サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
ドラクエ3
www.art-it.asia
Adorno’s Grey (2012), detail, single-channel HD-video projection, 14 min 20 sec, four angled screens, wall plot, photographs. All images: Courtesy Hito Steyerl. 回路|記録 インタビュー / アンドリュー・マークル、良知暁 ART iT これまでに映画制作や哲学、批評という領域で活動し、昨今では、現代美術の文脈で作品や思考が注目される機会が増えていますね。参加する場として、美術をどのように捉えていますか。また、実践面ではどのようにアプローチしているのでしょうか。 ヒト・スタヤル(以下、HS) 映像作家として経験を積んできたので、私自身、この領域に対しても自分のやり方でアプローチしていきたいと考えています。ほかの専門領域でも同じかもし
マガジン > 連載 > 椹木野衣 > 椹木野衣 美術と時評87:表現の不自由・それ以前 –– 小早川秋聲、山下菊二、大浦信行の<2019年>をめぐって 連載目次 小早川秋聲「國之楯」1944年 紙本着色 京都霊山護国神社蔵(日南町美術館寄託) この夏の終わりに東京の京橋から日本橋にかけて開かれた二つの個展を見て歩くのは、複雑な感嘆と深い失意を伴うものだった。会場はいずれも美術館ではなく画廊で、ひとつは加島美術で開かれた小早川秋聲の非常に珍しいまとまった規模の展覧会だ。生前に画商を通さなかったらしく、小早川の絵を見る機会は今でもたいへん限られており、個展となると関東圏では初めてのことだという。しかも今回の展示は、戦時中に描かれた小早川の代表作「國之楯」(1944年)を中心に据えている。この絵はもと陸軍からの委嘱で描かれたが、当時の軍部には日本人兵士の戦死者を描いてはならないという不文律があり
「表現の自由を守る」・その後 インタビュー / アンドリュー・マークル(ART iT)、前山千尋(共同通信) (本稿は英語版を元に翻訳) 表現の不自由展・その後、展示風景『あいちトリエンナーレ2019:情の時代』 本インタビューは、2019年8月14日に東京都内で実施された。タニア・ブルゲラは同日までに、同じくあいちトリエンナーレ2019に参加したアーティスト10名とともに、トリエンナーレの展示の一部である「表現の不自由展・その後」の展示中止に対する抗議として、出品作品を一時的に停止する意思を表明したステートメントを公表していた(ステートメントには、同トリエンナーレのキュレーターのひとりであるペドロ・レイエスも署名している)。「表現の自由を守る(In Defense of Freedom of Expression)」と題された8月12日付のステートメントは、「表現の不自由展・その後」の展
展示風景「表現の不自由展・その後」撮影:アライ=ヒロユキ 対岸の火事:日本において表現の自由が晒されている脅威 文 / アンドリュー・マークル 翻訳:奥村雄樹 ※ 本稿は、Frieze誌に掲載された「The Threat to Freedom of Expression in Japan」(2019年8月15日)を一部編集、翻訳したものである。 あいちトリエンナーレ2019が迎えた最初の週末は惨憺たるものだったが、あまりにも事態が複層的に入り組んでいるため、一体どこから話を始めればいいのか、一体どうすれば重要な事項をすべて埋没させることなく語ることができるのか、見当もつかない。芸術祭の内覧会から3日後の8月3日に、「表現の不自由展・その後」と題された、日本の公的な機関において近年に検閲された20点以上の作品を集めた展示それ自体が実質的に検閲された。しかしトリエンナーレの主催者たちは、そこに
マガジン > 連載 > 椹木野衣 > 椹木野衣 美術と時評86:歴史の遠近をすり抜けて ―「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら」展からの考察 連載目次 人工知能美学芸術研究会「S氏がもしAI作曲家に代作させていたとしたら」展(The Container、東京)より 資料 ‒ S氏からN氏への指示書(複製)2014年、コピー、紙、21.0×29.7 cm 撮影(以降すべて):皆藤将 最近は時の流れが奇妙に早いというか、これもSNSなどによる副次的な効果なのだろうか。事件や事故、様々な出来事が次々と伝えられるそばから忘れられ、なかには歴史的にみて意義重大なものが混じっても、さしたる吟味がされることもなく、端からひとしなみに消費されていく。その様子には、少なからぬ違和の念を禁じえない。2014年に報じられ、大きな衝撃を与えた作曲家、佐村河内守(敬称略、以下同)が自作と称して別人に代作さ
2019年9月10日、あいちトリエンナーレ参加アーティスト有志(賛同アーティスト33名、9月9日時点)が、あいちトリエンナーレで現在閉鎖されているすべての展示の再開を目指すプロジェクト「ReFreedomAichi」の設立について、東京の日本外国特派員協会で会見を開いた。会見では、ReFreedomAichiが展示再開とその後の「表現の自由」を世界に発信していくために展開する「ネゴシエーション」、「オーディエンス」、「プロトコル」の3つの方向性について、小泉明郎、卯城竜太、ホンマエリ(キュンチョメ)、高山明、大橋藍(以上、登壇者)のほか、加藤翼、村山悟郎、藤井光がそれぞれ発言し、あいちトリエンナーレの当事者以外の幅広く芸術に関わる人々、表現の自由が保障されるべき市民たち、あらゆる自由にあえぐ世界中の人々に、すべての展示の再開を実現し、あいちトリエンナーレを「検閲」のシンボルから「表現の自由
表現の不自由展・その後の中止に対する「ジェンダー平等」としての応答 「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれたことについて、「あいちトリエンナーレ2019」が掲げる重要な指針である『ジェンダー平等』の視点から芸術生産に従事する立場としての意見を述べます。 今回トリエンナーレ事務局に寄せられた多数の抗議や脅迫の対象の、主なもののひとつがキム・ソギョン、キム・ウンソンによる『平和の少女像』であり、この作品は1930年以降から太平洋戦争まで存在した旧日本陸軍、海軍による「慰安婦」制度下における過酷な経験と、その後に強いられた沈黙への告発が出発点となっています。政治問題として扱われることの多いこの問題ですが、本質は女性の人権問題であり、『平和の少女像』も反日プロパガンダのためではなく、被害者女性の類稀なる勇気をたたえ、彼女らの深い傷を公に認知し、市民に平和について考えることを奨励するという意図
マガジン > ニュース > あいちトリエンナーレ2019参加アーティストが「表現の不自由展・その後」の展示閉鎖に対するアーティスト・ステートメントを発表 2019年8月1日、芸術監督の津田大介が掲げるテーマ「情の時代(Taming Y/Our Passion)」の下で開幕したあいちトリエンナーレ2019。前日の内覧会より、展覧会内展覧会として参加した「表現の不自由展・その後」の展示内容をめぐり、事務局に対する一部脅迫やテロ予告ともとれるような抗議の電話やメールが殺到。8月2日に河村たかし名古屋市長が展示会場を視察し、「表現の不自由展・その後」で出品されているキム・ソギョン/キム・ウンソンの「平和の少女像」(2011)の展示の中止を大村秀章愛知県知事に求めることを表明した。同2日に津田が会見を開き、「表現の不自由展・その後」の展示全体の中止を検討している旨を発表し、翌3日にあいちトリエンナー
連載目次 「めぐるアートをめぐる」展、京都場(京都)、2019年 撮影:うえやまあつし ここ数年、障害とアートとの関係でなにか話してください、ということで、しばしば声がかかるようになった。先日も、奈良県で障害者の芸術文化推進に関する事業を運営する一般財団法人たんぽぽの家が主催した展覧会「めぐるアートをめぐる」(京都場、京都)に招かれ、話をしてきたばかりだ(*1)。仕事柄、長年にわたって美術館ではいろいろな話をしてきたが、同じ展覧会と言っても、これらの催しで出品者やそれを支えている人たちが重なることは、ほとんどない。これは「障害」を管轄するのが国でいうと厚生労働省であることから、「美術」を扱う文部科学省や文化庁のカバーする「教育」から主軸が外れていることに由来する。障害者をめぐるアートは、第一義的には教育というより「福祉」の範疇なのだ。子育てを通じての個人的な体感としては、学校(幼稚園)と保
※本連載での進行中シリーズ〈再説・「爆心地」の芸術〉は今回お休みとなります。 『会田誠展:天才でごめんなさい』展示風景、森美術館 2012/11/17-2013/3/31 Courtesy Mizuma Art Gallery 撮影:渡邉 修 写真提供:森美術館 森美術館(東京、六本木)での『会田誠展:天才でごめんなさい』がいろいろと喧しい。私は昨年、すでに展覧会の実見を済ませ、その充実した回顧や新作の展開に大きな関心をそそられた。が、他方で、作家への賞讃ばかりが聞こえてくる当初の反応に、少なからぬ疑問も持った。 会田誠は、その作風から「毒のある作家」とも呼ばれ、今回の展覧会を実現するにあたっても、他館への巡回は予定されておらず、企業による協賛も期待通りには得られなかったと聞いている。そんな「逆風」のなか、美術館をあげての会田誠展を敢行した森美術館の取り組みは刮目に値する。にもかかわらず、
パートナーブース > 美術館 > 原美術館ARC > 「原美術館」(東京都品川区)2020年12月閉館ならびに 「ハラ ミュージアム アーク」(群馬県渋川市) 館名変更のお知らせ 公益財団法人アルカンシエール美術財団は、1979年に「原美術館」を東京都品川区に、1988年に「ハラ ミュージアム アーク」を群馬県渋川市に設立し、この二つの美術館を拠点(いずれも博物館法の定めによる「登録博物館」)として、現代美術の振興と国際交流につとめてまいりました。 このたび、当財団では、来る2020年12月末をもって「原美術館」を閉館し、また2021年からは、「ハラ ミュージアム アーク」の館名を「原美術館ARC(アーク)」と改め、「原美術館ARC」を唯一無二の拠点として、引き続き活動していくことにいたしました。 原美術館の施設は、理事長・原俊夫の祖父である実業家・原邦造の邸宅として1938年に竣工したも
“Ground No Plan,” installation view, Aoyama Crystal Building, Tokyo, 2018. Photo: ART iT. All images: Unless otherwise noted, installation view, “Ground No Plan,” Aoyama Crystal Building, Tokyo, 2018. Photo Kei Miyajima, © Makoto Aida, courtesy Mizuma Art Gallery, Tokyo. アンチ・ソーシャリー・エンゲイジド・アーティスト インタビュー / アンドリュー・マークル I. II. ART iT 東京オリンピックをきっかけに東京では土地開発ますます進み、たとえば、一軒家に住んでいる老人が亡くなると、そこに高層ビルが建てられるといっ
「餐」ジクレープリント 2018年 © Mami Kosemura 【展覧会の見どころ】 原美術館では「小瀬村真美:幻画~像(イメージ)の表皮」展を開催します。本展は、絵画の構図を利用した映像や写真作品を国内外で発表している小瀬村真美の美術館初個展です。出品作品は、実在する静物画を模したセットを長期間インターバル撮影(一定の間隔で連続して写真を撮影)して繋げた初期のアニメーション作品や、ニューヨークの路上に打ち捨てられていたゴミやがらくたを用い、17世紀スペインの静物画と見紛う写真に仕上げた近作に加え、あえて自らの制作過程を露にすることで絵画および自作を批評的に再考する新作の組写真やインスタレーションなど約30点。実力派、小瀬村の魅力に迫るまたとない機会となります。 「粧」 ジクレープリント2018年(7点組) © Mami Kosemura 【開催要項】 展覧会名 小瀬村真美:幻画~像(
Artistic Dandy (2018). All images: Unless otherwise noted, installation view, “Ground No Plan,” Aoyama Crystal Building, Tokyo, 2018. Photo Kei Miyajima, © Makoto Aida, courtesy Mizuma Art Gallery, Tokyo. アンチ・ソーシャリー・エンゲイジド・アーティスト インタビュー / アンドリュー・マークル ART iT 会田さんへの正式なインタビューは、これで三度目になります。一度目は2008年に千葉のご自宅にうかがい、濃密な体験になりました。二度目はそれから5年後の2013年の森美術館での個展のとき。そして、今回、あれからちょうど5年が経ち、2018年にこうしてインタビューを行なうということで、こ
おかんアートという時限爆弾 メインストリームのファインアートから離れた「極北」で息づくのがアウトサイダー・アートであるとすれば、もうひとつ、もしかしたら正反対の「極南」で優しく育まれているアートフォームがある。それが「おかんアート」。その名のとおり、「おかあさんがつくるアート」のことだ。なにそれ?と思うひともいるだろうが、たとえば久しぶりに実家に帰ると、いつのまにか増えている「軍手のうさぎ」とか、スナックのカウンターにある「タバコの空き箱でつくった傘」とか、あるでしょ。ああいうやつです。 どこにでもあって、だれからもリスペクトされることなく、作者本人もアートとはまったく思わず、売ったり買ったりもできず、しかしもらえることはよくあり、しかももらってもあまりうれしくない——そういうのが「おかんアート」の真髄だ。 近年、アウトサイダー・アートのほうはアートワールドの中でも地位を固めつつある。言い
アーティスト集団「オル太」のメンバーとして活動するメグ忍者の連載。第二回は、卵巣腫瘍と子宮筋腫を取り除く手術を受けたメグ忍者が、術後に感じた身体の痛みや入院中の心境、腫瘍発見から手術に至るまでの経緯を克明に綴る。
Nicolas Bourriaud lectures at Tokyo University of the Arts, January 8, 2018. Photo: Shu Nakagawa, courtesy Tokyo University of the Arts. 実践と理論のあいだ インタビュー / 星野太 (※本稿は英語版を元に本誌編集部が翻訳) ART iT まずは初期のご活動についてうかがいたいと思います。意外なことに、この時期のことはほとんど英語でも書かれていません。この時期のあなたにとって、イヴ・クライン、ピエール・レスタニ、そして、ヌーヴォー・レアリスムが重要だったと読んだことがありますが、どのような影響を受けたのでしょうか。 ニコラ・ブリオー(以下、NB) 彼らを最初に知ったのは17歳の頃でした。その頃の私は、既に文学か美術、行為か省察、言語かイメージのどちらかを選
会期:2018年1月6日[土]- 6月3日[日] 前期: 1月6日[土]- 3月11日[日] / 後期: 3月21日[水・祝]- 6月3日[日] *展示替え休館: 3月12日[月]- 20日[火] 奈良美智「Eve of Destruction」2006年 カンヴァスにアクリル絵の具 117x91 cm ©Yoshitomo Nara (後期出品) 【概要】 原美術館は、1979年日本における現代美術館の先がけとして開館しました。創立者・現館長の原俊夫は、現代美術の発展と国際交流に情熱を傾け、様々な展覧会を開催する一方、コレクション活動にも力を注いできました。本展は、ひとつひとつ丹念に収集した1950年代以降の絵画、立体、写真、映像、インスタレーションなど所蔵作品約1000点の中から、原が初めて自ら選びキュレーションするコレクション展示です。1970年代後半より80年代前半までの初期収蔵作
Abstract Painting (945-2) (2016) oil on canvas, 112 x 70 cm ©️ Gerhard Richter, courtesy WAKO WORKS OF ART ゲルハルト・リヒター『Painting 1992-2017』 2017年12月16日(土)-2018年1月31日(水) ワコウ・ワークス・オブ・アート http://www.wako-art.jp/ 開廊時間:11:00-19:00 休廊日:日、月、祝、冬季休廊(12/28-1/5) ワコウ・ワークス・オブ・アートでは、開廊25周年記念展として、現代絵画における最も重要なアーティストのひとり、ゲルハルト・リヒターの個展『Painting 1992-2017』を開催する。日本初公開作品および世界初公開作品など、同画廊が開廊した1992年から2017年制作の最新作のなかから、リヒター
Teppei Soutome Three Piece (2017) 100.5 x 33.5 cm, set of 6, acrylic on canvas 五月女哲平「犠牲の色、積層の絵画」 2017年11月11日(土)-12月2日(土) 青山|目黒 http://aoyamameguro.com/ 開廊時間:12:00-19:00(日曜は18:00まで) 休廊日:月、火、水、木 青山|目黒では、薄く溶いたアクリル絵の具を裏キャンバスに染み込ませるように重ねていく技法で描かれた抽象的な絵画で知られる五月女哲平の個展『犠牲の色、積層の絵画』を開催している。 五月女哲平は1980年栃木県生まれ。2005年に東京造形大学を卒業。2000年代中頃より東京を中心に作品を発表しており、2011年には小山市立車屋美術館で個展『猫と土星』を開催。そのほか、『VOCA展2012 現代美術の展望-新しい平面
青野文昭「なおす・代用・合体・連置(東京・井の頭自然文化園で使われていた自転車の復元から)」2016年 photo:Tsutomu Koiwa コンサベーション_ピース ここからむこうへ 2017年9月9日(土)-10月15日(日) 武蔵野市立吉祥寺美術館 http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/ 開館時間:10:00-19:30 休館日:9/27 企画担当:大内曜(武蔵野市立吉祥寺美術館学芸員) 武蔵野市立吉祥寺美術館では、記憶と保存の関係をめぐる企画展『コンサベーション_ピース ここからむこうへ』を開催。 本展は、記録と記憶のあり方をテーマとした昨年の『カンバセーション_ピース:かたちを(た)もたない記録』からの連続企画。「忘れられ消えつつある他者あるいは自己の記憶。それらはできるかぎり保存(conservation)されるべきなのだろう
滝のそばで – すべては必然として インタビュー / アンドリュー・マークル Installation view, “The Water Trilogy 2: Autodefensión Microtonal Obrera Campesina Estudiantil Metabolista Descalza” at Ginza Maison Hermès Le Forum, Tokyo, 2017. Photo © Nacása & Partners Inc., courtesy Fondation d’entreprise Hermès. I. ART iT あなたの制作や『水の三部作』の背景となるものについて考えながら、一方に国民国家、近代化、均質化、もう一方に社会組織、土地利用、天然資源へのオルタナティブなアプローチを配した緊張関係におけるひとつの点、「先住民」という言葉に何度も立ち
東京都写真美術館は総合開館20周年記念として『ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館』を開催。現代社会のさまざまな問題を示唆するとともに、写真や写真集のメディアとしての新たな可能性を切り拓く写真家、ダヤニータ・シンの初期の代表作から最新作までの幅広い表現形式を通じて、その詩的な美しい世界を展示空間に実現した。 本稿は2017年5月20日に実施されたダヤニータ・シンによる講演を東京都写真美術館の協力のもと、ART iT編集部が編集、掲載している。 〈ミュージアム・オブ・チャンス〉より 2013年 『ダヤニータ・シン インドの大きな家の美術館』関連企画 ダヤニータ・シン講演会 まず、私自身の極めて主観的かつ個人的な写真史の話からはじめましょう。私にとっての写真史は1843年、私が写真の母とみなしているアナ・アトキンスからはじまります。彼女はトルボットから写真を学び、また別の人物からサイアノ
連載目次 昭和基地中心部 写真提供:国立極地研究所 銀座で立ち寄ったとある展示の帰り、京橋の駅から地下鉄に乗ろうとリクシルのビルの前を通ると、2階のギャラリーで「南極建築 1957–2016」と題する展覧会をやっているのに気づいた。すごいタイトルだ。少し急いでいたが、見逃せないと感じて会場に向かった。案の定、たいへん見応えのある展示だった。おかげですっかり予定が狂ってしまったが、得たものはそれ以上に多かった。 それにしてもなぜいま「南極」なのか。開催概要を読んでも、そのことについては書いていない。展覧会が扱っているのは、1957年から2016年に至る日本による南極での建築なので、私が展示を見た2017年は、日本が初めて南極に昭和基地を開設した1957年から数えて、ちょうど60周年ということになる。そういうことが関係していたかどうかはわからないが、この企画展が始まった大阪会場(本展は大阪と東
難民の移動ルートを学びの場へ変容させる「道の演劇」: ヨーロピアン・シンクベルト / マクドナルド放送大学 レポート 文/ 相馬千秋 写真上: ムーザントゥルム劇場エントランス 写真下: 劇場内部のカフェ ここはどこだろう?多くの人が、瞬間的にマクドナルドを想起するにちがいない。しかしよく見ると何かが違う。Mのアイコンが角ばっている。そして看板には、「McDonald’s Radio University」の文字。実はここは、ムーザントゥルム劇場のカフェである。ドイツ・フランクフルト市が出資し、欧州のフリーシーンを牽引する公共劇場の一つだ。周囲はフランクフルト市内でも有数の閑静な高級住宅街。創設から30年、地域の風景の一部となっていた劇場のカフェが、ある日突如マクドナルド店に変容したことに、観客も地域住民も困惑と好奇心の入り混じる感情で様子を窺っているという。 2017年3月2日、この擬似
アートに力は内在するか? インタビュー / アンドリュー・マークル(※メールインタビュー) Spread from The Blind Man, no. 2 (May 1917). ART iT 著書『アート・パワー』を英語で出版した2008年から、あまりに重大な8年が過ぎました。この間に起きた数多くの出来事の中には、2008年9月の世界金融危機、オキュパイ運動やティーパーティーなど左右のポピュリズム運動の台頭、ギリシャ債務危機、ブレグジット、アラブの春、ISISの登場、欧州難民危機、ロシアのクリミア編入、中国の近隣諸国領海への侵入、キューバとアメリカ合衆国の国交回復がありました。また、イスラエルやトルコ、ポーランド、インド、日本、そして、アメリカ合衆国と、ナショナリズムや独裁性の強い政権が誕生する傾向も目にしてきました。現在という地点から振り返ったとき、本書に収録した1997年から200
原美術館[東京・品川]より 「Kurt Sleeping」1995 板に油彩 27.9×35.6 cm Private Collection, New York © Elizabeth Peyton, courtesy Sadie Coles HQ, London; Gladstone Gallery, New York and Brussels; neugerriemschneider, Berlin 【展覧会概要】 90年代半ば、ミュージシャンや歴史上の人物、あるいは恋人や愛犬など、自身にとって“憧れ”の存在や“美”を描いた肖像画が、時代に新風をもたらす“新しい具象画”と称されたアメリカの女性作家、エリザベス ペイトン。近年では風景や静物、オペラからもインスピレーションを得るなどその表現を一層深め、各国で高い評価を得てきました。透明感のある特有の色彩、素早くも繊細な線によって、対象をた
連載目次 飴屋法水「何処からの手紙」(茨城県北芸術祭2016)は、参加者が茨城県北の実在郵便局に葉書を送り、招待状風の手紙を受け取ることで始まる。写真は、手紙の1つに導かれ辿り着く久慈川のほとり。 ほぼ一年前の2015年末、本欄では「2015年回視 — 『ベスト展覧会』の対岸から」と題し、この場を一回分割いて一年間の美術の現況をめぐる回顧を行った。回顧ではなく「回視」とし、「対岸から」となっているのは、毎年この時期ににわかに盛んとなる「年間ベスト展」をめぐるプチ熱を、少し冷めた位置から眺めておきたかったからだ。かく言う私も『読売新聞』の「3氏が選ぶ展覧会ベスト4」欄で、そうした「風物詩」に寄稿するのが恒例となっている(*1)。ちなみに、2016年に開かれた展覧会から私が選んだのは、「MIYAKE ISSEY展:三宅一生の仕事」(国立新美術館)、飴屋法水「何処からの手紙」(茨城県北芸術祭)、
残るものさえ真理なり インタビュー / アンドリュー・マークル Claes Oldenburg Giant Pool Balls (1977), Skulptur Austellung in Münster 1977, photo LWL / Hubertus Huvermann 2016. ART iT この20年の間に日本ではミュンスター彫刻プロジェクト(以下、彫刻プロジェクト)をモデルにしたような新しい形の展覧会が増えてきました。その多くは人口が減少し、経済や産業も縮小している地域を舞台にして、もはや使われていない学校や工場、家屋などの建物を転用した複数の会場からなるアートイベントとして開催されていますが、それらは地域のインフラや経済の再生を目的とした支援を受け、行政や地方自治体との間に強い結びつきがあります。彫刻プロジェクトがそれらと異なるのは、当初、ミュンスターの市民や行政と対立
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『ART iT(アートイット) -』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く