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granit.hatenablog.jp
下記は2012年4月15日・16日につぶやいたもののまとめ。 アメリカ文学の暗黒の新星Blake Butlerの長編There Is No Yearをけさ読み終わる。三人家族が新しい館にひっこしてきたら奇妙なことが頻発するという話で、ホラーっぽいが筋も解決の手がかりもなにもない。暗黒の不条理小説。 posted at 23:32:31 登場人物の感情はほとんど見せず、起こったことがただ記述される。悪夢的シチュエーションの数々の列記は、淡々としていてどこか聖書を思いださせる。 タイポグラフィに近いフォント遊びや、電子書籍の機能をつかい、作中人物の未来視を読者に擬似体験させる実験小説風のしかけも有。 posted at 23:47:12 【There Is No Year・1】ある作家を別の作家に例えるのは傲慢だし、えてして的外れに終わる。が、Blake Butlerについては「福永信が訳した
本邦で『00年代海外SF傑作選』が出ないまま、2017年になってしまった。現在、英語圏のSFの動向を知るチャンスはあまりに少ない。(しかし、その状況に文句を言うのも不毛な行為である。商業出版は売り上げありきだ) というわけで、淡々と読んだ英語短編を記録する試みを再開する。ただし平日は余暇時間がゼロなので、無理しない程度にマイペースにやる。 まずはおさらいから始めよう。 この企画(カテゴリ:21st century SF)は 21st Century Science Fiction (2013)をテクストに、ここ十数年の英語圏のSF短編を振り返る試みである。大ベテランSF編集者デイヴィッド・G・ハートウェルとパトリック・ニールセン・ヘイデンによって編まれ、2003年から2011年に発表された短編が34作収録されている。 下記がその収録作リストで、邦訳があるものは記してみた。漏れがあれば教えて
Tunneling to the Center of the Earth by Kevin Wilson(2009, Harper Perennial) 2011年に初の長篇THE FAMILY FANGが大当たりし、さっそく映画化の話も飛び出した作家Kevin Wilsonは、この短篇集でシャーリイ・ジャクスン賞*1と米国図書館協会のアレックス賞*2を勝ちとっている。 特徴は妙な舞台設定+温かさやほろ苦さがしみる人間ドラマと、抜群のリーダビリティだ。ジョージ・ソーンダーズと比較されることが多い。冒頭からキレのある短篇小説を読みたい人にはおすすめできる、クオリティーのそろった一冊である。ただし、物語にひねりとか崇高さを求める人にとっては食い足りないかもしれない。おすすめには☆マークをつけた。 Grand Stand-In ☆ 語り手である初老の女性は、夫や子どもを持たない人生を送ってきた。
フィンランドを拠点に活動するスウェーデン語翻訳者・ジャーナリスト・北欧のロシア文学出版人である、Kristina Rotkirchが現代ロシア文学の大御所たちにインタビューしたのを英語でまとめた本。ストックホルム大学などから後援を受けている。 登場するのはボリス・アクーニン、エヴゲニー・グリシュコヴェツ、エドワルド・リモノフ、ユリイ・マムレエフ、ヴィクトル・ペレーヴィン、リュドミラ・ペトルシェフスカヤ、ニナ・サドゥール、ミハイル・シーシキン、ウラジーミル・ソローキン、タチアナ・トルスタヤ、リュドミラ・ウリツカヤだ*1。翻訳がない人がいる気が。なにせ人名表記の基本も知らないので、こう書くほうがいいよという名前があったら教えていただきたい。 Contemporary Russian Fiction: A Short List 作者: Anna Ljunggren,Kristina Rotkir
Last Days (Underland Press, 2009) by Brian Evenson ☆シャーリイ・ジャクスン賞長篇部門ノミネート、米国図書館協会レファレンス・利用者サービス部会の選ぶ2009年ベスト・ホラー ブライアン・イーヴンソンは1966年生まれの作家。いわゆる文学とジャンル・フィクションの境界に位置する作品を書く人だという。このLast Daysは大衆小説寄りで、探偵が活躍するスリリングなミステリ……と言えないこともない。この小説の探偵役クラインは、ほとんど推理したり事件を解決することもせず、読者に内心の想いを吐露するでもなく、ミステリ読者が期待するような探偵的活躍は全然しない。しかし少なくとも第1部“The Brotherhood of Mutilation”は「ミステリしている」。しかもきわめて高いレベルで。それもそのはず、イーヴンスンはThe Open Cur
“Open Your Eyes” (Apex Publications) by Paul Jessup ポール・ジェサップはあまり自身の情報を明かしていない。Facebookのプロフィールによればオハイオ出身、ペンシルヴァニア在住。おそらくは30代後半から40代前半くらい。好きな映画は『レザボア・ドッグス』『メメント』『七人の侍』『攻殻機動隊』など。幻想小説系のウェブジンで短篇を発表してきた彼は、昨年はじめて著書を2冊上梓した。うち1冊が今回紹介する中篇小説(160頁)で、もう1冊は短篇集だ。この8月に新刊も出る予定。以下、ネタバレあり。 読みやすいが、しばしば詩的な文章と、バスク神話から借りてこられた固有名詞がやっかい。主人公はおらず、中心となる人物が短い各章ごとに入れ替わる。(例として最初の一文。詩心がないので直訳↓) 彼女の良人は超新星だった。彼がやってきて、まばゆく燃える光で彼女を
“The Other City” (Dalkey Archive Press, 2009) by Michal Ajvaz ウィリアム・L・クロフォード賞にノミネートされた、チェコの幻想小説の英訳である。ごく短い22の章から成る長篇だ。 著者Ajvazは1949年、チェコのプラハ生まれ。チェコ語・チェコ文学を専攻し、現在はプラハ理論学センターの研究者として働いている。90年ごろから小説を発表し始め、小説のほかにデリダに関するエッセイやボルヘスに関する瞑想録などの著作もあるという。(本書の中にも魚と鏡、迷宮化する図書館などボルヘスを連想させる部分が散見される) 2005年に文学的功績を讃えられ、ヤロスラフ・サイフェルト賞を受賞。 舞台は厳冬のプラハ。「私」は吹雪から逃れて入った古書店で、深紫の書籍を入手する。その本を綴る見知らぬ文字は、読んだ者を都市の裏にひそむ異界へ招くのだった。 ※以降ネ
“Scorch Atlas” (Featherproof Books, 2009) by Blake Butler 死と飢餓、腐敗と汚穢、そして黙示録的災害に満ちた短篇集。ほぼ全てが家族の物語である。作者が意図して書いたのかは不明だが、同じ単語やプロットが何度も出てくる。死にゆく世界を舞台に、執拗に赤ん坊の生誕を描くギャップが不気味で、印象に残る。 先述の通り、本書はいわゆるポスト・アポカリプスもの(post apocalyptic fiction)である。アフターホロコーストもの、破滅SF、パニックSFとほぼ同義のサブジャンルだ。「世界の終わり」はそれこそ神話の昔から使われてきたテーマだが、世界大戦前後に発展し、先述のような分類名を与えられるに至った。ウェルズからバラードまでジャンルへの貢献者は挙げればきりがない。ここで語るのはやめておこう。 さて、ここ数年、コーマック・マッカーシー『ザ
アッシャーはアクションSFの人というイメージだったが、これは懐かしい感じのワンアイディアでオチをつけた小話。人類よりだいぶ進んだ技術を持つ異星人たちがやってきて、不治だった病も治してくれるようになった。ガンに冒された主人公も異星人に助けを求めるが……。 超人類カウル (ハヤカワ文庫SF ア 8-1) 作者: ニール・アッシャー,鈴木康士,金子司出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/12/14メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (10件) を見る ラオスで起こった政変後、少年オンは両親に逃がされて母国を後にした。情報が統制され、故郷は今も内部の情報がほとんど観測できないブラックホールと化している。 成長したオンは、米国のニュース会社の記者になった。しかし、ページビュー数や世間の反応が会社の株価や従業員評価へ即刻反映されるこの時代、彼が執筆する環境問題
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