「南洋の島の住民のなかには『カーゴ・カルト(積荷崇拝)』というものがある。第二次大戦中、飛行機がたくさんのすばらしい物資を運んで来た。島民たちは今でもまだそれが続いて欲しいものだと考える。そこで滑走路らしきものを作り、その両側に火をおいたり、木の小屋を作ってアンテナを模した竹の棒が突っ立っているヘッドホンみたいな格好のものを頭に付けた男(フライトコントローラーのつもり)を、その中に座らせたりして、一心に飛行機が着陸するのを待っている。形のうえでは何もかもがちゃんと整っているかのようだが、その効果はぜんぜんない。そこでぼくはこのようなことを『カーゴ・カルト・サイエンス』と呼ぶのです。つまりこのえせ科学は、科学的研究の一応の法則と形式に完全に従ってはいるが、いちばん大切な本質がポカッと抜けているのです。」(ミシェル・ファインマン著,大貫昌子訳「ファインマン語録」岩波書店,2016 pp139-