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ノーベル賞
blog.livedoor.jp/tokuma_shoten
プロローグ(連載第1回) 「藤田優作、君はどのくらいの金持ちになりたい?」 オッサンが切り出した。 「そうだな、金で買えないものはない、そう言えるくらいかな」 俺が語気を強めてそう言うと、 「わかった。それでいこう」 と、オッサンは右手を差し出した。 高そうなスーツの袖から、いかにも高そうな時計が見えた。俺はそれをチラリと見やり、ぎゅっと、オッサンの手を握った。できれば、顔をゆがませてやりたかった。 針は11時47分を指していた。 なんとも中途半端な時間に、俺は悪魔と契約したのだった。 この世界は「欲」に満ちている。 欲の強いやつもいれば、弱いやつもいる。金、女、酒、ギャンブル、地位や名誉、なんだっていい。 狂おしいほど求めてしまうものが欲だとすれば、俺はそれを一度、捨てた。 そんなものがあるから苦しむんだ、と。 そして思い知らされる。 そんなことを言うやつほど、本当は欲深いのだ、と。 俺
第3章 起業 ――俺、走る(連載 最終回) そうこうして数日が経った。俺はコタツ兼テーブルのうえで、ウンウンうなってノートにあれこれゲームプランを書き殴っていた。杉作くん流にいえばアイディーアを考え続けていた。 アイディーアどころか、もはや、ため息も出ない。 バイトも辞めた。オッサンからもらった金はパソコンの購入費やらなんやらで、すでに30万円以上使っていた。 あてもなく俺は近所をぶらぶらした。 気がつくと、あの公園にいた。 鳩は顔を覚えているかのように、ベンチに座った俺の前に集まってきた。 だが、あの迷子のレース鳩、オッサンが「優作鳩」と名づけた鳩はいなかった。しばらく待ってみたが、いつまで経ってもやってくる気配はなかった。 俺はポケットから携帯を取り出し、アルバムを見た。実は以前に1人で公園に来て、優作鳩の写メを撮っていた。 そのときも俺は優作鳩に手で直接パンを食べさせた。右手でパンを
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