昨日の「土曜日の本」で、中井久夫の「隣の病い」を一番にオススメしなかった(オススメしないわけではない)理由のひとつは、たまたまこの本が「1986年から1996年まで」の中井の文章を集めた本だからであった。わかりやすく言えば「バブルと社会主義圏崩壊から阪神大震災まで」の時期に書かれた文章だということだ。 それはそれで、日本も世界も激動していたあの空前絶後の時期に、わが国屈指の精神科医のひとりが何を考え、何を書いたのかということに興味があれば、読むべきことがたくさん書かれているわけだが、なにしろ扱われている事象が歴史的に大きいので、それについて書く中井の視野も自然と大きく広くなっているところがあるわけである。いつもこんな調子なのだと思って読んだら勘違いしてしまう人もいるだろうと思ったのである。 もうひとつは、これもそのことに関連しているわけだが、そういう視野の広い話に限って言えば、本当を言った