仕事を辞めた翌日、わたしは生きていた。 「当然である」と、言えるだろうか。わたしは自分のことを"よくやっている方"だと思っている。意味もなく宙を見上げ、水滴を仕舞う。人生を都合のいい妄想へ預けなければ、硝子のように心が割れてしまいそうだ。 「大丈夫ですか?」 歩きながら眠っていた。目が血走り、足が痙攣する。どこかから声が聞こえた気がしたが、辺りを見渡しても人は少なかった。ロクにごはんも食べていない。生命の境界線を、平均台を渡るようにしてふらふらと進む。 常に不安と手をつなぎ、勇気の破片をかき集めている。「これから先どうしよう」、「あと何日、家がある生活を続けられるだろう」。柔らかい糸なんかではない、有刺鉄線のような息吹。体力が残っているのかどうなのか、自分で判断ができない。酒に酔っている状態より冷静なぶん、恐怖が波打つ。 ——早く帰らなくては。 恋人の彼と、わたしは一つ屋根の下で暮らしてい