小松左京が、阪神淡路大震災から3ヶ月後に毎日新聞で連載した『大震災`95』で書き残した、震災の記録です。 災害を書きとめ、新たな災害に備えるための、小松左京の願いがこもっています。 辛い描写ですが、お読みいただければ幸いです。 1995年5月20日 毎日新聞掲載「大震災`95」より たった十秒間のできごと それは、「たった十秒間」のできごとだった。 --あの震源地明石海峡、マグニチュード7・2の「兵庫県南部地震」の激しい揺れは、そんな短い間だったのだろうか? 私自身は、実感的には、最初の激しい上下動から、引き続いて襲ってきた強烈な、みそすり運動型の横揺れが一応収まるまで、最低二十秒ぐらいは続いたように感じられたのだが……。震源地にもっと近い所に住んでいた友人は、「三十秒」は続いたと、直後に語った。 だが、地震計に記録された「主震」の持続時間は、「十秒間」を示しているのだ。 一月十七日の午前