サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
画力アップ
natgeo.nikkeibp.co.jp
東太平洋海嶺の水深約2500メートル地点にあるティカ熱水噴出孔。チューブワームの塔のそばをゲンゲが泳ぐ。(PHOTOGRAPH COURTESY ROV SUBASTIAN / SCHMIDT OCEAN INSTITUTE) エビ、カニ、チューブワーム、シンカイヒバリガイなどの二枚貝、さらに、何百種ものユニークな生きものたちが見つかっている深海の熱水噴出孔。その地下にも、複雑な生態系があることを示唆する最新の研究が、10月15日付けで学術誌「Nature Communications」に発表された。これまで、熱水噴出孔周辺の地下に微生物が生息していることはわかっていたが、チューブワームや二枚貝などの大きな動物が実際に見つかったという報告は今回が初めてだ。(参考記事:「【動画】水深3800mの深海に奇妙な生物群集」) 熱水噴出孔は、2つのプレートの境界などに形成される海底の亀裂から、地熱で
写真家で映画製作者のジミー・チン氏率いるナショナル ジオグラフィックのチームが9月、エベレスト北壁のすぐ下で、行方不明となっているアンドリュー・アービンの登山靴と靴下を発見した。(Photograph by National Geographic/Erich Roepke) 2024年9月、エベレスト北壁の下に広がる中央ロンブク氷河で、ナショナル ジオグラフィックのドキュメンタリーチームが古い登山靴を発見した。靴のなかには足も残っていた。氷の中に閉じ込められていたものが、その氷が解けて姿を現したようだった。写真家で映画監督のジミー・チン氏が率いるチームには、映画製作者で登山家のエーリッヒ・レプケ氏とマーク・フィッシャー氏も参加しており、すぐに著名な登山家のジョージ・マロリーとともに100年前に消息を絶った「サンディ」ことアンドリュー・カミン・アービンのものであるとわかった。 「靴下を手に取
エウロパを探査するNASAのエウロパ・クリッパーの想像図。背後の空に浮かんでいるのは木星。探査機はエウロパには着陸しないが、25キロの距離まで接近する。(Illustration by NASA/JPL-Caltech) 米航空宇宙局(NASA)の探査機「エウロパ・クリッパー」が、日本時間10月15日午前1時6分に米ケネディ宇宙センターからスペースX社のロケットによって打ち上げられた。探査機は5年半かけて2030年に木星系に到達し、木星を周回しながら、その衛星エウロパの謎を解明するために3年半の間に50回近くフライバイ(接近通過)を行う。 エウロパは地球の月と同じくらいの大きさ。表面は氷の地殻(氷殻)で覆われ、その下には広大な海(内部海)があると考えられている。その水の量は、地球のすべての海水の量の約2倍もあるかもしれない。実は、このような構造の天体は宇宙に無数に存在している可能性がある。
米ニュージャージー州アナンデールにあるノースハンタードン地区高校の図書室で撤去処分を免れた5冊の本。現在、米国で一部の本を禁止しようとする動きがかつてないほど高まっている。なかでも標的にされやすいのが、この写真にもあるLGBTQ+を扱った本だ。(Photograph by Bryan Anselm, Redux) マーク・トウェイン、ハリエット・ビーチャー・ストウ、ウィリアム・シェイクスピア。いずれも古典文学を代表する作家として米国の学校で学ぶことが多いが、共通点はそれだけではない。内容が論争的、わいせつである、または人を不快にさせるなどの理由で、米国の一部の学校からその本が締め出された作家たちなのだ。 同様に、不適切とみなされた作家は数多い。アンネ・フランクによる『アンネの日記』ですら検閲の対象になった。ナチスドイツの迫害を受けたユダヤ人少女の家族が描かれているからではなく、10代のアン
米デューク大学の研究者が、人間の子どもの認知発達に関する実験から着想を得て、子イヌの発達を研究するプログラムを開発した。このプログラムはもともと、介助犬訓練の適性がある子イヌを判断することを目的としていた。(PHOTOGRAPH BY DUKE UNIVERSITY) 米国ノースカロライナ州の“特別な幼稚園”では、子どもたちが遊んだり、交流したり、昼寝をしたり、あるいは座る、じっとしている、教室の中でウンチをしないなどの方法を学んだりしている。 この幼稚園はデューク大学の「犬の幼稚園」で、園児は人間ではなくイヌだ。しかし、教室で子イヌたちが取り組むゲームや課題は、人間の子どもの発達を研究するために用いられるものとそれほど違いはない。(参考記事:「イヌはどうして犬になったのか、その歴史と進化」) イヌにとっても飼い主にとっても、新しいスキルの習得は成犬になるための重要なステップだ。デューク大
ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)トマス・ペシャック氏は、ナショナル ジオグラフィック2024年10月号で発表された壮大なプロジェクト「アマゾン」のために、熱帯雨林で何年もかけて野生生物を記録した。ペシャック氏は、絶滅の危機にあるアマゾンカワイルカと地元住民の複雑な関係に興味を引かれた。アマゾンカワイルカを神聖視する人もいれば、魚を盗むため殺すべきだと考える人もいる。「フォトジャーナリストストーリー賞」に選出された「森の中で」は、ブラジルとコロンビアの国境付近で、季節的に冠水する森を泳ぐアマゾンカワイルカの姿を捉えた一枚だ。この地域では、ピンク色をしたこのイルカを見るツアーが地元コミュニティーによって提供されている。(PHOTOGRAPH BY THOMAS PESCHAK, WILDLIFE PHOTOGRAPHER OF THE YEAR) 毎年1割が密猟の犠牲に
かつては難破したポルトガル船の乗組員が作ったと考えられていた、マダガスカルのテネキー遺跡に残る岩のくぼみ。新たな研究は、この遺跡がペルシャから逃れてきたゾロアスター教徒のものであることを示唆している。(Photograph Courtesy Raphael Kunz) インド洋に浮かぶマダガスカル島のテネキー遺跡は、長い間科学者たちを悩ませてきた。初期の説では、岩にうがたれたくぼみや石壁を最初に作ったのは1500年代に難破したポルトガル船に乗っていた人々とされていた。しかし、2024年9月11日付けで学術誌「Azania: Archaeological Research in Africa」に掲載された研究では、それよりも数世紀も早い時代の遺物が見つかり、ペルシャを追放されたゾロアスター教徒たちが楽園を築こうとした可能性が示唆された。 テネキー遺跡は、マダガスカル島の南西部に広がる熱帯雨林
詩人であり作家であったエドガー・アラン・ポーは、1849年10月7日に死去した。その早すぎる死は、いまだ多くの謎に包まれている。(Photograph by Superstock, Bridgeman Images) 「エドガー・アラン・ポー死去」という書き出しで始まったニューヨーク・デイリー・トリビューン紙の記事は、さらにこう続いた。「このニュースに驚く人は多いが、悲しむ者は少ない」。不気味な探偵小説や「大鴉(おおがらす)」などの詩でよく知られていた米国人作家で詩人のポーは、1849年10月7日、米メリーランド州ボルチモアで死亡した。40歳だった。 偉大な作家としてのポーの地位は、当時すでに明らかだった。にもかかわらず、その死を取り巻く状況は多くの謎に包まれている。ポーはなぜ、自分のものではない衣服を着ていたのか。そもそもニューヨークに住んでいたポーが、なぜボルチモアにいたのか。そして、
ブラジルのアマゾン川流域にすむピラルクーのウロコのクローズアップ写真。自然界の中でも、特に丈夫な素材として知られている。(Photograph by Andre Dib) 巨大な淡水魚は、地球上で特に絶滅が危ぶまれている動物のひとつだ。しかし、緑豊かなアマゾンの河川で、それに反する事例が生まれている。体長3メートル、体重200キロ以上になるピラルクー(ピラルク、アラパイマとも)は、わずか10年前、乱獲によって激減し、絶滅の危機に瀕していた。しかし、地域に根ざした保護活動が功を奏し、大幅に数が増えている。 ブラジルの生態学者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)でもあるジョアン・カンポス・シルバ氏の研究によると、持続可能な漁に切り替えた地域では、ピラルクーの数が11年で425%も増えた。カンポス・シルバ氏は、ナショナル ジオグラフィック協会とロレックスによる「パーペチュ
新たな報告によるとゴマバラワシはライオンの子どもを狩ることがある。タンザニアのセレンゲティ国立公園で撮影。(PHOTOGRAPH BY KLAUS NIGGE, NAT GEO IMAGE COLLECTION) ケニアにあるマサイマラ国立保護区のツアーガイドが、サバンナの頂点捕食者の仲間であるライオンを狩るゴマバラワシを目撃した。ゴマバラワシはライオンの群れを何週間も追い続け、チャンス到来と見ると急降下して子どもに襲いかかり、合わせて3頭を捕らえた。2012年12月の出来事だった。 「このワシは明確にライオンを狙っています」と、オランダ、ワーゲニンゲン大学の博士候補生であるリチャード・ストラットン・ハットフィールド氏は話す。氏と同僚の研究者たちは、この例をはじめとして、チャンスがあればゴマバラワシ(Polemaetus bellicosus)はライオンの子どもを狙うと2024年9月13日
感覚のおかげで学習効果が高まるという事実は直観に反するかもしれないが、触覚や運動感覚が刺激される活動は、学習や記憶に関わる脳の領域を活性化させると、米南カリフォルニア大学脳・創造性研究所の教授リサ・アジズ・ザデー氏は述べている。 「人の脳は感覚情報と運動情報を処理するように進化しました」とアジズ・ザデー氏は話す。「感覚処理と運動処理をつかさどる脳の同じ領域が、今では高次認知にも関与しています」 脳の大部分が使われている 私たちの感覚が認知に与える影響をよりよく理解するには、脳を道路網のように考えればいいとノルウェー科学技術大学の神経心理学教授オードリー・ファン・デル・ミーア氏は説明する。氏によれば、子どもの脳のネットワークは、森の曲がりくねった小道のようなものだという。練習と経験を重ねることで、脳のさまざまな部位が接続され、情報を素早く効率的に伝達する高速道路になる。 ファン・デル・ミーア
研究によれば、ペンを紙に走らせるという行為は、複数の脳領域を活性化させ、記憶力や認知機能の向上につながる。(PHOTOGRAPH BY OKSANA NAZARCHUK, GETTY IMAGES) これからやるべきことや買い物リストを最後にメモしたときのことを思い出してほしい。おそらく、ペンと紙は使っていないのではないだろうか。この10年、教室での授業から職場での会議まで、私たちの日常にあった手書きという行為はキーボードと画面に置き換えられてきた。世界を見渡すと、英語の授業で筆記体を教えなくなってしまった学校もある。しかし、ペンと紙を使って書く行為によって、デジタルツールでは再現できない認知機能への効果が得られることが、多くの研究で示されている。 「統計的に見ると、手書きと記憶の関係をテーマにした研究のほとんど(日本、ノルウェー、米国などで行われたもの)は、コンピューターで入力するより自
レディ・ジェーン・グレイの肖像画。イングランドの女王として君臨したのは、1554年の9日間だけだった。彼女の死後40年ほどが経ってから描かれたものだが、現存する肖像画では特に古い1枚だ。(Photograph by CBW/Alamy Photos) これは歴史を題材にしたコメディなのか。それとも、王室の甘いメロドラマなのか。ドラマシリーズ「マイ・レディ・ジェーン」はその両方と言えるだろう(編注:アマゾンの「プライム・ビデオ」で配信、シーズン1で打ち切り)。 大胆に歴史を改変したドラマの題材となったのは、イングランドの女王にわずか1週間ちょっと君臨し、17歳(16歳とも)で処刑されたレディ・ジェーン・グレイだ。 レディ・ジェーンとは何者なのか。そして、その不運な治世の物語が今も反響を呼んでいるのはなぜなのか。ここでは、1553年にいかにして10代の少女が女王になり、数日で王位を失うことにな
年を重ねてからの結婚は、健康に恩恵をもたらすのだろうか。研究からは、結婚生活はうつ病のリスクや炎症を軽減するほか、長生きにも関連していることがわかっている。(PHOTOGRAPH BY THEKLA EHLING, AGENTUR FOCUS/REDUX) 恋愛リアリティー番組『バチェロレッテ』のシニア版スピンオフ『The Golden Bachelorette(原題)』が米国で9月から放送され、話題となっている。61歳の独身女性ジョアン・バソスさんと結婚するチャンスをめぐって24人の男性が競う。しかし、こうした番組では、めでたくカップルが成立した後のことは詳しく描かれないのが普通だ。 結婚は心身に多くの恩恵をもたらし、寿命を延ばす助けになることさえある。「結婚は、主に夫婦が互いのために行うさまざまな行動を通じて、体と心の健康に役立ちます」と語るのは、米パデュー大学健康・人間科学部の社会健
難消化性でんぷんとは、胃と小腸を通過した後、大腸で発酵して腸内フローラに有益な効果をもたらす炭水化物の一種。玄米などの全粒穀物は、難消化性でんぷんの優れた供給源だ。(PHOTOGRAPH BY TIM GRAHAM, GETTY IMAGES) 「難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)」とは、体重を管理したり、特定の病気を予防したりするのに役立つ炭水化物の一種だ。グリーンバナナや生のジャガイモ、オート麦、特定のナッツや種子、豆類などに含まれている。通常のでんぷんとは違って小腸では完全には消化されず、大腸まで届いて発酵することで、さまざまな面から健康を支える有益な細菌の食べ物となる。 健康効果を示す証拠は増えつつある。2024年2月に学術誌「Nature Metabolism」に掲載された研究では、肥満または過体重の成人が難消化性でんぷんを8週間摂取すると、腸内微生物叢(そう)を整え、全身
小河の墓地で発掘されたミイラ。チーズのネックレスを身に着けていた。(PHOTOGRAPH COURTESY WENYING LI, XINJIANG CULTURAL RELICS AND ARCHAEOLOGY INSTITUTE) 中国タリム盆地の小河にある青銅器時代の墓地で、ミイラの首を飾っていた小石ほどのチーズのDNAを分析した結果、どのように製造され、どのように広がったかが見えてきた。定説を覆すこの研究成果は9月25日付けで学術誌「Cell」に発表された。 複数のミイラの首の周りで見つかった3500年前の小さなサンプルについて、タンパク質を分析した過去の研究で、ケフィアチーズの製造に使われる乳酸菌Lactobacillus kefiranofaciensの存在はすでに明らかにされていた。「本当に素晴らしい」発見だったと、中国北京にある中国科学院の古遺伝学者である付功妹氏は当時を振
妊娠前から出産の2年後まで26回にわたり脳をスキャンした最新の研究結果は、妊娠が人間の脳が妊娠でどのように変化するかを理解するために役立てられる。(PHOTOGRAPH BY GREG801, GETTY IMAGES) 気分や記憶など脳の機能に大きく影響する性ホルモンは、妊娠中に分泌量が劇的に変化する。ところが、妊娠中の脳に何が起こるのかはほとんど研究されていない。しかし、1人の女性の脳を妊娠前から妊娠中、出産後までの計26回にわたってスキャンした結果を示した論文が9月16日付で学術誌「Nature Neuroscience」に発表され、それまで未知の領域だった妊婦の脳について知る手がかりを与えてくれている。 性ホルモンが脳に与える影響に魅了された米カリフォルニア大学サンタバーバラ校の神経科学者で、論文著者のエミリー・ジェイコブス氏は、月経周期に伴って女性の脳内で起こっている変化を記録す
ウミウシに擬態する新種のゴカイ「ケショウシリス」を名古屋大学大学院などの研究グループが発見した。発見場所は三重、和歌山各県と、ベトナムの海域。サンゴの仲間である「ウミトサカ」に共生しているが、なじむような柄ではなく、むしろ目立つ色や形をしていた。同じ海域にすみ毒を持つミノウミウシに似せて外敵から身を守ることが考えられるという。今後、ケショウシリスの生態や擬態の詳しい理由について研究を続ける。 名古屋大学大学院理学研究科附属臨海実験所の自見直人講師(無脊椎動物系統分類学)の研究グループは、サンゴに生息するゴカイについて研究をしてきた。最初は、三重県鳥羽市にある菅島の漁師から、ウミトサカに「ウミウシのような生きものが付いている」と連絡を受け、譲り受けた。和歌山でもダイビング中のダイバーが見つけた。また、同じ生物をマレーシア、ロシア、フランスの共同研究チームがベトナム海域でダイビング中に発見した
何十年もの間、健康状態の指標の一つとして使われてきたBMIには、運動能力、コレステロール値、血圧などの要素が考慮されていない。2016年には、BMIで過体重(25~30)の人の半数が正常な健康状態だと示した米国の研究も発表された。(PHOTOGRAPH BY JACKIE MOLLOY) 「BMI(ボディ・マス指数、体格指数)」は、1970年代に健康な体重の指標として導入されてから診察室やジムで使われつづけてきた。けれども専門家たちは10年ほど前から、BMIの妥当性を再検討しはじめている。健康状態とBMIとの関係は複雑で、総合的な健康状態の指標としては必ずしも適切ではないかもしれないというのが理由だ。 BMIは、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割って計算できる。太り過ぎとされる分かれ目は25だ。世界保健機関(WHO)の基準ではBMIが25以上を「過体重」、30以上を「肥満」とし
鹿児島県の薩摩半島南方にある海底火山「鬼界カルデラ」は約9000年かけてマグマが蓄積した末に約7300年前の巨大噴火を起こしたことが分かったと、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と神戸大学の研究グループが発表した。地球深部探査船で海底下100メートル近く掘削して万年単位の火山活動を調べた結果で、完新世(1万1700年前~現在)で世界最大規模とされる巨大噴火に至るマグマ蓄積の過程が明らかになった。 鬼界カルデラは鹿児島市の南約100キロにあり、東西20キロ程度、南北17キロ程度の楕円(だえん)形。約14万年前と約9万5000年前、そして約7300年前と過去3回巨大噴火を起こしたことが分かっている。(参考記事:「7300年前の鬼界カルデラ噴火、過去1万年で世界最大と判明、鹿児島沖」)
定期的なウオーキングには、腰痛を和らげるだけでなく、再発防止の効果もある。オーストラリアの研究チームによる最新の研究成果だ。(Photograph by Gollhardt & Wieland, laif/Redux) 腰痛は体の不調につながる主要な原因のひとつであり、悩まされている人は世界で6億1900万人にのぼると推定されている。多くの場合、腰痛は周期的に現れる。回復したと思っても、実に70%近くの人は1年以内に再発するという。 7月13日付けで医学誌「The Lancet」に発表された論文は、ウオーキングという簡単で比較的コストのかからない方法で、周期的な腰痛を抑えられることを報告した。被験者のうち、定期的なウオーキングを始めた人は、1年以内およびそれ以降に腰痛が再発する確率が低かった。また、腰痛が再発した人でも、定期的にウオーキングをしていた人は、再発までの平均間隔が長かった。 こ
44歳ごろの変化は、代謝にかかわる細胞や、脂肪組織タンパク質、皮膚や筋肉の構造にかかわる結合組織タンパク質などで観察された。それぞれ、加齢とともにカフェインやアルコールの代謝がしにくくなること、中年期にコレステロール値が高くなったり予想外に体重が増加したりすること、皮膚がたるんだりシワができたり、筋肉の損傷が起こりやすくなったりすることの説明となる。(参考記事:「年を取るとお酒に弱くなるのはなぜ? 体の中で起きていること」) 60歳ごろでは、同じような分子的な変化がさらに観察されるほか、腎機能や免疫系の健康にかかわる分子にも顕著な変化が見られた。スナイダー氏は、高齢者が新型コロナウイルス感染症などにかかりやすい理由や、がんの罹患率や腎臓の問題や心血管系障害が60代から急増する理由の説明になると言う。 ハーバード大学医学大学院の外科准教授で、米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの形成
実際、30代後半から40代前半にかけて悩みや不安を抱える「中年の危機」や、50代後半から60代前半にかけて「壮年後期の危機」を経験する人もいることが、研究で明らかになっている。この2つの年代は、今回の研究で老化が急に進むとされた時期と一致している。 つまり、「急な老化は、私たちが生まれつきもっている生物学的な特性によるものではなく、加齢に伴う心理的な変化や生活習慣の変化が原因になっている可能性もあるのです」とシンクレア氏は言う。 急な老化は防げるのか? これらの分子的な変化の背後に何があるにせよ、「老化の根本的な原因は、すでに特定されている可能性が非常に高いと思います」と、2009年にノーベル化学賞を受賞した構造生物学者のベンカトラマン・ラマクリシュナン氏は言い、老化がもたらす望ましくない影響を防ぐために何をするべきかはよくわかっていると考えている。 シェン氏は、40代や60代に近づいたら
ウイジャボードは、かつては未知とのコミュニケーションを楽しむ遊びだった。しかし、その後はダークな評判を得るようになり、超自然への関心と恐れのシンボルとなっていく。(PHOTOGRAPH BY ANDY DIXON) ウイジャボート(西洋版こっくりさん、トーキングボードやスピリットボードとも呼ばれる)というと、亡くなった人の霊を呼び出したとか、不気味な警告をもらったといった話が付き物だが、19世紀、英国のビクトリア朝時代は、室内で楽しむ、オカルトとは無関係のちょっとしたゲームにすぎなかった。 最初のウイジャボードは、1890年に米ケナード・ノベルティが「すてきなトーキングボード」と銘打って発表したもの。厚紙にA~Zのアルファベット、0~9の数字、そして「YES(はい)」「NO(いいえ)」「GOOD BYE(さようなら)」という文字を並べただけの簡単な作りだった。プレーヤーは三角形のポインター
最新の研究によると、核爆弾を使えば直径4キロメートルと大型の小惑星の衝突まで防げるという。(Illustration by Detlev Van Ravenswaay, Science Photo Library) 都市をひとつ壊滅させられるほどの小惑星が地球に向かっているとする。幸い、何年も前からわかっているのであれば、大惨事を防ぐ方法を科学者はすでに知っている。探査機を小惑星に衝突させて、地球に向かう軌道をずらす方法だ。 ただし、小惑星が大型だったり、あるいは小型であっても発見が遅れてしまったりしたら、この方法がうまくいくとは限らない。では、どうすればいいのか? その有力な解決策を示した研究が、9月24日付けで学術誌「Nature Physics」に発表された。人類の文明を破壊するほどの大きな小惑星であっても、核爆発で生じるX線で小惑星の軌道をずらして地球への激突を回避できるかもしれな
ブラジルを流れるアマゾン川の支流、ネグロ川の季節的な氾濫で浸水した森林で、ガイドのロベルト・アブディアス・ゴメス・ダ・シルバがカポック(パンヤノキ)の板根(ばんこん)の前に立ち、最高水位の跡を指し示す。この木の幹は氾濫時に水を蓄え、乾期に備える。(PHOTOGRAPH BY THOMAS PESCHAK) 世界最大の多雨林は500年もの間、外部の人間に誤解されてきた。最新技術を駆使した研究で、従来の見方は大きく変わりつつある。 アマゾンがその名で呼ばれるようになったきっかけは、1542年6月24日に起きた出来事だ。スペインのフランシスコ・デ・オレリャーナはこの日、窮地に陥った自身の探検隊が緑の世界から脱出できるよう神に祈っていた。一行はアンデス山脈の麓からいくつもの支流を下り、7カ月かけてようやく、誰も見たことがないような大河に出たのだった。この川を下っていけば、程なく大西洋に出られるだろ
ヨーロッパ最古の戦いで使われた矢じりがめり込んだ頭蓋骨の一部。戦場の遺跡から出土した青銅器時代の矢じりは、古代の戦士たちの出身地を探る手がかりとなった。(Photograph by Volker Minkus) 3000年以上前、現在のドイツ北部にあたる場所の渓谷で、ふたつの軍勢が衝突した。知られている限りヨーロッパで最古、かつ当時としては最大規模だったこの戦いに、どのような人々が参加したのかはよくわかっていない。しかし、2024年9月23日付けで学術誌「Antiquity」に発表された論文によると、古代の戦場から発掘された矢の一部は、遠く離れた中央ヨーロッパ南部で製造されたもので、おそらくはその地域の戦士たちが使ったと考えられるという。 過去に行われてきた研究の中には、戦いにかかわったのは地元住民だけと示唆するものもある。しかし、今回の論文は、一部の戦士は他地域からやってきた人々であり、
高齢者の病気を予防する鍵は運動にあると考え、約140キロのデッドリフトをする病理学教授のマット・ケーバーライン氏。最新の研究により、私たちの体は40代と60代の2回、分子的に大きく老化することが明らかになった。幸い、老化の影響を和らげる方法はある。(PHOTOGRAPH BY DAVID GUTTENFELDER, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 私たちはずっと、老化は一定のペースで徐々に進むものと信じていた。しかし、2024年8月14日付けで学術誌「Nature Aging」に米スタンフォード大学の科学者たちが発表した論文で、老化は40代半ばと60代前半に急激に進むことが明らかになった。 皮膚のシワやたるみ、白髪、筋肉痛や関節痛、ウイルスへの感染しやすさなどの老化の兆候は、あるとき突然現れるように見えるが、その理由は、この2つの時期に起こる分子的な変化によって説明でき
紅海にすむワモンダコ(Octopus cyanea)は、魚たちと協力して効率的に狩りをするという論文が発表された。論文の著者が撮影。(Video by Eduardo Sampaio) タコが複数の種の魚をまとめて狩りをしているという驚きの研究結果が発表された。狩りのチームの多くはタコ1匹と2~10匹ほどの複数の種の魚で構成されていたという。論文は、9月23日付けで学術誌「Nature Ecology & Evolution」に発表された。 研究を率いたのは、ポルトガルにあるリスボン大学とドイツ、マックス・プランク動物行動学研究所の博士研究員であるエドゥアルド・サンパイオ氏だ。氏は2018~2019年に紅海で、タコと複数の種の魚たちが繰り広げる次のような行動を観察し、興味をそそられたという。 狩りはうまく行っている、と思っていたら、1匹のアカハタが勝手な行動を始めた。すると、これに気づいた
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『ナショナルジオグラフィック日本版サイト』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く