アニメの「撮影」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。アニメは絵なのに、なぜ撮影なのか、という疑問はもっともなものだ。しかし、そうしたわかりにくさに反して、近年のアニメーション表現において「撮影」は、作品の最終ルックを決定付け映像演出の面でも重要な役割を担うセクションとして、その存在感を増している。たとえば新海誠監督のあの独特の映像美は、撮影の力によるところが非常に大きいものだ。 撮影とは何なのか。黎明期のアニメーション制作スタジオを舞台として大きな注目を集めた連続テレビ小説『なつぞら』アニメーションパートの撮影監督・泉津井陽一氏と、2019年のアニメーション映画で最も話題を呼んだ作品である『天気の子』の撮影監督・津田涼介氏。今年最も多くの観客に愛されたアニメーション作品を支えた撮影監督二人の対談を通じて、アニメの撮影の基礎から現在まで、具体的な事例とともにその魅力に迫った。この前編では、その