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社会科学:勤務のハイブリッド化は良い結果を生む 2024年6月27日 Nature 630, 8018 ハイブリッド勤務は生産性を損なうのだろうか。今回、完全出社型スケジュールと比較した無作為化対照試験で、ハイブリッド勤務により、仕事の満足度が著しく上昇し、従業員の離職率が3分の1減少することが明らかになった。またこの研究では、ハイブリッドスケジュールがパフォーマンスや昇進に負の影響を与えるという証拠は見つからなかった。
生命の化学的起源に関係のある分子が、火山や地熱系に見られる岩の割れ目を通る熱流によって精製され得ることが実験室実験で明らかになった。このことを報告する論文が、Natureに掲載される。今回の研究から、生命の最初の構成要素が複雑な化学混合物からどのように形成されたかについての説明が得られた。 生体高分子とその成分の形成は、初期地球における生命の起源の重要な瞬間だった。しかし、そうした経路を実験室内で再現するのは困難で、多くの場合、これらの複雑な反応から数多くの副産物が生じる。このことは、生物を構成する生体関連物質が無視できる程度に少ないことを意味する。こうした要素を精製する方法を考案しようとするこれまでの試みでは、一度に広範囲の分子を単離することができず、方法の特異性に限界があった。 今回、Christof Mastらは、地質学的な発想によって作られた、微小な亀裂(厚さ170マイクロメートル
タイとベトナムの2つの養殖場におけるニシキヘビの成長速度の分析から、養殖されたニシキヘビの肉は、食肉の代替品として、他の養殖肉よりも持続可能性が高いと考えられることが明らかになった。このことを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。今回の知見から、アミメニシキヘビ(Malayopython reticulatus)とビルマニシキヘビ(Python bivittatus)が、12カ月間で急速に成長し、他の家畜動物ほど頻繁に食餌を必要としないことが示された。 環境圧と人口圧は、従来の農業システムに影響を与えている。畜産においては、魚類や昆虫類のような冷血動物(外温動物)は、ウシや家禽のような温血動物(内温動物)よりもエネルギー効率が著しく高い。ヘビ肉のような一部の内温動物性食品は、伝統的に摂取されてきたアジアの一部の国々で人気が高まっているが、業界の規模はまだ小さい。
養殖サケの大量死事象(短期間に大量の養殖サケが死ぬ事象)が、2012年以降、ますます頻繁に発生するようになり、その規模も大きくなってきていることを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。 今回、Gerald Singhらは、2021年に世界のサケの養殖生産量の92%以上を占めていた国々(ノルウェー、カナダ、英国、チリ、オーストラリア、ニュージーランド)について、2012~2022年の養殖サケの死亡個体数のデータを解析した。その結果、この期間中に8億6500万匹の養殖サケが死んでいたことが判明し、同期間を通じて、ノルウェー、カナダ、英国において死亡個体数の上位10%の大量死事象の発生頻度が上昇し、大量死事象で死亡する個体数の最大数が増加していたことが明らかになった。Singhらは、単一の大量死事象で失われる可能性のある個体数の最大値を、ノルウェーで514万匹、カナダ
クレーターのある氷の地表を持つ土星の衛星ミマス地下には、海洋が隠れている可能性があることを指摘した論文が、Natureに掲載される。土星探査機カッシーニから送られてきた観測データの解析から、ミマスの地下海洋は比較的新しく、今なお進化を続けていることが明らかになった。ミマスの研究を続けることで、氷天体の形成についてさらに多くの知識が得られるかもしれない。 一部の衛星の地表下に海洋が存在することを示す証拠が蓄積されてきているが、そうした海洋を検出することは難しい課題だ。土星の小衛星の1つであるミマスは、エンセラダスなどの他の氷衛星とは表面特性が異なるため、地下海洋を検出する対象の候補にはなりにくい。こうした考えに対して、カッシーニ探査機によるミマスの観測データを評価したValery Laineyらは異議を唱えている。 これまでの研究で、ミマスの内部に関して2つの可能性が示されていた。1つは引き
検索エンジンを使ってフェイクニュースの真偽を判定する課題に取り組んだ被験者は、その情報を真実だと確信してしまう確率が高いという研究結果を報告する論文が、Natureに掲載される。フォローアップ実験から、こうした結果が得られた理由として、被験者がネット検索で得た情報の質が低かったことが挙げられると示唆された。今回の知見は、ネット検索を行う人々が検索結果の質を評価できるように手助けするデジタルリテラシープログラムが不可欠であることを示唆している。 間違った情報が増え続け、政治的分断が拡大し続けている昨今、真実の探求は、手っ取り早くネット検索することよりも複雑化しているかもしれない。ソーシャルメディア上で間違った情報が拡散する仕組みについては、これまでも研究が行われてきたが、人々が検索エンジンを使ってどのように間違った情報の事実確認を行っているかについては、ほとんど注目されていなかった。 今回、
全世界で自由に歩き回るイエネコの餌食になった動物(鳥類、哺乳類、昆虫類、爬虫類など)は2000種を超えており、そのうち約350種に保全上の懸念があることを報告する論文が、Nature Communicationsに掲載される。この知見は、自由に歩き回るイエネコが生態系に及ぼしている影響についての理解を深め、管理上の解決策の構築に役立つ可能性がある。 イエネコ(飼い主がいる個体といない個体)は、9000年以上前に家畜化されて以来、世界中に広がり、現在では南極を除く全ての大陸に分布している。イエネコは生態系に非常に大きな影響を及ぼす広食性捕食者であることが知られているが、その食餌の範囲の広さについては、これまで地球全体の規模で定量化されていなかった。 今回、Christopher Lepczykらは、自由に歩き回るイエネコ(屋外に出られるネコで飼い主の有無を問わない)が消費する動物種の科学的記
アフリカのサハラ砂漠以南に存在するバントゥー語話者の非常に大きな集団は、西アフリカを起源として、その後、南方と東方に徐々に持続的に居住域を拡大していった可能性が非常に高いことが研究によって示された。このことを報告する論文が、Natureに掲載される。今回の研究では、現代人と古代人の遺伝的解析から、バントゥー語話者の進化史に関する新たな知見が得られた。バントゥー語話者の人口は、約6000~4000年前に西アフリカで増え始めた。 バントゥー語族は500以上の異なる言語で構成されており、サハラ以南のアフリカ全体で約3億5000万人がバントゥー語を話している。バントゥー語話者集団の拡大パターンは経度に沿ったものであり、さまざまな気候や環境を通過していた点は注目に値する。これは、緯度に沿って移動し、類似した地形を横断することよりずっとまれなことだった。 今回、Carina Schlebuschらは、
人間の被験者と大規模言語モデル(LLM)の人工知能(AI)チャットボットは、創造的思考課題において、平均点で人間よりも優れた回答を出せる可能性のあることを示した論文が、Scientific Reportsに掲載される。ただし、最高成績を挙げた人間の被験者の回答は、チャットボットの最高の回答より優れていた。この課題の具体的内容は、日用品を提示して、通常の用途以外の使い方を提案させるというもので、これは拡散的思考の一例である。 拡散的思考は、思考過程の一種で、一般に創造性(与えられた課題に対して異なるアイデアや解決策を数多く生み出すことに関与する)と関連付けられている。拡散的思考は、通常、代替用途課題(AUT)を使って評価される。AUTの被験者は、短い時間内に日用品の代替用途をできるだけ多く回答することが求められる。回答は流暢性、柔軟性、独創性、綿密性の4つのカテゴリーで採点される。 今回、M
過去の出来事を科学的に分析することで、未来を予想できるとする「歴史動態学」が登場した。既存の歴史学者は懐疑的だが、このアプローチは興味深い。 SOURCE:REF.1 「歴史は繰り返す」という格言は、時に真実であるように思われる。例えば米国では、1861~65年の南北戦争後に民族間・階級間の反目による暴力事件が都市部で急増し、それが全米に広がって、1870年頃にピークに達した。国内騒乱が次に増加したのは1920年頃で、人種的反感による暴動、労働者のストライキ、反共感情の高まりなどにより、多くの人が近いうちに革命が起こるかもしれないと思った。米国社会は1970年頃にも不穏な状態に陥り、激しい学生デモ、政治的暗殺、暴動、テロが頻発した(『暴力の周期』参照)。 コネチカット大学(米国ストーズ)で個体群動態学の研究をしているPeter Turchinは、米国の政情の不安定さがピークに達した3つの時
ヒトのマイクロバイオームについて言われていることには確固たる証拠に基づかない不正確なものが含まれると論じるPerspectiveが、Nature Microbiologyに掲載される。著者らは、ヒトマイクロバイオームに関し、虚構や誤解がそのままずっと残っていたり、あるいは新たに生じたりしていると強調し、そういった事実関係の誤りについて概説している。 ヒトの腸内微生物相、特にこの複雑な微生物群集と健康や病気との関連については、研究が激増し、人々の関心が非常に高まっている。このような強い関心が誇大な宣伝につながり、一部の誤解を定着させてしまっている。微生物相について繰り返し語られているうちに、裏付けとなる強力な証拠がなくても、また元々の情報の出どころが曖昧なままでも、語られたことは事実であると考えられるようになってしまう。 Alan WalkerとLesley Hoylesは、ヒトマイクロバイ
大規模言語モデルGPT-3は、直接的な訓練なしに、複雑な推論課題を遂行して、人間の参加者と同等かそれ以上のレベルで問題に対する妥当な解を見つけられることを報告する論文が、Nature Human Behaviourに掲載される。 人間の知性の特徴の1つは、以前に遭遇したことのない新たな問題を解決できる能力である。認知科学者たちは、こうした問題解決は、「類推」として知られる重要なメンタルツールによると考えている。類推とは、なじみのない問題と過去に遭遇したことのある問題との間の類似性を見分けて妥当な解を見つける能力である。 今回、Taylor Webbらは、大規模言語モデルGPT-3の類推課題に関する成績の評価を行い、得られた結果を人間の成績と比較した。評価対象の課題は、文章に基づく行列推理問題、文字列の類推、話し言葉の類推、ストーリーの類推で、いずれも、パターンが特定された後に新たな状況に適
ヒゲペンギンがリサイクルしている鉄分は、およそ年間521トンと推定されているが、南極においてヒゲペンギンの個体数が減少しているために南極海の鉄分循環が影響を受けている可能性があるという研究結果を示した論文が、Nature Communicationsに掲載される。ヒゲペンギンの個体数は、1980年以降、気候変動のために50%以上減少したため、現在のヒゲペンギンによる鉄分のリサイクル量は40年前の約半分まで落ち込んでいる可能性がある点もこの論文で指摘されている。この研究知見は、海洋生態系の健全性、植物プランクトンの成長と炭素貯蔵が、ヒゲペンギンの個体数減少によって脅かされる可能性があることを示唆している。 鉄分は、栄養分に富んだ南極海地域で重要な役割を果たしている。これは、植物プランクトンの成長と大気中炭素の隔離が鉄分の利用可能性によって制御されているためだ。オキアミとヒゲクジラの排泄物は、
研究者は、先進的なAIチャットボットの「素晴らしい新世界」に没頭しています。出版社各社は、このツールの理にかなった利用を認めた上で、乱用を避けるための明確なガイドラインを定める必要があります。 大規模言語モデル(LLM)はインターネット上のテキストデータを基に自然な文章を生成するため、LLMツールが生成した文章を使用することには剽窃リスクがある。 Credit: anyaberkut/iStock/Getty 人工知能(AI)が流暢な言語を生成する能力を獲得し、AIが作成した文章を人間が書いた文章と見分けることがますます困難になっていることが、数年前から明らかになっています。2022年のNatureの記事で、既に一部の科学者がチャットボットを研究助手として利用しており、思考の整理の手伝いや、自らの研究に関するフィードバックの作成、コンピュータープログラムの作成支援や研究文献の要約をさせてい
環境中の高レベルのマイクロプラスチックデブリを摂取した海鳥では、一部の病原体や抗生物質耐性菌、プラスチック分解微生物が増加するなど、腸内マイクロバイオームに変化が見られる場合があることを示す論文が、Nature Ecology & Evolutionに掲載される。今回の知見は、マイクロプラスチックの摂取による海鳥の健康への潜在的な影響を浮き彫りにしている。 野生の海鳥はスケールの大きなルートで渡りを行うものが多く、マイクロプラスチックデブリを摂取することが知られている。とりわけ海洋環境において、プラスチック汚染は、腸内マイクロバイオームの変化によるものなど、さまざまな形で動物に悪影響を与えることがこれまでに明らかにされている。しかし、野鳥に関してその影響が立証されたことはなく、そのマイクロバイオームに対するマイクロプラスチック摂取の潜在的影響は、いまだ不明となっている。 Gloria Fa
分子生物学:全ゲノム倍加がもたらす発がん性のクロマチン進化 2023年3月30日 Nature 615, 7954 全ゲノム倍加は、染色体の不安定性に加えて、クロマチン区画の分離の喪失につながり、その結果として、発がん性のエピジェネティック変化と転写変化が起こることが明らかにされた。
ローマ時代から20世紀までにイタリアのミラノで埋葬された500人以上の遺骨の分析が行われ、ミラノの住民の平均身長が過去2000年間ほとんど変化していなかったことが示唆された。どの時代にも身長の個人差が見られたのに対し、さまざまな時代の平均身長の比較では、男女とも有意差が認められなかったのだ。今回の研究について報告した論文が、Scientific Reportsに掲載される。 ヒトの身長は、遺伝や環境の影響によって決定され、ヒト集団の健康や社会的動態の指標として用いられることが多い。今回、Mirko Mattiaたちは、過去約2,000年の間にミラノに埋葬された男女(計549人)の遺骨を分析した。この分析では、ローマ時代(紀元1~5世紀)、中世初期(6~10世紀)、中世後期(11~15世紀)、近代(16~18世紀)、現代(19~20世紀)の時代区分が用いられた。また、これらの遺骨は、裕福でな
1930年代、遺伝学研究のパイオニアであるJ. B. S. Haldaneは、血友病の家族歴を持つ家系に、ある特有の遺伝パターンがあることに気が付いた。血液凝固障害の原因となるこの変異は、母親からよりも、父親から娘に伝えられるX染色体の中に多く現れる傾向がみられたのだ。そこで彼は、子どもには母親よりも父親から多くの変異が伝えられる、という仮説を提唱した1。しかしHaldaneは、「この仮説が証明されるか、あるいは反証されるかは、何年も経たないとわからないだろう」とも認めていた。 その時がついに来た。多数のアイスランド人家系の全ゲノム配列解読から、Haldaneの正しさを示す証拠が得られたのだ。そのうえ、Natureに発表された研究で、男性が子どもを持つ年齢が、子に伝わる変異の数を決定することが明らかになった2。30代、40代と父親の年齢が上がるにつれて、その子どもが、自閉症や統合失調症など
Cover Story:ミイラの作り方:古代エジプトの作業場から明らかになった死体防腐処理のレシピ 2023年2月9日 Nature 614, 7947 地下の作業場で死体の防腐処理を行う古代エジプト人(想像図)。 | 拡大する © Nikola Nevenov 表紙は、エジプトのサッカラ地域で古代エジプト人のミイラ化した遺骸を収めるのに使われていた木棺である。ミイラの存在はよく知られているが、古代の死体防腐処理者が実践した方法の詳細は、まだよく分かっていない。今回M RageotとP Stockhammerたちは、年代が紀元前664〜525年とされるサッカラの防腐作業場の遺物を利用して、そのプロセスの詳細の多くを明らかにしている。彼らは、作業場で見つかった31点の土器を分析した。その結果、器の残留物の生化学的分析と多くの器を特徴付ける「頭に塗る」などの刻印された文字を組み合わせることで、
スズメに似た野鳥、ノドジロシトドの配偶者選びは、雄か雌かだけでなく体色にも左右されるようだ。生態学者Elaina Tuttleは、こうした配偶システムの基盤にある奇妙な染色体の進化を解明することに生涯を捧げた。最後は、がんと闘いながら研究生活を全うした。 クランベリー湖には、生物学者Rusty Gonserがいつもそこで耳にしてきた鳥の歌声が響いていた。しかし、彼はもう二度とそこで、別の慣れ親しんだ声を聞くことはできなかった。 Gonserは25年以上にわたって、妻のElaina Tuttleと毎年夏に、アディロンダック山地にあるこのフィールド調査地を訪れてきた。最寄りの道路からボートで45分かかる場所だ。揺れる木の桟橋にボートを係留している彼の耳に、「オゥ・スウィート・カナダ」と聞こえるおなじみの短い歌声が届いた。それは、スズメ目ホオジロ科のノドジロシトド(Zonotrichia alb
2匹のネコの相互作用においてネコが見せる行動に基づいて、ネコの相互作用を「じゃれ合い」「闘争的」「中間的」の3つのグループに分類できることを報告する論文が、Scientific Reportsに掲載される。この分類法は、飼い主がネコのじゃれ合いと本気の喧嘩を見分けるために役立つ可能性があるとされる。今回の研究では、2匹のネコが、じゃれ合いと攻撃が混ざり合った行動をとる場合があり、その時に飼い主が上手に管理できないと喧嘩に発展するかもしれないことが示唆された。 今回、Noema Gajdoš-Kmecováたちは、2匹のネコの相互作用を記録したYouTubeのビデオクリップとネコの飼い主から直接入手したビデオクリップ(合計105本)を評価した。著者たちは、最初に一部のビデオクリップを視聴して、映像中のネコの行動を観察した結果に基づいて、顕在的な行動のカテゴリー(取っ組み合い、追い掛けっこ、音
以下のプレスリリースに、更新がありました。 地球の固体の内核の回転がマントルの回転に比べて最近減速し、マントルよりもゆっくりと回転している可能性があることを報告する論文が、今週 Nature Geoscienceに掲載される。この発見は、回転の変化は数十年スケールで起きている可能性を示唆しており、地球深部の過程がどのように表面に影響を与えるかについての理解を助けるかもしれない。 地球の内核は、固体地球の他の部分と流体の外核により分け隔たられており、地球自体の回転と異なる回転をすることが可能となっている。内核の自転は、外核で生成された磁場によって駆動されており、マントルの重力効果と釣り合っている。内核がどのように回転しているかを知ることで、これらの層がどのように相互作用をしているかが明らかになるかもしれない。しかし、内核の回転速度や、回転速度がどのように変化しているかは論争となっている。 Y
Cover Story:インパクトの低下:論文や特許は科学の現状を打破するものではなくなりつつある 2023年1月5日 Nature 613, 7942 過去数十年間にわたって、新たな科学技術の知識は指数関数的に成長していた。しかし、今回R Funkたちは、この知識の増大が同じくらい多くの大きな進歩にはつながっておらず、実際に主要な分野のいくつかでは、進歩が減速している兆候が見られることを明らかにしている。著者たちは、過去60年間に公表された4500万本の論文と390万件の特許を分析して、どちらも現状をあまり打破しなくなっており、あまり活気のない知識の網(表紙では、色あせた見た目の糸と単純化が進んでいることによって、これを描いている)につながっていることを見いだした。著者たちは、破壊的進歩の速さが遅くなっているのは、科学技術の本質に根本的な変化が起こっている可能性があると示唆している。
フランスとスペイン北部では、ネアンデルタール人が絶滅するまでの1400年から2900年の間、現生人類とネアンデルタール人の両方が存在していた可能性があることを示す推定結果が明らかになった。この知見を報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。これはモデル化研究によって得られた知見であり、この地域に2種の人類が存在していたことに関する知識が深まった。 ヨーロッパでは、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)が絶滅するまでの5000年から6000年間にわたって、現生人類(ホモ・サピエンス)とネアンデルタール人の両方が存在していた可能性のあることが、最近の化石証拠から示唆された。しかし、現在のところ、この2種の人類が同時代に存在していたことを示す地域レベルの証拠がほとんどなく、これらの地域でホモ・サピエンスが出現した時期とネアンデルタール人が絶滅し
既知のヒト族の中で最古の部類に入るサヘラントロプス・チャデンシス(Sahelanthropus tchadensis)は、700万年前に二足歩行していたことが、太腿と前腕の化石の分析によって明らかになった。この知見は、同様の結論に至った過去の分析結果が基になっている。今回の研究について報告する論文が、Nature に掲載される。 2001年にチャドのトロス・メナラで大量の化石が発見され、初期ヒト族(現生人類と近縁の絶滅種を含む分類群)の新種「サヘラントロプス・チャデンシス」の命名につながり、年代測定によって約700万年前のヒト族種であることが判明した。また、ほぼ完全な状態で発見された頭蓋骨の分析により、サヘラントロプスが2本足で歩行していたこと(「直立二足歩行」というヒト族の定義的特徴)の可能性が示唆された。この仮説については、同時期に同じ地域で発掘された腕と脚の骨に関する研究報告が既にな
先史時代のヨーロッパの人々は、乳糖を消化する酵素の遺伝子を持つようになるまでの数千年間にわたって家畜の乳を飲んでいた可能性のあることを示唆した論文が、Nature に掲載される。この知見は、動物の乳の消費と乳糖耐性の進化を解明する新たな手掛かりとなる。 ラクターゼは、乳に含まれる乳糖を消化する酵素で、古代人が動物の乳を消費したことは、成人におけるラクターゼ活性の持続性の進化に重要な役割を果たしたと考えられている。しかし、動物の乳の消費量は、地域や時代によって大きく異なるため、この点に関しては、かなり不確かな点が残っている。今回、Richard Evershedたちは、酪農業とラクターゼ活性の持続性の共進化をさらに詳しく調べるため、554か所の考古学的遺跡から採取した陶器の破片1万3181個から得られた動物性脂肪の残渣(6899点)を分析して、先史時代の動物の乳の消費に関する包括的な地図を作
マウスの研究から、爪の根元には幹細胞があり、これが部分的に切断された指先を再生させることが明らかになった。 この再生に使われるタンパク質やメカニズムは、 両生類の再生過程で使われるものと類似している。 正常なマウスでは、骨を含む指先が切断から5週間で再生する(上)。しかし、Wntシグナル伝達経路を持たないマウスでは再生が起こらなかった(下)。 Credit: Ref.1 サンショウウオは、肢を失っても新しい肢が生えてくる。ヒトなどの哺乳類ではそうはいかないが、失ったのが指先である場合、爪が十分残っていれば指は再生する。それがわかったのは40年ほど前のことだが、なぜ爪が必要なのかが今回ついに明らかになった。 ニューヨーク大学(米国)の伊藤真由美を中心とする研究チームは、部分的に切断された指の再生が、爪の根元の下にある幹細胞の集団によって行われることをマウスによる研究で明らかにした。しかしその
化学:水の記憶は迅速に失われる 2005年3月10日 Nature 434, 7030 液体の水の常に揺らいでいる3次元構造は、分子がお互いに対してどのように配列しているかという記憶をこれまで考えられていたよりも速く失うらしい。�液体の水に見られる多くの変わった性質は、水素結合と呼ばれる弱い相互作用によって水分子が互いに結合し、相互に緩く結合したネットワークが形成されることによると考えられている。相互作用が十分強く長続きするのであれば、水はある構造配列をしばらくの間「覚えている」かもしれない。だが、それが誤りであることは長年にわたって証明されてきた。にもかかわらず、これはホメオパシー療法の効果を説明するための極めて重要な論拠となっている。つまり、溶液が非常に薄められて活性分子が存在しなくなった場合でも、溶液中の水は希釈前に存在していた活性分子から受けた構造に対する摂動を「覚えている」という
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