トルストイのパンフレットは彼の仕事の中でも最も知られていない部分で、シェイクスピアに対する彼の非難[以下の注記]は少なくともその英語翻訳に関して言えば手に入れるのさえ難しい資料だ。従って議論を始める前にそのパンフレットの要約を記しておくのはおそらく有用なことだろう。 [注記:シェイクスピアとその演劇。一九〇三年頃に、アーネスト・クロスビーによる別のパンフレットであるシェイクスピアと労働階級の序文として書かれた(原著者脚注)] トルストイがまず最初に語るのは、生涯を通してシェイクスピアは彼に「抑えがたい嫌悪と退屈」を呼び起こしてきたということだ。文明世界における見解は自らと対立するものであるという意識から、彼は次々にシェイクスピアの作品に挑み、ロシア語、英語、ドイツ語で何度も読んでいく。しかし「私は避けがたく同じ感情を経験した。嫌悪、退屈、困惑だ」と言うのだ。さて七十五歳の時に彼は再度シェイ