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「歴史戦」・略年表 〜「慰安婦」モニュメントに向けられた攻撃を中心に〜 (作成:山口智美・斉藤正美・能川元一) 2010年10月アメリカ、ニュージャージー州パリセイズパークに「慰安婦」碑設置 2011年3月「なでしこアクション」結成、活動開始(代表:山本優美子) 2011年12月ソウル日本大使館前に「平和の碑(少女像)」設置 2012年4月岡本明子「米国の邦人子弟がイジメ被害 韓国の慰安婦反日宣伝が蔓延する構図」(『正論』2012年5月号) 2012年5月パリセイズパークに対して、在ニューヨーク日本総領事館、碑の撤去を要求。日本から訪問した古屋圭司、山谷えり子ら自民党議員4人、市長、市議らと面会し碑の撤去を要求。 2012年11月“Yes, We Remember the Facts” 広告、ニュージャージー地元紙に掲載。安倍晋三らが賛同 2013年7月 アメリカ、カリフォルニア州グレンデ
(イ・ヨンス)「慰安婦」ハルモニたちのために、という考えがないようだ。(交渉内容は)すべて無視する。 天国に逝かれたハルモニたちに対し、面目がない。(日本は)どこまでも補償ではなく、賠償が必要である。金で解決しようとするのであれば受け取らない。 (イ・オクソン) こんなに苦労して待ち望んでいたのに、政府に対し残念に思う。私たちは金銭よりも名誉回復を求める。 (『ハンギョレ新聞』2015.12.28) (キム・ボクトン)「被害当事者である私たちハルモニのことを無視していなかったら、私たちに一言も相談もなく、両国政府同士で話し合って妥結したと言えないはずだ」 「安倍首相が直接謝罪し、私たち名誉が回復できるように、死ぬまで戦う」 (イ・ヨンス)「安倍首相が敵のように憎らしくても、一度でもいいから少女像の前に行って、申し訳ないと言えば、良心はあるなと思えるだろうし、いくらか心が和らぐかもしれない」
2015年12月28日に行われた、日韓外相会談に関する、日本の右派団体や言論人の声明、反応などを以下にリストします。(随時更新予定) 秦郁彦(現代史家)「韓国世論の納得期待も拘束力に疑問」NHK (2015.12.28) 八木秀次(麗沢大学教授)「合意に米国の支持期待」『毎日新聞』 (2015.12.28) 日本のこころを大切にする党(旧次世代の党)「談話 日韓外相会談の合意を受けて」(2015.12.28) 歴史の真実を求める世界連合会 (GAHT) 「2015年12月の日韓合意について:GAHTの見解」(2015.12.28) チャンネル桜 「日韓合意絶対反対、明日、官邸前緊急抗議行動へ起て!」(動画)(2015.12.28) テキサスナイト&論破ドットコム (同じ内容のFBポスト)(2015.12.28) 橋下徹(前大阪市長・弁護士)「慰安婦問題の日韓合意」についての全3ツイート1,
以下、2015年12月28日に行われた、日韓外相会談に関して、韓国、日本などの元日本軍慰安婦」支援団体、人権団体などによる声明を紹介します。(随時更新していきます。) 挺身隊問題対策協議会 声明「日本軍「慰安婦」問題解決のための日韓外相会談合意に対する挺対協の立場(2015.12.28) アムネスティ・韓国支部 緊急論評「両国政府の「慰安婦」の合意、サバイバーたちの正義を否定してはならない」(2015.12.28) 日本語訳:第2次世界大戦当時、日本軍性奴隷制に関する韓国政府と日本政府の合意について、庄司洋加アムネスティインターナショナル東アジア調査官は、次のように明らかにした。 「今日の合意に日本軍性奴隷制のために苦しんだ数万人の女性の正義実現に終止符を打ってはならない。ハルモニたちは交渉のテーブルから排除された。両国政府の今回の交渉は正義回復ではなく、責任を免れるための政治的取引であっ
2015年11月30日に当会が開催した読書会では、李杏理氏(近現代史)による報告「上野千鶴子の「慰安婦」論——日本フェミニストによる相対主義の暴力」に続いて参加者による意見交換が行われた。主な議論を紹介する(以下、敬称略)。 1. 韓国のナショナリズム・運動批判について 韓国でも上野千鶴子が朴裕河受け入れの土壌を作った? 李杏理が上野千鶴子による「慰安婦」論の特徴と朴裕河『帝国の慰安婦』に共通する点を挙げたのを受けて両者の関係に関する議論が行われた。韓国では、上野千鶴子の『ナショナリズムとジェンダー』が、日本で新版が出た2012年からそう間をおかない2014年に韓国語にも訳され、刊行されている。上野の著作にはナショナリズム批判が入っているから韓国でも日本でもフェミニストに受け入れられる要素があり、それがある種、朴裕河をも受け入れる土壌になっているのではないか、という問題提起がなされた。ナシ
2015年11月30日、当会では上野千鶴子氏による「慰安婦」論について李杏理が報告した(「日本フェミニストによる相対主義の暴力」)。 「朴裕河氏の起訴に対する抗議声明」(2015年11月26日)には、上野千鶴子、加納実紀代、加藤千香子、千田有紀、竹内栄美子ら(敬称略;以下同様)フェミニストも賛同人に名を連ねている。 この声明で言及されている朴裕河『帝国の慰安婦』の問題点は、すでに当会で議論してきた。 とくに上野千鶴子は、以前から朴裕河『和解のために』(平凡社、2006年)あとがきや新聞での評論を通じて朴裕河の議論を積極的に評価してきた。 なぜ、日本人フェミニストが朴裕河を擁護するのか。フェミニストによる相対主義・脱ナショナリズムにもとづく「慰安婦」論の陥穽を論じたい。 上野千鶴子による「慰安婦」論の特徴は次の3点に要約できる。それは、朴裕河『帝国の慰安婦』に共通する特徴である。 ①「慰安婦
9月1日に行われた「『慰安婦』問題をめぐる報道を再検証する会」における能川元一の報告の概要は以下の通り。 1. The New York Times ・ “Shinzo Abe Echoes Japan’s Past WWII Apologies but Adds None of His Own”, by Jonathan SOBLE, AUG. 14 安倍談話が「キーワード」をとりこむ一方で総理自身の新たな謝罪を含んでいなかったこと、代わりに「あの戦争には何ら関わりのない」世代に「謝罪を続ける宿命」を背負わせてはならないと加えたことを指摘。西洋の植民地主義への言及は日本の行為をよりマシなものと見せる意図があったように見える、とも。 ・ “Abe’s Avoidance of the Past”, by Howard W. FRENCH, Aug. 18, op-ed. 安倍談話は戦争の動
『帝国の慰安婦』を特徴づけているのは「日本に対し『法的責任』を問いたくても、その根拠となる『法』自体が存在しない」(319ページ)という認識である。この認識は本書の各所で繰り返されている。「〔慰安婦の〕需要を生み出した日本という国家の行為は、批判はできても『法的責任』を問うのは難しい」(46ページ)、「強姦や暴行とは異なるシステムだった『慰安』を犯罪視するのは、少なくとも法的には不可能である」(172ページ)、「日本国家に責任があるとすれば、〔人身売買を〕公的には禁止しながら実質的には(個別に解放したケースがあっても)黙認した(といっても、すべて人身売買であるわけではないので、その責任も人身売買された者に関してのことに限られるだろうし、軍上層部がそうしたケースもあることを認知していたかどうかの確認も必要だろう)ことにある」(180ページ)、「『慰安』というシステムが、根本的には女性の人権に
2015年3月31日に当会が開催した、秦郁彦『慰安婦と戦場の性』についての読書会では、宋連玉氏(朝鮮近現代史, ジェンダー史研究)による報告に続いて参加者による意見交換が行われた。主な意見や議論を主題別に紹介する(以下、敬称略)。 1. 日本の「慰安婦」制度と「国家」の関わり 安倍首相が3月27日の『ワシントン・ポスト』紙で、「慰安婦」制度について「人身売買」という表現を使った直後でもあり、また前回の読書会で扱った朴裕河『帝国の慰安婦』でもテーマになった「業者」の問題が本書でも課題となることから、この日の議論でも、日本の「慰安婦」制度における軍及び業者との関係、および「慰安婦」制度と公娼制との関係についての議論が行われた。 本書での著者の主張は、「慰安婦」制度というのは、国家が許可し、業者がやっている、そして国家がやっていることは常に正しい、というものである。だが、そもそも公娼制度も、警察
本稿では『帝国の慰安婦』における「性奴隷」概念をめぐる議論の多岐にわたる問題点をとりあげることにする。いうまでもなく、日本軍「慰安所」制度が「性奴隷制」であったという被害者支援団体、研究者、および国際社会の評価こそ日本の右派がもっとも否認しようとしているものの一つであり、この点に関する『帝国の慰安婦』の議論を検討することは同書が日本の言論空間でもつ意味を問うことにもつながる。 1. 「性奴隷」概念の誤解・曲解 まず驚かされるのは、日本軍「慰安所」制度を論じるうえで重要な意味をもつことになる「奴隷」の定義(「自由と権利を奪われ他人の所有の客体となる者」)をなんと韓国語版ウィキペディアから引用していることである(143ページ)。大学生がレポート課題においてウィキペディアに依拠することすら多くの大学教員によって問題視されているというのに、研究者が執筆し、「クォリティ・ペーパー」と目される新聞社の
書評 秦郁彦『慰安婦と戦場の性』(新潮選書、1999) 宋 連玉 Song,Younok はじめに 『慰安婦と戦場の性』は、著者の秦郁彦氏によると「第二次大戦期のアジアばかりでなく、古代から現代に至るタテ軸と洋の東西にわたるヨコ軸を交差させての「慰安婦百科全書」をめざした」ものらしいが、慰安婦問題が日韓の政治・外交の懸案事項となっているおかげも被って16年たった今でも版を重ねている。 帯文や表紙、あとがきといった目につきやすいところに踊るのは、この問題に関心を寄せる人々のイメージを操るような派手なキャッチコピーである。1999年版の表紙カバーには「慰安婦問題は嫌煙権論争に似ている。知的アプローチよりも情緒論、政治的思惑が先行して過熱気味の論争は今も続く」とあり、あとがきには、慰安婦問題が「突如として内外の耳目を衝動する大トピックに浮上した理由」として「この疑問に答える材料を私は持ち合わせて
アジア・太平洋戦争において日本軍が「慰安所」を設置した理由については、(1)多発していた占領地での強姦を防止して占領統治を円滑に進めるため、(2)戦力低下の原因となる性病の蔓延を防止するため、(3)将兵が占領地の売春施設を利用することで軍事機密が漏洩することを防ぐため、(4)兵士の不満をガス抜きし士気を維持するため、が通説となっている。一定の史料的根拠があるうえに軍人の発想についての説明として無理のないもので、日本軍「慰安婦」問題否認派からもまず異議が唱えられることはない。特に(1)などは「慰安所」制度の正当化のために引き合いに出されるくらいである。 しかし『帝国の慰安婦』はこの通説に挑戦している。「性病防止などが慰安所を作った第一の理由に考えられているが、それはむしろ付随的な理由と考えられる」(31ページ)とか、「おそらく、軍慰安所の第一の目的、あるいは意識されずとも機能してしまった部分
『帝国の慰安婦』の特徴の一つは、1973年に刊行された千田夏光氏の『“声なき女”八万人の告発−−従軍慰安婦』(双葉社。講談社文庫のタイトルは『従軍慰安婦』。以下それぞれ双葉版、文庫版と表記)を高く評価し、また大きく依拠している点にある。例えば朴裕河氏は「そしてこのような千田の視点は、その後に出たどの研究よりも、『慰安婦』の本質を正確に突いたものだった」(25ページ)とし、「千田の本が朝鮮人慰安婦の悲劇に対して贖罪意識を持ちながらも、それなりに慰安婦の全体像を描けたのは、彼がそのような時代的な拘束から自由だったからだろう」(26ページ)としている。「そのような時代的な拘束」とは、彼女によれば、「慰安婦」問題の発生以降「慰安婦」についての発言が「発話者自身が拠って立つ現実政治の姿勢表明になったこと」を指す。このことを踏まえて、次の一節をお読みいただきたい。 千田の本には一九七〇年代初め、今から
(承前) 3. 韓国版との異同 一部の参加者からは韓国語版との異同についても指摘があった。例えば韓国語版では「挺身隊」に関する記述を行う際に日本語版ウィキペディアに依拠していること、韓国版では日本の支援者について否定的な記述がなされているが、日本語版では変えられていることなどである。さらに、日本語版では弁明的とも思える加筆が多数あり、それが先に述べたような論旨のつかみにくさに拍車をかけている、という指摘もあった。 4. 「慰安婦」問題の解決に関する著者の主張について 本書は「日韓併合=合法」、「日韓条約で解決済み」という前提に立っているが、もしそういう前提に立つなら国民基金がなぜ必要だったか、さらなる「解決」がなぜいま必要なのかが、理解できなくなってしまうのではないか、との指摘もあった。本書を読んだ日本人がさらなる「謝罪」の必要性を感じるか、疑問である、とも。 また「慰安婦」問題を日韓の文
15年2月17日に当会が開催した、朴裕河『帝国の慰安婦』についての読書会では、金富子氏(植民地朝鮮ジェンダー研究)による報告に続いて参加者による意見交換が行なわれた。主な意見を主題ごとに再構成し、2回に分けて紹介する。また、当日は『帝国の慰安婦』の内容以外に同書が受容される日本の文脈(金富子氏の報告でも問題にされている)についても参加者の関心が集まった。この点については過去の記事「日本軍「慰安婦」問題の現在と『帝国の慰安婦』」をご参照いただきたい。 1. 方法論上の問題と先行研究の軽視 著者の朴裕河氏は『帝国の慰安婦』において「『朝鮮人慰安婦として声をあげた女性たちの声にひたすら耳を澄ませること」を目指したとしており、自分が紹介する「声」が支援運動によって隠蔽されてきたとしている。日本において『帝国の慰安婦』が好意的に受けいれられている理由の一つもそのような「声」が新鮮なものと思われたから
2015年2月22日、京都市の立命館大学において公開ワークショップ「『日韓の境界を越えて』〜帝国日本への対し方〜」の第2回として、「帝国の慰安婦」という問いの射程が行われ、本記事の筆者も参加してきた。ワークショップの内容については主催者により活字化される可能性もあるので、それを待って論評することにしたい。ここでは『帝国の慰安婦』という書物の受容のされ方に関わると思われるエピソードを紹介したい。 冒頭のあいさつで司会者の西成彦氏は次のように発言された(私が記憶とメモに基づいて再構成したもの、以下同じ)。 (……)いかなる書物であっても純粋な知的好奇心と一定の礼節を持って受け止めるべきで、その価値をとやかく値踏みする暇があったら、むしろその書物を踏み台にして各自が何を考え、いかなる次の一手を繰り出していくかを追求していくのが読者の務めだと思っている。 まず深刻な性暴力の被害者がカミングアウトし
ヨン氏の講演会の動画はYoutubeにあがっているが、調査依頼者および資金についての箇所は以下の動画の15:40~あたりからの部分である。動画に基づき、オリジナルの英語を起こし、その翻訳を以下に添える。(講演会では通訳もはいっていたが、この部分に関しては大意はとれているものの、細かな誤訳や翻訳の抜けもあるので、通訳の話した日本語ではなく、ヨン氏の英語を筆者が訳した文章を添える。) So, somewhere along the way, people recognized my work, who were also working on the comfort women issue. And they realized that strategic interests like this might interest me...strategic issues like this mi
西岡力「『慰安婦問題』とは何だったのか」(『文藝春秋』)、「慰安婦と挺身隊と」(『正論』)掲載(3月)
ソウル東部地方裁判所が2月17日、『帝国の慰安婦』が被害者の名誉を毀損しているとして出版停止を求めた裁判において、「著書内容のうち34カ所を削除しなければ出版、販売、配布、広告などをできない」と一部訴えを認めた仮処分決定文が、「東アジアの永遠平和のために」とのブログサイトにて、原告の申請目録などを除いた、ほぼ全文が掲載されております。 朴裕河氏の支持者たちは「禁書処分」、「言論弾圧」などと主張しておりますが、仮処分決定文を読むと、原告が削除を要求していた53箇所のうち、被害者の名誉毀損に関わる34箇所のみに限定されています。また「慰安婦」被害者への接近禁止の請求を却下するなど、原告の主張の一部しか認めていません。決定については原告側、被告側それぞれに主張があるでしょうが、決して「表現の自由」をむやみに制限した決定ではありません。 決定文では、「慰安婦」に関する研究の蓄積を無視した同書内の記
15年2月17日に当会が開催した、朴裕河『帝国の慰安婦』についての読書会は、金富子氏(植民地朝鮮ジェンダー研究)による報告(「朴裕河『帝国の慰安婦』への疑問」)から始まった。 同氏の報告は、朴裕河氏が、朝鮮人「慰安婦」は「帝国の慰安婦」であり、朝鮮人「慰安婦」を日本人「慰安婦」に限りなく近い存在として描いていることに疑問を呈した。朴氏は、植民地期朝鮮や朝鮮人「慰安婦」への事実関係に関する研究の蓄積をふまえずに、多くの事実誤認をしていることを指摘した。以下はその例である。 一点目は、朴氏の記述には、植民地朝鮮での「挺身隊」に関する歴史的事実への混同や誤解があるにもかかわらず、「挺身隊と慰安婦の混同」を「植民地の<嘘>」等と決めつけたことである。二点目は、被害女性の証言等を恣意的に選別することで朝鮮人「慰安婦」の大部分が「少女」であった事実を否定し、さらに「性奴隷」を記憶の問題にすり替えること
まるでデジャ・ビュを見ているように、かつてと同じ事態が繰り返されている。右派が声高に「慰安所」制度に対する日本軍・日本政府の責任を否認し被害者への二次加害を繰り広げている最中に、一般には「右派」とは認識されていないメディア、言論人が一冊の本を激賞している。 「朴がやろうとしたのは、慰安婦たちひとりひとりの、様々な、異なった声に耳をかたむけることだった。そこで、朴が聞きとった物語は、わたしたちがいままで聞いたことがないものだったのだ。」 (高橋源一郎、『朝日新聞』、14年11月27日) 「この本は、「慰安婦」を論じたあらゆるものの中で、もっとも優れた、かつ、もっとも深刻な内容のものです。これから、「慰安婦」について書こうとするなら、朴さんのこの本を無視することは不可能でしょう。そして、ぼくの知る限り、この本だけが、絶望的に見える日韓の和解の可能性を示唆しています。」 (高橋源一郎、Twitt
本書の帯には「冷静な議論のためにいま何が必要か?」という、またカバー見返しにも「冷静な議論のための視点を提供する」との謳い文句が記されている。この文言そのものは著者に帰責できるものではないだろうが、本書がどのような文脈で受容されることを目指して企画されたのかをうかがうことはできる。すなわち、「慰安婦」問題を巡っては冷静でない議論が行われているという認識を前提とした文脈、である。すべてのアクターが「冷静」に議論しているという認識のもとでは「冷静な議論のために……」は謳い文句たり得ないからである。では、「冷静でない」議論をしているのは誰なのだろうか? これについては、著者自身が(少なくともそうしたアクターの一部を)明らかにしている。2014年12月30日の『朝日新聞』でのインタビューにおいて熊谷氏は「法的補償を求める韓国や日本の一部団体は『道義』という言葉を「責任逃れ」と拒否するかもしれないが
文責:能川元一 (以下は『週刊金曜日』2014年7月4日号に掲載された「右派の『慰安婦』問題歪曲の卑劣」の元原稿を、同誌編集部の許可を得て転載したものです。雑誌掲載分とはタイトル、小見出し、その他一部の表現に違いがありますが論旨に変わりはありません。) 『産経新聞』(以下『産経』)が今年の四月から「歴史戦」と題して開始した連載は、旧日本軍「慰安婦」問題についての歴史修正主義の集大成とでも言うべきものとなっている。五月二一日掲載の「第2部 慰安婦問題の原点2」では、大学教育にも矛先が向けられた。広島大学の一般教養科目講義で、元「慰安婦」らの証言映像を用いたドキュメンタリー映画『終わらない戦争』(二〇〇八年、韓国)が上映されたことを、担当者の准教授が韓国籍であることをことさら指摘しつつとりあげたのだ。「草の根」保守による抗議を煽動して大学当局に圧力をかけ、教育現場で「慰安婦」問題をとりあげるこ
新書という媒体で出版された本書は日本軍「慰安婦」問題について詳しい知識を持たない、一般の読者を主な読者層として想定していると考えられるが、ならばこそ河野談話(1993年)発表以降の研究成果については幅広く目配りをして、読者に日本軍「慰安所」制度についてのより正確な歴史記述を提供することが期待される。『朝日新聞』が「慰安婦」問題報道の一部を撤回したことなどをきっかけに新たにこの問題に関心を持った読者が、2014年に刊行された本書で最新の知見が紹介されていることを期待するのは当然であろう。しかしながら、極めて重要な先行研究のいくつかが本書では完全に無視されてしまっている。 その代表的なケースとして、永井和・京都大学教授の業績が無視されていることに由来する問題点を指摘しておきたい[i]。 日本軍「慰安所」制度とドイツ軍の軍管理売春制度とを比較した箇所で、同書は秦郁彦の「日本軍の慰安所関与は、輸送
著者は、調査や研究の方法論を議論する際には、「現存する公文書のみが慰安婦制度の全体像を描けるとは考えることができない」(153)とし、それゆえに、「元慰安婦の証言」を重視する必要性を説く。さらに、公式に残された文書は、歴史学において「公文書の書き手ではなかった女性や人種、民族的に抑圧されていた人々の声によって問い直されている」とオーラルヒストリーの重要性を指摘する(153)[i]。確かに、「慰安婦」問題については、文献から歴史を調べて行こうとしても、敗戦時、文書資料が焼却されたりしてほとんど文書が残っていないことが多いことや、元「慰安婦」にされた人たちの声は公文書には載っていないために、「慰安婦」をはじめ関係者の語りが非常に重要であるという主張は、まったく正しい。 240頁ある本書の大半は、「慰安婦」をめぐって、今何が起きているか、という「慰安婦問題」を扱っている。オーラルヒストリーという
パリセイズパークに対して、在ニューヨーク日本総領事館、碑の撤去を要求。日本から訪問した古屋圭司、山谷えり子ら自民党議員4人、市長、市議らと面会し碑の撤去を要求。
2014年11月10日に、研究者、ジャーナリスト、元「慰安婦」の方々の支援に関わってきた人たちらが集まり、熊谷奈緒子『慰安婦問題』(ちくま新書 2014)の読書会を行った。この本は2014年6月に出版された。新書なので手にとりやすく、 また、朝日新聞の「検証」記事が8月に出たため、結果として絶妙のタイミングで出版されたこともあり、書店では平積みされており、影響力がありそうなことから第一回読書会のテーマとして本書を選択した。 著者の熊谷は、「慰安婦問題を、主観的かつ表層的、一面的に捉えることなく、客観的かつ多面的に理解することの必要性を訴えたい」(22)と述べ、自らの立場は客観的であると主張している。また、この本の帯には「特定の立場によらない、真の和解を目指してー冷静な議論のためにいま何が必要か?」とも書かれている。読書会参加者からも、この問題についてよく知らない人が読んだら、「中立的でよく
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