背負った課題を解決しようとメルロが傾けた努力ははたして報われたのか、初期のメルロの構想が後期でほんとうに新たな展開をなしとげえたのか、それを訊ねなくてはならない。繰り返しになるが、彼の初期の「表現論」から引き出されるいくつかの論点が彼の戦略にたいしてどのように関連するかを確認しておこう。 彼は〈表現〉を身体性に根ざすものとして捉えた。生後間もない幼児が養育者に微笑むことに示されるように、自意識の成立しない段階における身体的所作としての表情こそ表現の原型であり、ここからはまっすぐな経路が発達した子供の身体運動がかもす表情性につながっている。やがて子供は事物を指さしながら発語によってその名を呼ぶことになるだろう。 それゆえ第一に、表情ある身振りから発語が創発される事態におのずと語らせ、それを現象学的記述ですくい取る必要があるだろう。この目的には遣い古された哲学用語は役に立ちそうもない。メルロが
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