※初出:朝日新聞「論座」サイト 連載「貧困の現場から」 2022年7月27日 高くて厚い「壁」が前途に立ちはだかっている。「壁」の向こう側にいる人たちと対話を試みようにも、言葉が届かない。 生活困窮者を支援する活動を進め、国に貧困対策の拡充を求める中で、そのように感じることがたびたびある。 例えば、生活保護の利用に伴う扶養照会の問題がある。 生活保護バッシングに乗じた制度改悪 扶養照会とは、生活保護を申請した人の親やきょうだい等の親族に対して、福祉事務所が援助の可否を問い合わせることである。私たち支援団体は以前から、扶養照会が生活に困窮する人々が生活保護を利用する際の最大のハードルとなっていると問題視し、改善を要望してきたが、国は聴く耳を持とうとしなかった。 2012年5~6月には、当時、野党だった自民党の片山さつき参議院議員らが芸能人の親族の生活保護利用を「不適切」だとするキャンペーンを