はじめに 看護師団を率いてクリミア戦争に従軍したフロレンス・ナイチンゲールは、現地で獅子奮迅の活躍をする。従軍時の状況は、クリミア戦争を扱う『黒博物館ゴーストアンドレディ』で描かれており、その活躍の多くは史実に基づく。 その範囲は看護の領域を大きく超えて、多大な物資の補給や管理、病院建築にまで及んだ。なぜ、そこまで彼女の活動範囲が広がったのか、なぜそこまで補わなければならなかったのか。 その理由を理解するため、ナイチンゲール従軍前の英国陸軍の状況を以下に整理した。あわせて補足として、クリミア戦争の概要を、先に掲載する(戦争概要には書いていない様々な要素もあるため、詳細を知りたい方は参考文献をどうぞ)。 ■戦争概要○ロシアの領土的・宗教的野心 クリミア戦争は1853年から1856年にかけて「ロシア」と、「トルコ・フランス・英国の連合軍」の間で行われた、19世紀の戦争となる。この戦争での死者は