東京ミッドタウンのサントリー美術館で「歌舞伎」展が開幕した。これは4月2日にこけら落とし公演が決まった第5期歌舞伎座の開場を記念した展覧会である。サブタイトルは「江戸の芝居小屋」─江戸時代、〈芝居〉と言えばそれは歌舞伎のことであった。歌舞伎の劇場は〈小屋〉あるいは〈芝居小屋〉と呼ばれ、簡素な仮設の小屋から始まったという歴史がある。 《上野花見歌舞伎図屏風》(サントリー美術館蔵、2.27〜3.31展示予定)から抜け出した役者たちが踊る垂れ幕に誘われて会場へ足を踏み入れると、近世の芝居小屋から近代の劇場空間が成立するまでの歌舞伎の世界を、豊富な作品群が案内してくれる。会場は3章で構成され、1.劇場空間の成立、2.歌舞伎の名優たち、3.芝居を支える人々と続く。とくに草創期の歌舞伎を伝える絵画作品が充実しており、歌舞伎とは何か、その原点をうかがうことができるのが、ひとつの魅力となっている。 《上野