしては、読んでおくべき奇書
花輪和一の漫画「刑務所の中」を読んだ。 刑務所の中といえば、狭い、寒い、暗い、そして、まずい食事……、というイメージがある。しかし現実はそうでもないらしく、この漫画で紹介されている食事のメニューは以下のようなもの。 ・麦飯 ・吸い物(ゴボウ、ネギ、椎茸、ナルト巻き) ・ニシン焼きあんかけ ・根菜煮 ・キュウリ漬け ↑けっこう良くないだろうか? 別の日も見てみると、 ・麦飯 ・ウマ煮(白菜、豚肉、ナルト巻き、人参) ・シューマイ(カラシ付き) ・タマゴ焼き(ネギ入り) ↑やっぱり良い! 毎日毎日、このレベルで違ったメニューが用意されているのだ。 刑務所の中 (講談社漫画文庫) 作者: 花輪和一 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2006/05/12 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 33回 この商品を含むブログ (50件) を見る カレーの日はこうなっている。 ・麦飯 ・カレー
「何か面白い本はないですか?」 「どんな本を読んだらいいのでしょう?」 この種の質問をされた時、あるいはそれに近い話題になった時、具体的に本の題名や作者名を挙げるのは虚しい。 そもそも人の好みというものは、顔つきや体つきと同じくらいバラバラで、同じである方がおかしい。 しかも本には入手しやすい本としにくい本があるし、値段も安いものと高いものがあるしで、その辺を全部まぜこぜにして話をするなんてできない。さらに、そういう質問や話題を持ちかけてくるような人間はもともと本どころか、新聞も雑誌も読まない、学生時代は教科書も読まないし自分で書いたノートも読まない、みたいなタイプが多い。 この手の方々に「図書館に行って、汚い本を読めばいい」というのは結構いいアドバイスではないかと思いついた。 なぜ汚い本かというと、多くの人に読まれているからで、それは面白いことの証しだから(図書館にある綺麗な本は、誰から
タイトルの通り、誰がデザインしたのか意識すらせずに日々触れている身近な商品ほかのデザインに着目した本。 とり上げられているのは乾電池、キャンパスノート、タバコ、カップヌードル、カール、デパートの包装紙などなど。「懐かしい」という感情を猛烈に掻き立てるようなものもあるし、今まで気付かなかったその美しさにハッとさせられるデザインもあるしで、何かと発見の多い本だった。 これ、誰がデザインしたの? 作者: 渡部千春,『デザインの現場』編集部 出版社/メーカー: 美術出版社 発売日: 2004/09/16 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 16回 この商品を含むブログ (38件) を見る わざわざお金を出して美術館に行かなくても、大衆に支持され続けている優れたデザインはそこら中にあるということ。そして美しさはその対象にあるのではなくて、それを見る目と心の側にこそあるということ。ヤクルトの
同じ内容を、違う文体で書き替える試みを何通りも並べた有名な実験文学にして奇書。それでいて少しも堅苦しくない。 文体練習 作者: レーモンクノー,Raymond Queneau,朝比奈弘治 出版社/メーカー: 朝日出版社 発売日: 1996/11 メディア: 単行本 購入: 15人 クリック: 532回 この商品を含むブログ (145件) を見る 他愛もないひとつの出来事が、99通りものヴァリエーションによって変幻自在に書き分けられてゆく。20世紀フランス文学の急進的な革命を率いたクノーによる究極の言語遊戯が遂に完全翻訳された。前人未到のことば遊び。 Mさんが感想を書かれているのを読んで、そういや自分もこれ好きだったんだよな~と思って再読してみた。 以下は読みながら思ったこと。 1.ちょうどジャズピアノの本を読んだり弾いたりしているところなので、 「ある曲をジャズ風にアレンジしたらこうなる」
タイトルの「正統」とは、キリスト教的な世界観のことを指す。冒頭にも結論部分にも解説にもそう書いてある。いかにして自分はキリスト教を受け入れるようになったか、という精神の発展の記録である。 と書くとお堅い感じがするが、たとえ話や逆説的警句がこれでもか、これでもかと繰り出され、本筋をたびたび見失うほどに鮮烈な印象を残す。 正統とは何か 作者: ギルバート・キースチェスタトン,Gilbert Keith Chesterton,安西徹雄 出版社/メーカー: 春秋社 発売日: 2009/02 メディア: 単行本 購入: 1人 クリック: 20回 この商品を含むブログ (8件) を見る 実際、各章をうまく要約できる自信が自分にはない。昔、国語の授業でやったように各章ごと、各段落ごとに要点を書き出してみて初めて全体の論理の流れが把握できるのではないだろうか。しかし部分的には感心を通り越して感動すら覚える
太宰治の「恥」は、ある女の子が太宰らしき人物(戸田)の小説を読んで、 「自分がモデルにされているに違いない!」 と熱烈に思い込んでしまうという短篇である。 「戸田様。私は、おどろきました。どうして私の正体を捜し出す事が出来たのでしょう。そうです、本当に、私の名前は和子です。そうして教授の娘で、二十三歳です。あざやかに素破抜(すっぱぬ)かれてしまいました。今月の『文学世界』の新作を拝見して、私は呆然としてしまいました。本当に、本当に、小説家というものは油断のならぬものだと思いました。どうして、お知りになったのでしょう。しかも、私の気持まで、すっかり見抜いて、『みだらな空想をするようにさえなりました。』などと辛辣(しんらつ)な一矢を放っているあたり、たしかに貴下の驚異的な進歩だと思いました。私のあの覆面の手紙が、ただちに貴下の製作慾をかき起したという事は、私にとってもよろこばしい事でした。 さ
アメリカの哲学者で、かつ底辺の労働者でもあったというエリック・ホッファーのアフォリズム集。 古本屋で半額だったので買った。 魂の錬金術―エリック・ホッファー全アフォリズム集 作者: エリックホッファー,Eric Hoffer,中本義彦 出版社/メーカー: 作品社 発売日: 2003/02 メディア: 単行本 購入: 2人 クリック: 23回 この商品を含むブログ (23件) を見る 空っぽの頭は、実際は空ではない。ゴミでいっぱいになっているのだ。 空っぽの頭に何かを詰め込むのがむずかしいのは、このためである。 集団的羞恥はない。 思考とは誇張のプロセスである。誇張の拒否は、思考や称賛をしないことの言い訳であることが多い。 人間はラッキョウのように、皮ばかりで芯がないのだ。 われわれは、ものごとを深刻に考えることによって、人生のつまらなさや虚しさを覆い隠す。 粗暴さとは、弱者による強さの模倣
トピック「新入社員」について 新社会人や新入社員に向けたエントリーが、続々と投稿されています。おすすめの本や、やっておくと良いこと。新人の方も、そうでない方も、お仕事の参考にしてみませんか? 様々なブログで「新入社員に勧めたい本」「仕事に役立つ本」を勧めているが、総じて今の世の中は手軽な答えを求めすぎているように感じられる。 これさえ読めば仕事もプライベートも上手く行って、精神的にも肉体的にも人生万々歳だという本などある筈がないだろう、と言いたいところだが実はある。 筋トレが最強のソリューションである マッチョ社長が教える究極の悩み解決法 作者: Testosterone 出版社/メーカー: U-CAN 発売日: 2016/01/29 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る それは「筋トレが最強のソリューションである マッチョ社長が教える究極の悩み解決法」で、ほとん
以前「はてなダイアリー」を利用していたので、たまに古い日記を読み返すと面白い。 十一年前の今日(2005年3月29日)の日記を読んでいたら、その日は村上龍の「半島を出よ」を買っていた。 本屋に行ったら村上龍の新刊が出ていて、装丁やボリュームからしてやけに気合いが入っている。破壊、内戦、政治、経済といったテーマが出てくるらしい上下巻の小説なので、上巻だけ買う。 この人の小説で、現実と同調(もしくは後追い)みたいな路線はほとんど記憶に残ってすらいなくて、おちゃらけた感じの「69」「昭和歌謡大全集」などが好きだった。「希望の国のエクソダス」を読んだ時には「この人の書くものを読むのはこれで最後かもしれない」と思った。 今回は「コインロッカー・ベイビーズ」「愛と幻想のファシズム」「五分後の世界」系列の近未来を舞台にした大作のように見えるが、2章まで読んだ感じでは最近あまり見かけなくなった軍事サスペン
この雑誌の小泉今日子特集号が即日売り切れになったというニュースをしばらく前に見かけて、興味を感じたもののその後はすっかり忘れていた。 MEKURU VOL.07 (小泉今日子) 作者: ギャンビットパブリッシング 出版社/メーカー: ギャンビット 発売日: 2016/02/04 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る 特集「みんなのキョンキョン、誰も知らない小泉今日子」 表紙の人=小泉今日子 16歳でデビューして以来、アイドル、女優、歌手、文筆家と様々な顔を持ち、日本の芸能史に歴史を刻む人物でありながら、いまもなお時代の一歩先を行く稀有な存在として輝き続ける小泉今日子。 彼女が生きてきたエンターテインメント史を振り返るロング・インタビューと周辺人物が語る「小泉論」、写真家・森栄喜による貴重な撮り下ろし写真により、「小泉今日子という才能」を徹底的に解き明かす大特集です。
佐藤雅彦といえば、昔は「バザールでござーる」「ポリンキー」「ピコー」などのCMで有名になった人、その後は「だんご三兄弟」やゲーム「I.Q.」を作った人で、今は概ね「ピタゴラスイッチ」「0655」「2355」を作った人という認識に世間ではなっている。この人は著書も多くあって、そのうち七割くらいは私も読んでいる。 たとえば広告関連は当然として、 佐藤雅彦全仕事 (広告批評の別冊 (8)) 作者: 佐藤雅彦 出版社/メーカー: マドラ出版 発売日: 1996/06 メディア: 単行本 購入: 4人 クリック: 100回 この商品を含むブログ (42件) を見る 勝手に広告 作者: 中村至男+佐藤雅彦 出版社/メーカー: マガジンハウス 発売日: 2006/09/30 メディア: 大型本 クリック: 15回 この商品を含むブログ (50件) を見る 経済の本だとか、 経済ってそういうことだったのか
雑談とは通常、ほとんど意識せずに「する」だけのものであって、記録したり鑑賞したり読んだりするものではない。適当にして、したという意識もないままに消えて無くなるのが雑談である。 だから、わざわざ雑談を本にするという例は少ないし、昨今はますます本が売れなくなっているという風潮もあって、雑談の効用や利点を説いた本は多くなっているようだが、雑談そのものを記録したような類の本はもともと少ないし、今後はもっと減りそうである。 また、偉い人のご高説を拝聴する類のインタビューや、馴れ合い発言の応酬に過ぎない対談、目的や話題の決まりすぎた対話などを省くと、純粋に無目的で、無計画で、無軌道で、良くも悪くも、あまり役に立たないような雑談の本は限られてくる。 すぐに思い浮かぶのは細野晴臣、電気グルーヴ、星野源などミュージシャン関係の本である。 細野晴臣 とまっていた時計がまたうごきはじめた 作者: 細野晴臣,鈴木
「ユーモア」というとノホホンとした、おっとりした、ホンワカムードの文章ばかりかというとそうでもなくて、悪口の中にもユーモア成分が混じっているケースが多々ある。 その一例として太宰治の「如是我聞」を紹介してみたい。 他人を攻撃したって、つまらない。攻撃すべきは、あの者たちの神だ。敵の神をこそ撃つべきだ。でも、撃つには先ず、敵の神を発見しなければならぬ。ひとは、自分の真の神をよく隠す。 これは、仏人ヴァレリイの呟(つぶや)きらしいが、自分は、この十年間、腹が立っても、抑えに抑えていたことを、これから毎月、この雑誌(新潮)に、どんなに人からそのために、不愉快がられても、書いて行かなければならぬ、そのような、自分の意思によらぬ「時期」がいよいよ来たようなので、様々の縁故にもお許しをねがい、或いは義絶も思い設け、こんなことは大袈裟(おおげさ)とか、或いは気障(きざ)とか言われ、あの者たちに、顰蹙(ひ
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『humour.hateblo.jp』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く