東欧の冬は夜の冷え込みが厳しいだけに、朝の訪れは大きな喜びだ。 濃紺色に塗り潰されていた夜空のほんの一部、遠く彼方の地平線の上部に鮮橙色の光が現れたかと思うと、それは徐々にではあるが確実に空を明るい青色に塗り替えていった。朝日の光が石造りの家が立ち並ぶ町にもたらされると、家々の間から白い霧が立ち込め始めた。女性が寒さから身を守るために纏うショールのようなそれは、差し込んだ日光により温められた地面から立ち上る水蒸気だった。 町の一角で、綿のように白い霧の中にぼんやりとその姿の一部を現わしている石壁。それは、古くからこの土地に建ち、多くの家族を見守り続けてきた家の南壁だ。 朝日が当たり温かな黄色に染まったその壁には、しっかりとした木枠で囲まれた小窓があった。 窓の向こう側、つまり、家の内部に、小さな影が現れた。それは少年のものであった。少年は窓に近づいて来ると、カーテンを開けた。 ベッドから出