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都知事選
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水分摂取を制限したマウスは、通常のマウスに比べて便通が悪くなるだけではなく、腸内細菌のバランスが崩れ、病原菌の排出にも時間がかかることを、北里大学などの研究グループが明らかにした。水分量を通常の半分に減らすと、腸の免疫に著しい乱れが生じ、感染症にかかりやすいことが確認できた。今後はヒトでも同様の結果が生じるかどうかを調べるという。 北里大学薬学部微生物学教室の金倫基教授(腸内細菌学・免疫学)らのグループは、食事が腸内環境に与える影響は多く研究されているが、水分に着目した研究はなかったことから、今回の実験を始めた。一般的に「水分不足で便秘になる」と言われているものの、それ以外の影響もあるのかを調べる狙いもあった。マウスは実験ごとに3~20匹ずつ使った。 マウスは1日3~5ミリリットルの水分を摂るとされている。通常のマウスと飲水を25%制限したマウス、50%制限したマウスの3群を用意して比較し
親しい人の顔を覚えられなかったり、目の前にいる人の顔を識別できなかったりする「相貌失認」の人は、これまで考えられていたよりも多い可能性が研究で明らかになった。(PHOTOGRAPH BY BALLBURN_PHOTOGRAPHY, GETTY IMAGES) 伝説の霊長類学者ジェーン・グドール氏、俳優のブラッド・ピット氏、そして『妻と帽子をまちがえた男』の著者として知られる神経学者の故オリバー・サックス氏の共通点は何か? 答えは親しい人や有名人の顔を覚えられなかったり、見分けがつかなかったりする「相貌失認(そうぼうしつにん)」だ。 長年、相貌失認はまれな障害とされてきたが、2023年に学術誌「Cortex」に掲載された論文によれば、相貌失認の人はこれまで考えられていたよりも多い可能性があるという。この研究では、相貌失認の重さや症状は連続的で、その有無を単純に判定できず、使用する基準によって
森林において樹木が生育する土壌に特有の微生物の集まり(微生物叢)が落葉を効率的に分解していることを東京大学などの研究グループが野外実験で実証した。森林生態系の物質循環を担う微生物叢の働きに差があることを示しており、今後の森林保全において場所ごとに特有の微生物叢を保つことが重要だとしている。 森林生態系では、地面に落ちた樹木の葉が土壌中の微生物に分解され、分解の過程でできた栄養分を根から樹木が吸い上げて成長し、茂った葉がまた落ちて微生物に分解される――という、落葉と分解を伴う物質循環が起きている。落葉の分解速度については、「温度が高い方が微生物は活発に働く」「柔らかくて栄養分豊富な葉では分解が進みやすい」など、地域の気候や落葉自体の性質によって主に決まると考えられていた。 一方で、樹木が育つ場所(ホーム)はほかの場所(アウェー)より効率的に落葉を分解するという「ホームフィールド・アドバンテー
沖縄県の西表島(竹富町)に生息する国の特別天然記念物で絶滅危惧種のイリオモテヤマネコとカンムリワシは、食物連鎖の頂点にいるにもかかわらず、互いに競合しないで餌を分け合っていることを、琉球大学などの研究グループが明らかにした。フンに含まれるDNAから食性を解析し、季節を違えて同じ種類の餌を食べていることがわかった。沖縄には相互扶助の「ゆいまーる」という文化があるが、2種も同様の形で生き残ってきた。 イリオモテヤマネコ(左)とカンムリワシは季節でエサを食べ分けて共存できていることが分かった(イリオモテヤマネコ:琉球大学理学部動物生態学研究室提供 カンムリワシ:沖縄こどもの国提供) 食物連鎖の頂点同士の共存 世界自然遺産である西表島は沖縄島から約400キロメートル離れており、島の大半を環境省・林野庁が管理している。独自の生態系が存在し、県内の他の離島に比べて手つかずの自然が残る。この西表島で食物
西アフリカの国ベナンで、低木に留まって休むヒメアカタテハ(Vanessa cardui)。(PHOTOGRAPH BY GERARD TALAVERA) ヨーロッパで生まれたチョウが、西アフリカを経て南米まで7000キロを旅した可能性を示す研究結果が発表された。昆虫の渡りとしては最長クラスの記録となる。研究は6月25日付けで学術誌「Nature Communications」に発表された。 10年ほど前のある秋、論文の筆頭著者でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)のへラルド・タラベラ氏は、南米フランス領ギアナの海岸で「いるはずがない」ものを探していた。ヒメアカタテハ(Vanessa cardui)と呼ばれるチョウの仲間だ。 トラのような体色のヒメアカタテハは、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、北米、オーストラリアでよく見られる。南米には生息していないのだが、時折そこでヒメア
スピリチュアルなメロディーとアンデスの楽器をヒップホップのビートと融合させるハビエル・クルス。彼のラップネームであるサラ・クタイは「トウモロコシをひく」という意味だ。クルスは少年時代、両親を手伝い、穀物をひいていたという。(PHOTOGRAPH BY VICTOR ZEA DIAZ) ケチュア語を話す若いミュージシャンたちが、ヒップホップ音楽を自分たちの言語と文化を表現する手段に変えた。 それは2024年、ある晴れた1月の午後のことだった。ここは、ペルー南部のチチカカ湖畔近くにある都市フリアカ。1年前に政府の治安部隊に虐殺された18人のデモ参加者と見物人を追悼するため、先住民のケチュア族とアイマラ族の人々が何千人も広場に集まっていた。そのなかに、黒い上着、つばの広い黒い帽子、黒と金のブーツに身を包み、黒い馬にまたがった男性がいた。その姿は、スペイン帝国に対する反乱を指揮し、アンデス地方にお
古代都市ペトラで最もよく知られている名所であり、別名「修道院」とも呼ばれる「エド・ディル」。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL O. SNYDER) ヨルダン南部の街ワディ・ムーサで少年時代を過ごしたモハマド・アルファラジャト氏が、かつて父親から聞かされた話によると、昔このあたりの砂漠の峡谷には緑の小麦が揺れる段々畑が広がり、実り豊かなアプリコットの果樹園やイチジクの木が、地元の人々のお腹を満たしていたという。 現在、ヨルダンのマアーン近郊にあるアル・フセイン・ビン・タラール大学の地質学者となったアルファラジャト氏は、そうした恵みの痕跡は今ではほとんど残っていないと語る。乾燥した時期が長くなるにつれ、父親やその前の世代を養ってきた畑を維持するのは困難になっていった。 「40年前に気候変動が始まると、肥沃なエリアは徐々に狭くなっていきました」と氏は言う。「以前は自給自足で暮らしてい
思春期早発症とは第二次性徴が平均より2~3年早く現れることを指す。日本では女の子の場合、乳房の発達が7歳未満あるいは7歳6カ月未満で始まるなどの定義がある。(PHOTOGRAPH BY SDI PRODUCTIONS, GETTY IMAGES) 思春期が始まる平均的な年齢は、20世紀以降、下がり続けており、中には6〜7歳から胸の発達が始まる女の子もいる。こうした早い時期からの生殖機能の発達は、女性の体と心の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があると専門家は言う。 世界的に女の子の間で、思春期が始まる平均年齢が、1977~2013年の間に10年ごとに3カ月ずつ早まっていることが、2020年に医学誌「JAMA Pediatrics」に掲載されたレビュー論文で示されている。つまり、この傾向が今も続いていれば、思春期が合計で1年以上も早まっていることになる。女の子の場合、思春期の最初の兆候は乳房の成
コロンビア、ボゴタの主要な飲料水源であるサン・ラファエルダムは、エルニーニョ現象による高温のため、危険なほど水位が低下している。(PHOTOGRAPH BY IVAN VALENCIA/AP) メキシコの首都のメキシコシティが今、歴史的な水不足に陥っている。記録的な暑さと長年の干ばつに加え、2023年6月にはエルニーニョ現象のせいで雨期が縮まり、2024年6月の時点で、ダムの容量は27%未満だ。夏が始まる中、2300万人が暮らす巨大都市は災害の瀬戸際に立たされている。 メキシコシティが受けている影響は、今のところ壊滅的だ。地元の水道局のデータを分析したところ、550以上の地区で水道水が止められたり、水圧が下げられたりしている。これらの節水措置により、住民は不定期で高額な給水車の水を、集められる限りの容器に溜めなければならない状況だ。 すぐにでも豪雨が降らなければ、メキシコシティのカツァマラ
冬眠中のシリアンハムスターは爪の伸びが止まる一方、爪自体に異常は生じず綺麗に保たれていることを北海道大学などの研究グループが発見した。哺乳類の爪は根元にある幹細胞が分裂と分化を繰り返すことで伸びる。冬眠の極端な体温変化では細胞分裂が停止するにもかかわらず組織構造を維持する仕組みを調べることで、人の爪の健康にもつながる知見が得られる可能性があるという。 冬眠して丸まっているシリアンハムスター。ほぼ外気温まで体温が下がる。冬眠中も綺麗な爪を保つことができる(北海道大学低温科学研究所の山口良文教授提供) 哺乳類の爪は、病気や栄養不足といった過度なストレスがかかると変色や変形が起きることが多い。冬眠をする小動物は、体温が外気温近くに下がる。北海道大学低温科学研究所の山口良文教授(分子冬眠学)らはこの低体温状態というストレス下で、爪に何か変化が起こるのかどうかを、調べることにした。 山口教授らは実験
2024年の夏に東京・上野の国立科学博物館で開催される特別展「昆虫 MANIAC」。みなさんに昆虫の深くて豊かな魅力を知ってもらいたい! そんな思いを込めて、同展の監修者である昆虫博士たちによるエッセイを掲載します。
2021年、米カリフォルニア州のデスバレー国立公園で温度計の写真を撮る職員。1975年、メートル法は国が推奨する単位であると正式に宣言されたが、一般市民への普及はなかなか進まない。(PHOTOGRAPH BY ROGER KISBY, REDUX) 米国、ミャンマー、リベリアの共通点をご存じだろうか。「この3カ国には恥ずかしい類似点がある」とメートル法支持者は主張する。メートル、グラム、キロメートルではなく、フィート、ポンド、マイルという帝国単位(ヤード・ポンド法)を使用しているのだ。 しかし、実は、話はもっとややこしい。米国ではフィートやポンドといった単位が広く使われているが、実際に国が推奨しているのはメートル法だ。 では、なぜ米国人はメートル法を使わないのか? メートル法の発展の歴史と、なかなか日常生活に定着しない理由を見ていこう。 実は推奨されていた まずはこんな事実から。「米国では
このイラストのように、恒星は燃料を使い果たすと爆発する。天文学者は毎年、何千もの爆発を目撃しているが、そのほとんどは地球から比較的近い場所で起きている。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の新しいデータから、宇宙初期の超新星が多く発見され、太古の宇宙で起きた爆発の記録が急増した。(ILLUSTRATION BY MEHAU KULYK, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 遠く離れた超新星を観測することは、過去をさかのぼるようなものだ。超新星爆発は天文学者に、何十億年も前の宇宙がどのような姿だったかを教えてくれる。天文学者たちは現在、遠くにある宇宙初期の超新星をこれまでより10倍も多く発見しており、6月7日付けで査読前論文を投稿するサーバー「arXiv」に発表した。その中には、観測史上最も古く、最も遠い超新星が含まれる。 これらの超新星は、米航空宇宙局(NASA)のジェームズ・ウェッブ
トラウマが遺伝子のオン・オフを変化させ、世代を超えて受け継がれる可能性があることを示唆する科学的証拠が集まりつつある。(PHOTOGRAPH BY TEK IMAGE, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 最新科学の知見によると、戦争や大量虐殺から虐待や環境要因まで、さまざまなトラウマの影響が世代から世代へと受け継がれている可能性があるという。 「あなたのお母さんやお父さんが経験した深刻なトラウマが、自分に影響を及ぼしているような気がすることはないでしょうか?」と、米マウントサイナイ医科大学の精神医学と神経科学の教授で、トラウマについて研究しているレイチェル・イェフダ氏は問いかける。氏の研究は、人生を変えるほどのトラウマが、「エピジェネティックなシグナル」として子孫に受け継がれることを示している。 「エピジェネティクス(後成遺伝学)」は、遺伝子のオン・オフのしくみを研究する学問分
2024年6月、米国イエローストーン国立公園内のラマー・バレーで、白いバイソンの赤ちゃんが生まれた。白いバイソンは、米国先住民の文化においては聖なる動物で、「神の祝福であると同時に警告でもある」と考えられている。(Photograph by Erin Braaten, Dancing Aspens Photography) 野生動物の誕生が大きな話題になることはあまりないが、米国ワイオミング州で撮影された白いアメリカバイソンの赤ちゃんが、人々の関心をさらっている。「数分違いで誕生の瞬間を逃してしまいました」。6月4日、写真家のエリン・ブラーテン氏はフェイスブックにこう投稿した後、イエローストーン国立公園で白いバイソンが誕生したニュースは瞬く間に世界に拡散した。 キリン、バク、サルからピューマ、アナグマ、そしてカエルやヘビに至るまで、白、黄色、またはブロンドの個体は人々を魅了する。しかし今回
温度知覚に関する実験のため、イタリア、ボルツァーノの人工気象室に座るギュンター・コローニャさん。実験中は数秒ごとに無線機で連絡を取り、温度の変化を感じたかどうかを伝えた。この研究では、人はわずかな温度変化にも敏感であることがわかった。(PHOTOGRAPH BY GAIA SQUARCI) 私たち人類は歴史を通じて、地球に少しずつ影響を与え続けてきた。1850年ごろの産業革命以来、地球は着実に温暖化しており、1982年以降、その速度は3倍に増している。2100年までに、地球の平均気温は産業革命前に比べて2.7℃上昇し、さまざまな影響がもたらされると専門家は予測している。 2023年は観測史上最も暑い年として記録され、2024年夏も米国とヨーロッパ全域で猛暑が予想されている。こうした平均気温の上昇がどんなものかを理解するのは難しいかもしれないが、あなたの体は気温が1℃でも違えば感じ取れるよう
ジョン・エベレット・ミレーによって1878年に描かれた「塔の中の王子たち」。英ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校ピクチャーギャラリー所蔵。エドワード5世(1470~83年?)(右)と弟のヨーク公リチャードは、1483年にロンドン塔に幽閉された後、姿を消した。(PHOTOGRAPH BY ROYAL HOLLOWAY, UNIVERSITY OF LONDON, BRIDGEMAN IMAGES) 1483年の夏、イングランド王エドワード5世と弟のリチャードは、ロンドン塔に幽閉されたのを最後に、消息を絶った。それから何世紀もの間、叔父であるリチャード3世が2人を暗殺したのではないかと、確かな証拠もないまま言われてきた。 そこで調査に乗り出したのが、2012年に英国レスターの駐車場からリチャード3世の遺骨を発見したことで知られる歴史家のフィリッパ・ラングレー氏だ。映画『ロスト・キング 500年越
南極の巨大ウミグモの一種。南極のデイトンズウォールとよばれる多様な生物が生息する場所で、2015年に撮影。(PHOTOGRAPH BY ROB ROBBINS) タツノオトシゴのお父さんが子育てすることはよく知られている。しかし、ウミグモも似たようなことをすることは、あまり知られていない。(参考記事:「【動画】一気に2000匹!タツノオトシゴのオスの出産シーン」) 長い脚を持つウミグモは、世界中の海に1500種ほどが生息している。潮の満ち引きの合間に潮だまりをうろつく小さなものから、極地の深海を歩きまわる大型のものまで、ほとんどのオスのウミグモは生まれる前から子どもを大切にする子煩悩な父親だ。そして、このほど発表された南極に生息する巨大なオオウミグモ(Colossendeis megalonyx)の研究で、父親の子育てがどのように始まったのかについて、新たな手がかりがもたらされた。 かつて
マヤ文明の古代都市チチェンイツァの大ピラミッド「エル・カスティージョ」。生贄を埋葬した貯水槽チュルトゥンと聖なるセノーテは、ともにこの近くにある。(PHOTOGRAPH BY CRISTINA MITTERMEIER, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 1967年、古代マヤで最も栄えた都市の1つチチェンイツァの貯水槽「チュルトゥン」とそこにつながる洞窟で、考古学者たちが多数の人骨を発見した。このチュルトゥンは8世紀にわたって若い成人や子どもの生贄の埋葬に使われ、遺体のほとんどが若い女性とされてきた。マヤ文明は儀式の生贄に女性を捧げることを好んだと考えられていたからだ。(参考記事:「チュルトゥンの図解も、知ってるようで知らないマヤ文明」) しかし、2024年6月12日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された論文が定説を覆した。回収された64体の遺骨のDNAを分析したところ、す
山形県山辺町の湖沼、「畑谷大沼」で遺伝子型が異なるミジンコの2集団が共存しているのは、飼育下では負けて絶滅する側の集団が休眠卵を早めに産むことで長期に生き残る戦略をとっているためと東北大学などのグループが明らかにした。9年にわたる観測で休眠卵が不適な環境を乗り越えるだけでなく、競争による絶滅の回避や共存にも重要であることがわかった。今後その生態的意義や進化、分子機構の解明が期待されるとしている。 山形県の畑谷大沼において共存しているミジンコのJPN1(左)とJPN2。見た目の違いはほぼ無いが、遺伝子型で区別できる(宇都宮大学の丸岡奈津美博士研究員提供) ミジンコ類は湖沼に生息する代表的な動物プランクトン。日本にいるミジンコは北米大陸からの侵入種で、オスとメスが交尾して子どもができることはなく、単為生殖によってクローンを生産し続ける。 水温20度下では約3日のペースで全く同じ遺伝子をもつ卵を
ボツワナのオカバンゴ・デルタを歩くアフリカゾウ。一帯にはどこよりも多くのアフリカゾウが住んでいる。(PHOTOGRAPH BY BEVERLY JOUBERT, NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION) 1975年にアフリカゾウの研究を始めたときから、生物学者のジョイス・プール氏は、ゾウたちがときどき仲間に向かって呼びかけていることに気づいていた。呼びかけに対しては、多くのゾウが返事をすることもあれば、1頭だけが応えることもあった。 「ゾウには特定の個体に呼びかける方法があるのではないかと、わたしは考えていました」と、非営利団体「エレファント・ボイシズ」の科学ディレクター兼共同創設者であるプール氏は言う。それでも「どうやって確かめればいいのかわからなかったのです」。だが、2024年6月10日付けでプール氏らが学術誌「Nature Ecology and E
コーヒーを飲むことは、2型糖尿病、認知症などの神経疾患、死亡のリスクの低下との関連が見つかっている。しかし、カフェインを取り除いたデカフェコーヒーでも同じ効果が期待できるのだろうか。(PHOTOGRAPH BY SAM ABELL, NAT GEO IMAGE COLLECTION) コーヒーは世界で最もポピュラーな飲みもののひとつだが、健康への懸念からカフェインを取り除いた「デカフェ(カフェインレス)コーヒー」を選ぶ人も増えている。全米コーヒー協会(NCA)の調査によると、米国では成人の約1割にあたる2600万人が定期的にデカフェを飲んでいるという。その理由は、血圧が気になる、遅い時間のカフェイン摂取を減らしたい、睡眠が妨げられるのを避けたい、カフェインに過敏な体質などさまざまだ。 選ぶ理由が何であれ、「デカフェの人気はますます高まっています」と、オーストラリア、クイーンズランド大学の教
年齢を重ねるにつれ、筋肉の硬化や肺活量の低下といった身体の変化により、声の響きやトーンが変わることがある。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 年齢とともに、自分の声が変わってきたと感じている人はいないだろうか。声の変化は高齢に近づくにつれて多くの人に起こるものだが、声が円熟味を増してやわらかくなる人もいれば、声が震えたり、ささやき声になったり、話すのに苦労するようになったりする人もいる。加齢に伴い声が変化する理由と、医師に相談すべき場合やタイミングについて解説する。 声帯も変化する 年齢を重ねると、筋肉量の減少や姿勢の変化により、以前は簡単に出せていた声を同じように出すのが難しくなることがある。歌手を生業とする人たちからは、声が低くなったり、震えたりするようになるとの報告が聞かれる。 声も小さくなり、嚥下(えんげ、飲
米イリノイ州中央部にある約16平方キロメートルの保護区、ナチューサ草原で木に登るセミ。ナチューサ草原はセミの大群が広がるのに十分なスペースを提供した。セミが一斉に鳴き始めると、その音は耳をつんざくようなものだった。(Photograph by Keith Ladzinski) 謎に満ちたロマの守護聖人サラ・ラ・カリ、あつき信仰と巡礼 写真8点 ナショナル ジオグラフィック トラベラー英国版写真賞2024 いざなう受賞作15点 米国の中西部と南東部で今、耳をつんざくような音が響いている。17年周期ゼミと13年周期ゼミが221年ぶりに同時に姿を現したのだ。地上に出た何十億匹という周期ゼミの目的は交尾をすることであり、そのために木にとまってジージーあるいはカチカチと鳴き続ける。ナショナル ジオグラフィックの写真家キース・ラジンスキー氏はイリノイ州中央部で数日間を過ごし、周期ゼミが脱皮し、空を埋め
高濃度乳房の女性の乳がん検診では、マンモグラフィーに加えて写真のようなMRIや超音波の検査を行うことが有益かもしれないが、米予防医学専門委員会(USPSTF)は今のところ「根拠が不十分」としている。(PHOTOGRAPH BY MARK KOSTICH, GETTY IMAGES) 乳房中の乳腺の密度が高い「高濃度乳房(デンスブレスト)」は、乳がん検診のマンモグラフィー(乳房X線検査)で乳がんを見つけにくい。そこで、マンモグラフィーで高濃度乳房と判定された女性に対して、乳房超音波検査やMRI検査が追加で行われることがある。米疾病対策センター(CDC)によれば40歳以上の米国人女性の約半数、日本乳癌学会によれば同日本人女性の約4割が高濃度乳房だと推定される。 しかし、公衆衛生に関する勧告を行う米予防医学専門委員会(USPSTF)は、2024年4月の勧告で、そうした追加検査が有益かどうかを判断
窓に鳥が衝突した跡。2019年のロンドンで撮影。(PHOTOGRAPH BY CG7 IMAGES / ALAMY) このほど学術誌「Wilson Journal of Ornithology」に発表された論文によると、少なめに見積もっても、毎年12億8000万〜34億6000万羽の鳥がガラスに衝突して命を落としている可能性があるという。この数字は、2014年に発表された以前の推定値より350%も多い。それでもこれは米国のみの数字であり、世界でははるかに多くの鳥たちが死んでいるはずだ。 「忌々しいことに、世界はガラス窓だらけです」と、米ミューレンバーグ・カレッジの鳥類学者で、2024年4月8日付けの論文の筆頭著者であるダニエル・クレム氏は言う。 鳥が窓ガラスに激突したときの衝撃はかなりのものだ。ガラスは振動し、鳥は骨折し、脳出血を起こすこともある。 とはいえ、衝突で即死する鳥はごく一部で、
3歳、5歳、8歳の兄弟。兄弟姉妹はあなたの経験を形成するが、生まれた順番はあなたの性格と関係があるのだろうか? 研究者によれば、遺伝と環境の組み合わせが関係している可能性が高いという。(PHOTOGRAPH BY HANS NELEMAN, GETTY IMAGES) あなたは責任感の強い長男長女か、見過ごされがちな真ん中か、それとも自由奔放な末っ子か? 生まれた順番による「きょうだい型」が性格に影響するという説を信じる人にとって、この質問の答えは、あなたがどのような人物であるかの鍵を握っているかもしれない。パーティーや家族の食事会、セラピーのセッションなどでは、きょうだい型が性格を表す略語のように使われることがある。わがままな一人っ子、注目されたい真ん中というように。 あなたの個人的な経験は、その説が正しいことを示唆しているかもしれないが、心理学者の意見は異なる。ここでは、その固定観念を
海洋での存在が知られるマイクロプラスチックが落葉広葉樹のコナラの葉の表面に多く蓄積していることを、日本女子大学などのグループが確認した。細かい凹凸がある葉の表面で捉えたマイクロプラスチックを壊さず回収する方法を確立し、実証した。森林が自然界の空気清浄機の役割を果たしヒトの吸入リスクを低減している可能性がある。今後、針葉樹や常緑樹などでの存在や、土壌移行など環境循環での影響について研究を続けるという。 大気中のマイクロプラスチックは100マイクロメートル(1マイクロは1000分の1ミリ)未満で、海洋のマイクロプラスチック(5ミリメートル以下)よりも小さく、空気中を漂っている。ポリエチレンやポリプロピレンと呼ばれる物質の総称で、プラスチックでできている衣類を着脱したり、屋外に置いたプラスチック製のものが劣化で細かく砕けたりすることで発生する。さらに、海洋のマイクロプラスチックが波しぶきなどによ
NGC 604は、さんかく座銀河のなかで星々が誕生する領域だ。写真は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影したNGC 604。このなかに、技術が発達した文明は潜んでいるのだろうか。(PHOTOGRAPH BY NASA, ESA, CSA, STSCI) 宇宙が140億年近く存在しているのなら、地球外に知的生命が存在していてもおかしくないのではないか。それならば、彼らは一体どこにいるのか。「フェルミのパラドックス」と呼ばれるこの疑問は、半世紀以上、天文学者たちを悩ませてきた。宇宙人はなぜ地球にやってきてあいさつしてくれないのだろう。これまであらゆる説が提唱されてきたが、「暗黒森林理論(ダークフォレストセオリー)」ほど背筋が寒くなるような説明はないのではないだろうか。 暗黒森林理論とは、地球外文明は存在しているが、自らの姿を隠しているため、われわれ地球人には見つけられないという説だ。すでに近
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