昨年8月に小池百合子氏が都知事に就任して以来、常に大きな課題であり続けた豊洲市場は、都知事が豊洲移転の容認に傾いたことでほぼ政治課題としては決着したようです。豊洲の土壌や地下水から基準値以上の化学物質が検出されたことが話題となりましたが、結局は直接的な健康被害を与える水準ではない、というところで科学的なコンセンサスも(時間がかかったとはいえ)形成されたように思えます。 今回の豊洲市場問題でも大きな焦点となった「社会的にリスクをどこまで許容するか」という問いは、東日本大震災のときに食物などの放射能汚染が懸念された際にも大きくクローズアップされました。「ゼロリスク以外は許せない」という人々の心理が政治的決定(あるいは混迷)に大きく寄与したのも、両者の共通点です。 ゼロリスク願望について、私はこれまで、日本人がリスクとベネフィットに基づく意思決定を求められたときに顔を出す特異な心理的傾向だと思っ