サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
ノーベル賞
www.vcasi.org
Event Date: Mon, 2013-09-09 日時: 2013年9月9日(月)13:00 - 18:00 場所: 東京財団 発表者: 鈴木健(VCASIフェロー,サルガッソー代表) 瀧澤弘和(VCASIフェロー,中央大学) 岩村充(早稲田大学) 大屋雄裕(VCASIフェロー,名古屋大学) 坂井豊貴(慶應義塾大学) 武藤正義(芝浦工業大学) 山岸俊男(VCASIフェロー,東京大学) 猪口孝(新潟県立大学) (予定。敬称は略させていただきました。) 概要: 第Ⅰ部:諸分野からの論点提起(敬称略,予定) 13:00 - 13:30 鈴木健:「『なめらかな社会とその敵』イントロダクション」 13:30 - 13:50 瀧澤弘和:「PICSY経済,言語の重要性」 13:50 - 14:10 岩村充:「レジデュアルとしての貨幣」 14:10 - 14:30 大屋雄裕:「近代法と個人の存在」
「仕切り」が生み出す「矛盾」 " The Prehistory of the Mind: A Search for the Origin of Art, Religion, and Science. " Steven Mithen, Harvard University Press, 1996. (『心の先史時代』スティーブン・ミズン著 松浦俊輔・牧野美沙緒訳 青土社) 評者:瀧澤弘和(多摩大学、東京財団、VCASIリサーチ・コーディネーター) " The Prehistory of the Mind: A Search for the Origin of Art, Religion, and Science. " Steven Mithen, Harvard University Press, 1996. (『心の先史時代』スティーブン・ミズン著 松浦俊輔・牧野美沙緒訳 青土社) 本書は
――まず、先生の研究について伺いたいと思います。先生はシカゴ大学社会学部の教授であると同時に、経済産業研究所(以下RIETI)の客員研究員としても研究をされていますね。それぞれの場所では、だいぶ違ったお仕事をされているんでしょうか? 山口 違うというよりは、RIETIでの研究がシカゴ大でのそれの応用になっています。私の本来の専門の一つは統計モデルの開発です。縦断的調査のデータを分析する手法で、主に従属変数がカテゴリー変数であるモデルを用いるのがその特徴です。その応用として、最初は社会階層化や社会的不平等の問題を扱っていたんですが、近年はほとんど就業と家族の問題が中心です。特にワーク・ライフ・バランス(以下WLB)という概念がキーですが、そのテーマで一連の研究論文を書く意思を固めたのは、VCASI主宰の青木昌彦先生がRIETIに招いてくださったのがきっかけなんです。それ以前は就業と家族といっ
VCASIフェローである小島武仁氏が、日本経済新聞にて、2009年8月6日より「やさしい経済学」コーナーに8回にわたって連載をいたしました。下記に、許可を得て転載させていただきます。 マーケットデザインは、近年急速に発達した、経済学の新しい分野である。これまでの経済学を非常におおざっぱに「既に存在する市場や制度の働きを研究する学問」であるとするならば、マーケットデザインはそこから一歩踏み込んで、制度を設計、変更することを研究対象にする学問である。 伝統的な経済学では、学問的な成果を現実の制度設計に生かすことがなかなかできなかった。これに対し、マーケットデザインは現実のマーケットをつぶさに観察して分析し、現実の経済問題に対し具体的な解決法を示すことに成功してきた。
日本経済新聞(2010年7月22日付)経済教室にVCASIフェローの神取道宏(東京大学教授)のコラムが掲載されました。下記に許可を経て掲載させていただきます。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------- ポイント 「何度も入札」が価格を下げるとは限らない 「1回だけ入札」と比べて価格が高い場合も 自由な参入を確保しなければ談合招く恐れ ---------------------------------------------------------------------------------------------------------- 無駄が多いと批判される政府の物品購入のやり方を「競り下げ(逆オークション)」と
ゴシップこそ社会的インタラクションの活力 " Grooming, Gossip, and the Evolution of Language" Robin Dunbar, Harvard University Press, 1996. (『言葉の起源:猿の毛づくろい、人のゴシップ』ロビン・ダンバー著 松浦俊輔・服部清美訳 青土社 1998年) 評者:上柿崇英(東京農工大大学院、Friend of VCASI) “Grooming, Gossip, and the Evolution of Language” Robin Dunbar, Harvard University Press, 1996. (『言葉の起源:猿の毛づくろい、人のゴシップ』ロビン・ダンバー著 松浦俊輔・服部清美訳 青土社 1998年) 本書は80年代から90年代にかけての進化心理学的な議論を応用し、新しい言語起源
昨今の金融危機で「ウォール街の文化」、すなわち米国投資銀行で働く人々の行動パターンと倫理に注目があつまり、現在様々な議 論が展開されている。議論のひとつの焦点は、投資銀行におけるインセンティブのあり方である。これは非常に重要な視点であることは間違いない。しかし、こうした議論の前提となっている人間像は、合理性と情動のはざまを生きる個人であり、さまざまな関係性によって構成されるより多元的な現実を生きる実際の人間とはかけはなれた、単純化された人間像である。世界中で多くの人々に犠牲を強いた今回の危機は、より現実的な人間像にたった市場とその規制のあり方を考える絶好のチャンスである。 1990年代後半以降ミシェル・カロン、カリン・ノール=セティナ、ドナルド・マッケンジーらヨーロッパにおいて科学社会論(Social Studies of Science)をリードしてきた社会学者たちは、科学から金融へと分
日経新聞2011年1月7日付「経済教室」にて、VCASIフェロー玄田有史(東京大学教授)氏の原稿が掲載されました。下記に許可を経て、転載いたします。 最近、何かと「幸福」が話題だ。フランスのサルコジ大統領は、経済発展を目指す際にも幸福度を加味すべきだという報告書を2009年に出した。英国のキャメロン首相も、国民の実感している幸福度を示す新指標の開発を検討中という。そして幸福の反対である「不幸」を最小にすることを標榜した菅直人内閣。いずれにも、経済成長を追い求めるよりは、もっと内面的な心の充実を目指そうという考えが見えかくれする。 はたして幸福追求という戦略は、今後向かうべき新たな針路となるのだろうか。会社にたとえて考えてみる。売り上げも利益も好調が続き、給料もそれなりに払われている。けれども働いている社員には達成感や充実感がまったくない。職場の雰囲気も悪い。そんなとき、業績や報酬だけでなく
池上高志氏(複雑系、人工生命/東京大学総合文化研究科/http://sacral.c.u-tokyo.ac.jp/~ikeg/) 人工生命は「生命とは何か」を構成論的な方法で理解しようという研究アプローチである。そのため、人工生命は本質的にハードサイエンスを志向している。この理解を深めるために、まず人工生命の主要な4つの潮流を概観し、これらの研究が一体何を目指しているのか、そのモチベーションを明らかにする。その上で、講演者の研究のうちいくつか(マシンとテープの共進化、ゲームのダイナミクス、ターンテイキング、オイルドロップレット、MTMなど)を紹介しながら、この20年の間でどういう進展と自己批判があったかを振り返る。最後に、artificial life larger than biological lifeというコンセプトで最近取り組んでいる人工生命の新しい方向性やアート活動について議論し
斉藤淳氏(政治学/Yale大学政治学部助教授、元衆議院議員/http://pantheon.yale.edu/%7Ejs454/) 本報告では、戦後日本政治経済を素材に、選挙と経済政策の関係について、説明責任の論理を通じて考察する。代表民主制をシュンペーター的に考えるなら、選挙は有権者が政治家を雇用する過程であり、雇用契約の役割を果たすのが憲法であり選挙制度である。ここで民主的説明責任とは、政治家の側が互いに競争しながら、自らの政策実績と展望を説明することによって機能する。そして有権者がこれを評価し、選挙において優れた選択肢に投票することで、政策運営への委任が生ずる。 しかし実際の選挙過程では、有権者の側が集合行為問題に直面するだけでなく、選挙過程に根ざす様々な代理人問題が発生する。特に現代社会における政策運営は高度に技術的な知識を必要とし、政治家と官僚機関との間にも相互依存関係が発生する
In this paper, we experimentally investigate the guilt aversion hypothesis using a trust game with hidden action and pre-play communication. For this purpose, we develop a new, modified version of guilt aversion. It is shown that this modified version is consistent with all extant experimental results in the literature and cannot be rejected by any of them. We then design an experiment that can te
2009年12月14日,社会科学の哲学が専門の吉田敬氏(東京大学グローバルCOE「共生のための国際哲学教育研究センター」(UTCP))をお迎えし,第20回VCASIセミナー「社会科学の哲学から見た神経経済学」を開催した. 発表では,まず初めに,日本ではあまり知られていない「社会科学の哲学」という学問領域がどのようなものであるかについての解説がなされた.社会科学の哲学とは,社会科学に関する哲学であり,主に社会科学の認識論的・方法論的考察を行う学問領域である.かつては方法論的考察が中心だったが,今日では存在論的考察も行われるようになってきたという. 社会科学の哲学において伝統的に問われてきた問題の例としては,以下のようなものがある. ・自然現象と社会現象は根本的に異なるのかどうか ・社会科学の目的と方法は自然科学の目的や方法と異なるのか ・社会科学において,科学者自身の価値観はどのように位置づ
1866年「パリ言語学会」は,言語の起源についてあまりにも荒唐無稽な説が次々と提出されることから,言語の起源に関する論文を受理しないとする条項を創立規約に盛り込んだという.しかし,その後もこの問題に対する人々の好奇心は尽きることがなく,20世紀に入り,ヒトを研究するアプローチがさまざまな広がりを見せるにつれて,新たな視点からこの問題に挑む可能性が大きく開けてきた.さらに,言語の「起源」ばかりでなく,その「進化」のプロセスに焦点を当てる研究もかつての歴史的な比較言語学を超えて,今日多様な広がりを見せつつある. ヒトとヒトが形成する社会を研究する上記のアプローチの中には,進化生物学,認知科学,脳科学,複雑系科学と,それに影響を受けた心理学,人類学,言語学等々の関連諸分野が含まれる.今日では,言語の起源と進化の問題の解明に,こうした諸分野をまたいだ学際的対話が必要であることが明らかになっている.
VCASIフェローの池尾和人氏が『週刊東洋経済』2009.10.17号、「経済を見る眼」欄に寄稿いたしました。下記に、許可を得て、転載させていただきます。 しばしば「わが国の強みは1400兆円にも及ぶ家計金融資産が存在することであり、それを経済成長のために有効活用すべきだ」といった見解が述べられることがある。しかし、筆者自身は、この種の見解には違和感がある。 というのもこうした見解は、他方でわが国には膨大な政府債務が存在していることを無視しているからである。換言すると、家計金融資産はすでに一定の用途に「活用」されているのであり、他の用途にそれを活用するためには現行の用途から解放してやらなければならない。 日本銀行の資金循環統計によると、ざっくり言って、家計部門自身も住宅ローンなどの負債を約400兆円抱えているので、純資産は1000兆円ほどである。その半分の500兆円は一般政府の負債をフ
社会科学の役割は「見晴らしのいい丘」 語り手:鶴光太郎 経済産業研究所上席研究員 聞き手:大西健、成田悠輔(VCASI研究助手) 鶴光太郎氏(東京財団仮想制度研究所(VCASI)フェロー、経済産業研究所上席研究員)は、経済企画庁(当時)を皮切りに、OECD、日本銀行でのエコノミスト経験を経て現在は経済産業研究所で比較制度分析や経済システム分析、コーポレートガバナンスなどの分野で研究を行っている。本インタビューでは、鶴氏がこれまで政策現場そしてアカデミアにおける研究から見てきた「制度」への認識や課題、社会システムのあり方、さらにはVCASIと今後の政策研究の可能性についてお話をうかがった。 大学の数学科を卒業して経済企画庁に入庁したが(1984年)、当時急務だったのは貿易摩擦問題をどう考えるかということ。3年目に海外調査の部署でアメリカの経済分析を担当したが、為替レートや貿易収支についての理
2010年3月31日、VCASIは公開研究会「社会のルールについてV:社会と個人の相互性への実験的アプローチ」を開催した。当日は、青木昌彦(比較制度分析/VCASI、Stanford大学経済学部)の導入に続いて、山岸俊男(社会心理学、実験社会科学/北海道大学文学研究科)、金子守(ゲーム理論、論理学/筑波大学システム情報工学研究科)、藤井直敬(神経科学/理化学研究所脳科学総合研究センター)の発表、そしてそれらに対する瀧澤弘和(ゲーム理論/VCASI、中央大学経済学部)、平井洋一(計算機科学/東京大学大学院情報理工学系研究科コンピューター科学専攻)、加藤淳子(政治学/東京大学法学政治学研究科)の討論を中心に議論が進んだ。 参加者は、VCASIフェローの岡崎哲二(経済史)、戸矢理衣奈(歴史学、社会心理学、ブランディング)、松井彰彦(ゲーム理論、経済学)、安田洋祐(ゲーム理論、ミクロ経済学)の他、
本報告では、社会に於ける諸個人の個別の行為ではなくその全体が織りなす行為パターンとしての制度・社会規範といった対象が規範理論的・政治哲学的に正当化されるということがどういう事かを改めて整理し、更にその応用として帰結主義的規範理論(なかんずく功利主義)が社会規範をどのように位置づけるかに関する基礎的な議論を試みたい。この作業は、功利主義を初めとする帰結主義理論の下で、立法などの統治的行為・国家介入によって社会規範を執行し維持し或いは改変し或いは破壊することが果たして正当化されうるか、そうだとして、どのような介入が正当化されるか、を論ずるための基盤となるべきものである。 上述のような議論を踏まえつつ、特に、(消極的)自由や自律に内在的な価値を認めない功利主義の下で、どのような統治が正当化されうるかを改めて確認しつつ、時に「アーキテクチュア的統治」として大雑把に括られがちな統治の諸様態について概
専門分野社会心理学・実験社会科学 関心テーマ心理制度分析(psycho-institutional analysis)、心の社会性、実験社会科学 最近考えていること、など人間性や社会の働きについての信念(social axioms)や行動の「文化差」を制度に対する適応の観点から分析するための実験を計画しているのですが、文化心理学者が報告している「心の文化差」のほとんどは、マクロレベル(文化間の平均の差)では追試に成功しているにもかかわらず、個人を単位とした分析では指標間に全く相関が見られないので、どの指標を使うべきか悩んでいます。この結果は、制度がマクロ変数であることを考えるともっともな気がするのですが、いざ実験に用いるべき適切な指標を選ぼうとすると困ったことになってしまいます。ということで、最近、一般の人々を対象にして、一年間にわたり様々な実験に繰り返し参加していただく研究を開始しました
VCASIフェローの安田洋祐氏(政策大学院大学)の記事が、日経新聞3月4日付「経済教室」に掲載されました。下記に、許可を得て、転載します。 -------------------------------------------- 昨年、民主党が初めて編成した2010年度の政府予算は、一般会計の歳出総額が92兆円を超える一方、税収見込みは新規国債発行額44兆円を下回る37兆円にとどまった。ストック面を見ても、国会財政の逼迫(ひっぱく)が指摘されている。国と地方を合わせた長期債権残高は10年度末には862兆円程度と国内総生産(GDP)比180%を突破する見込みで、経済協力開発機構(OECD)諸国中、群を抜いて高い。 これを機に最近、日本でもソブリンリスクに対する懸念が高まっている。ソブリンリスクとは本来は「国が対外的に支払い不能となるリスク」のことだが、国債の9割以上を国内投資家が保有している
情報技術を用いて、この社会をバージョンアップすることを試みたい。活版印刷技術が数百年かけて近代社会に様々な革命をもたらしたように、コンピュータやインターネットの登場は、社会に革命的な変化をもたらすと言われてきた。しかし、インターネットが社会に広く利用されるようになって15年たつが、未だにこうした変化は起きていない。これはむしろ当然ともいえる。アラン・ケイの言う通り、300年スパンでしか本質的な変化は起きないのかもしれない。本研究では、アラン・ケイの「未来を予測する最良の方法は未来を発明することである」という有名なテーゼに基づき、社会システムを発明することを試みる。具体的には、貨幣システム、投票システム、軍事システムなどがその対象となる。伝播投資貨幣PICSY、分人民主主義 divicracyといった発明がどのように国家、組織、個人といったものの仮想化を支えていくか、理論、数理モデル、思想、
公立小学校や公立中学校の生徒達が、従来の通学区域にしばられることなく複数の選択肢の中から学校を選ぶことを可能にする「学校選択制」は、今日最も注目を集めている政策問題の一つだ。1998年の三重県紀宝町を皮切りに全国で導入が進められているこの新しい制度を巡っては、各学校の特色や生徒数の増減に与える影響などを中心に、導入当初より活発に論争や研究が行われてきた。本稿では、学校選択制の是非に関して身近な例を用いながら分かりやすく整理すると共に、著者自身の研究テーマであるメカニズムデザイン理論の視点から、学校選択制の制度設計についても論じてみたい。 2000年の品川区を出発点に非常に速いペースで学校選択制が浸透してきた東京都区部では、現在までに23区中19区において学校選択制が導入されている。全国で最も学校選択制が普及しているこの地域では、多くの家庭にとって“公立学校を選ぶ”ことがもはや当たり前になっ
本書は,ユニークな一次史料に基づいた厳密な歴史分析と,経済社会において人々の行動を動機づけるさまざまな誘因(インセンティヴ)を数理的に分析するゲーム理論を統合する画期的な試みである. 1989年の経済学界は,ノースウェスタン大学出身の若い研究者が書いた博士論文の話題で持ちきりであった.経済学の博士号のほかに歴史学の修士号をも合わせ持つこの研究者は,カイロ旧市街のゲニーザと呼ばれる驚くべき文書貯蔵庫から発掘された膨大なヘブライ語書簡を丹念に読み解き,11世紀の地中海遠隔地貿易に従事したユダヤ人貿易商が,ゲーム理論の数理モデルから導かれる「評判メカニズム」「くり返しゲームのトリガー戦略」を使って協調を達成していたことを明らかにしたというのである.この若き研究者こそが,本書の著者であるアブナー・グライフであり,その博士論文とその後の研究の進展は,経済史のみならず,経済学一般や政治学における制度と
前半へ [数学から社会学へ] ――ここからは、先生の個人史を中心に研究のバックグラウンドについてうかがいたいと思います。先生は学部時代を東京大学の数学科で過ごされたんですよね? 山口 そうです。ただ、私自身は社会の仕組みに興味がありました。ちょうど東大紛争時代だったこともあって、授業がないときには社会科学の本をずいぶん読み漁りましたね。それが最終的に社会学を選ぶきっかけになりました。 丸山真男など思想的なものもずいぶん読んで非常におもしろかったんですが、確率過程や確率論をやっていたものですから、科学的なもの、つまり事実があってそれに関する理論を実証するようなものを求めて、安田三郎の書いた『社会移動の研究』(東京大学出版会、1971年)という、社会移動が親子間の職業の差異にどのような影響を与えるかに関する本を読みました。彼はアメリカの一流雑誌に関連する論文を書いたのですが、安田の指数と呼ばれ
2009年12月9日,VCASIでは複雑ネットワークがご専門の増田直紀氏(東京大学大学院 情報理工学系研究科 数理情報学専攻)を迎え,第18回VCASIセミナー「複雑ネットワーク上の進化ゲーム」を開催した。 発表では,プレイヤー同士の相互作用を規定するネットワーク構造に着目した進化ゲーム理論の成果を概観した後,スケールフリー性に絞った紹介がなされた。(動画1)スケールフリーネットワークはプレイヤーの結合次数の分布がベキ則にしたがうようなネットワークとして定義されており,多くのプレイヤーと結合するハブプレイヤーが存在する。(後述の総和利得の仮定の下では)ハブプレイヤーは隣接する他のプレイヤーの行動に影響を与えやすい。したがって、ハブの協力行動は他のプレイヤーの協力行動を促し、結果としてハブの協力行動を最適にする。(動画2) しかしながら,スケールフリー性による協力の促進には少なくとも二つの条
当たり前のことだが、世の中の様々なしくみは「ふつう」の人を基準に作られている。手すりの位置や階段の段差のような物理的なものから税制や社会保障制度のような経済制度まで、目に見えるものから目に見えないものまですべての基準は「ふつう」の人である。その結果、「ふつう」の基準から外れている人には様々な呼称がつけられる。ホームレス、母子家庭、障害者などなど。かれらはグループ分けされ、必要最低限のニーズを行政に決められ、個々のニーズは「ぜいたく」と呼ばれ、社会のお荷物として生きていくことになる。「障害者」から「健常者」へ移ることにも障害(バリア)が設けられている。 たとえばこんな例がある。ある職場に手取り足取り教えられないと仕事ができない人がいた。世の中では知的障害者と呼ばれている人だ。現場の上司がわかりやすくシールを貼ったり、やってはいけないことを繰り返し説明したりしながらようやく仕事を覚えて何とか役
本セミナーでは現象学的な自己のありようについて自律エージェントの観点から議論する。特に演者の一連の脳・認知ロボットの実験研究から、自己についての三つの在り様、最小自己、社会的自己、自己参照的自己について言及していく。これらの自己についての統合的な考察から、真の自己は自らの過去の回帰・反省と将来への予測の相互作用のもとに自己組織化される臨界的な状況においてのみ存在すること、そして真の自律性はそのような自己の発現が不可欠であることを示していく。 参考文献: J. Tani: "Autonomy of self at criticality: The perspective from synthetic neuro-robotics" Adaptive Behavior, Vol.17, No.5, pp.421-443, 2009. http://www.bdc.brain.riken.go.
明治時代、我が国で初めて制定された近代的民法がフランス人顧問ボワソナード(1825-1910)によって起草されたものであることは、多くの人が知っているだろう。では、現在のベトナムとカンボジアの民法が日本の支援によって成立したものであることは、どのくらい知られているだろうか。 1991年のソ連崩壊を契機として、特に旧東側に属する諸国は相次いで民主化と市場経済の導入を目指すようになった(もちろん、そのどちらを重視するかは国ごとに温度差がある)。だが、WTOを典型とする世界経済体制への参入と経済発展を狙う彼らが直面したのは、市場経済の基礎となるさまざまな要素が彼らの従来の国制には欠けているという事態であった。たとえば外国企業に投資を求めようとしても、土地所有権も、公正でアクセス可能な裁判制度も十分には発達していない。弁護士を含む法律家の数も不足している。このような状況を改善し、体制移行国の経済発
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『仮想制度研究所 VCASI』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く