サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
iPhone 16
scienceportal.jst.go.jp
ミトコンドリアはエネルギーを作りだす重要な細胞内小器官である。インフルエンザウイルスが細胞内に侵入した際にウイルスが作りだすタンパク質の働きで、そのミトコンドリアの機能が著しく弱まっていることを、九州大学大学院理学研究院の小柴琢己(こしば たくみ)准教授らが分子レベルで初めて解明した。 インフルエンザ対策を進める際の手助けとなる発見として注目される。九州大学医学研究院と東京大学医科学研究所との共同研究で、8 月20 日付の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。 ミトコンドリアは約10年前から、エネルギー産生に加え、RNAを遺伝子に持つインフルエンザなどのウイルスに対する自然免疫にも関わっていることがわかってきた。研究グループは、インフルエンザウイルスが細胞内に感染した際に作り出すPB1-F2というタンパク質の構造と機能に着目して解析した。 病原性が異なるインフルエンザ
神経培養細胞が分泌するナノ顆粒のエクソソームを投与すると、アルツハイマー病の発症原因とされる脳内アミロイドベータ(Aβ)濃度が低下してアミロイド斑の蓄積も減ることを、北海道大学大学院先端生命科学研究院の湯山耕平特任助教と五十嵐靖之特任教授らがマウスの実験で突き止めた。エクソソームがアルツハイマー病の発症に関わっている可能性を示すもので、新しい予防や治療につながりうる成果として注目される。7月18日付の米科学誌The Journal of Biological Chemistryオンライン版に発表した。 研究グループは2012年の論文で、神経培養細胞から放出されるエクソソームがAβを除去する能力を持つことを培養細胞の実験で報告したが、実際に脳内のAβに有効かどうかが課題として残っていた。今回、遺伝子操作して脳内のAβが過剰発現するようにしたアルツハイマー病モデルマウスの脳に、神経培養細胞が分
亜熱帯や熱帯の海を彩るサンゴはオニヒトデの食害や海水温上昇などによる白化現象で減っている。2000年以降はさまざまな病気の増加もサンゴの減少を加速した。サンゴに近い仲間のソフトコーラルを大量死させる糸状の細菌シアノバクテリアが繁茂する仕組みを、琉球大学熱帯生物圏研究センターの山城秀之(やましろ ひでゆき)教授らが解明した。サンゴ礁の生態系研究や保全対策に役立つ成果として注目される。8月12日付の英オンライン科学誌サイエンティフィックリポーツに発表した。 研究したのは、沖縄本島の西約40㎞にある座間味村の離島、阿嘉島(あかじま)南端の沖、水深約20mのきれいなサンゴ礁に生息するソフトコーラルの1種、アミメヒラヤギ群体。カラフルなダイダイ色で、ダイバーらに人気がある。その群体の4分の1にシアノバクテリアがいた。この細菌が繁茂して表面を覆うと、アミメヒラヤギは窒息して死んでいく。 米フロリダ半島
生物の細胞は複雑な小宇宙である。そこには多くの種類の生体物質が混在している。その細胞内のビッグデータから大規模な多階層ネットワークを自動的に再構築する方法を、東京大学大学院理学系研究科の柚木克之(ゆぎ かつゆき)助教と久保田浩行特任准教授(現・九州大学生体防御医学研究所教授)、黒田真也教授らが世界に先駆けて確立した。この方法を、インスリンの投与によって生じる経時的な変化に適用し、インスリンが作用する生体分子のネットワークの全貌を初めて明らかにした。 この方法を使えば、病気ごとに複雑な代謝制御のネットワークを突き止めることができ、大規模な代謝制御地図を作製できる。病気の診断に役立つバイオマーカーの探索や治療法の開発に使えそうだ。生物学や医学もビッグデータ時代に入ったことを宣言する成果として注目される。慶應義塾大学の曽我朋義教授、池田和貴特任助教、九州大学の中山敬一教授、松本雅記准教授、大阪大
東京大学の超小型衛星ほどよし3号、4号は6月にロシアのロケットで高度約640kmの地球周回軌道に打ち上げられてから、搭載機器の初期運用が順調に進み、4号の広角カメラ、3号の240m分解能と40m分解能のカメラで順に撮影し、4号の6m分解能の高解像度カメラによる地上撮影にも成功した。50kg級の衛星としては、世界にほとんど例がない解像度の写真で、小さいけれど優れた性能を示した。その写真の一部をfacebookで公開している。 4号に搭載されている高解像度カメラ(HCAM)の試験運用で8月1日に撮影されたフランスのアルベールの田園地域は、細かく区切られた畑が寄せ木細工のようにきれいに見える。同じ高解像度カメラで8月5日に撮影された米国のアトランタ郊外の町、キャルフーンでは、中心部の住宅地とそれを取り巻く工場、農耕地が放射状に広がっているのがよくわかる。 また、ほどよし3号の10cm立方の空間を
人は脳からの信号を下半身に伝える脊髄を損傷すると、脳と脚に問題がなくても歩行障害が生じる。こうした場合に、脳から腕の筋肉へ伝えられる信号をコンピューターで読み取り、その信号に合わせて腰髄を磁気で刺激して、脚の歩行運動パターンを自分の意思で制御することに、生理学研究所(愛知県岡崎市)の西村幸男(ゆきお)准教授らが世界で初めて成功した。 脊髄の一部を迂回(うかい)して、人工的に脳と腰髄にある歩行中枢をコンピューターなどでつなぐ方式を実現したもので、手術に頼らない下半身まひの治療法として期待される。生理学研究所の笹田周作研究員(現・相模女子大学講師)や福島県立医科大学の宇川義一教授、千葉大学の小宮山伴与志教授らとの共同研究で、8月13日付の米科学誌The Journal of Neuroscienceオンライン版に発表した。 ヒトが歩くときの脚の運動は、脚の複数の筋肉が協調して、さらに左右の脚が
炎症と細胞死、これらを結びつける仕組みがわかった。細胞死を起こすような強い刺激でタンパク質分解酵素のカスパーゼ1が活性化し 、それにより炎症が引き起こされることを、東京大学大学院薬学系研究科の大学院生の劉霆(りゅう てぃん)さんと山口良文(よしふみ)助教、三浦正幸(まさゆき)教授らがマウスの細胞実験で確かめた。多くの自己炎症性疾患や慢性炎症の治療戦略につながる発見といえる。理化学研究所との共同研究で、8月7日付の米科学誌セルリポーツに発表した。 生物が細菌感染か、損傷で組織の傷害を受けると、炎症が起こる。このとき、感染や傷害を受けた免疫担当細胞では、細胞内タンパク質複合体のインフラマソームによってカスパーゼ1が活性化され、最終的に炎症性サイトカインの分泌や細胞死に至る。この炎症性サイトカイン分泌制御の破綻は、自己炎症性疾患やがん、糖尿病といった慢性炎症が関与する病態に関わっている。しかし、
極限の計測技術はいつも科学や産業の発展を支えてきた。1兆分の1秒(1ピコ秒)よりも短い時間ごとに撮影できる史上最速の連写カメラを、東京大学と慶應義塾大学の研究グループが開発した。光を時間的・空間的に制御して動画を撮影する「光シャッター」で、既存の高速カメラとは異なる原理により、従来に比べ千倍以上も高速のシステムを実現した。これまで捉えることが難しかったプラズマ現象や化学反応などの測定に威力を発揮しそうだ。 1ピコ秒は光が0.3ミリしか進まないほどのわずかな時間。超高速で複雑な動的現象(ダイナミックス)を撮影して解析する新分野を切り開く画期的なカメラとして期待される。東京大学大学院理学系研究科の中川桂一特別研究員、同大学院工学系研究科の佐久間一郎教授、慶應義塾大学理工学部の神成文彦(かんなり ふみひこ)教授、東京大学大学院理学系研究科の合田圭介(ごうだ けいすけ)教授らの共同研究で、8月10
統合失調症のさまざまな症状が、記憶や感情を担う脳内ネットワークを構成するシナプスの減少によって生じる仕組みの一端を、国立精神・神経医療研究センター神経研究所微細構造研究部の一戸紀孝(いちのへ のりたか)部長と佐々木哲也研究員らが霊長類のコモンマーモセットの研究で示した。霊長類を使って記憶や感情を担う脳神経細胞の発達過程を調べた初の定量的研究で、精神疾患解明の手がかりになりそうだ。7月27日の米科学誌Brain Structure and Functionオンライン版に発表した。 ヒトを含む霊長類は、生まれてすぐ脳の神経細胞同士が結合するシナプスを急激に増やし、少年期になると、不要なシナプスを刈り込んで、効率化していく。これは霊長類に特有の脳の発達で、マウスなどではこの現象は見られない。統合失調症などの精神疾患は「シナプス病」とも呼ばれ、シナプスの数が極端に減少して大脳皮質が平均よりも薄くな
テレビで学習する際の子どもの脳活動は、目の前の他者からライブで学ぶ場合と異なることを、上越教育大学の森口佑介准教授と東京大学大学院総合文化研究科の開(ひらき)一夫教授が確かめた。子どもがテレビなどの画像から学習する際の脳内機序の特徴を初めて示した発見で、学習へのテレビの有効利用の手がかりになる。8月2日付の米科学誌Trends in Neuroscience and Educationオンライン版で発表した。 生後6カ月の幼児でも、目の前の他者とテレビの中の他者を区別しており、テレビによる認識や学習は重要な研究課題となっている。これまでの研究で、3歳以下の幼児はテレビから学習が十分できないのに対して、4歳ごろからはテレビの他者から学習できることが知られていた。しかし、テレビから学習する場合と、ライブで学習する場合とで、学習プロセスや脳内機序が同じかどうかは分かっていなかった。 森口佑介准教
空気中の窒素を固定して、アンモニアを可視光で合成する新しい人工光合成に、北海道大学電子科学研究所の三澤弘明教授と上野貢生(こうせい)准教授、押切友也助教らの研究グループが成功した。可視光を含む幅広い波長域の光エネルギーを電気エネルギーに変換できる酸化物半導体基板に金ナノ微粒子を配置した光電極で、この新しい人工光合成を実現した。 アンモニアは水素よりエネルギー密度が高く、将来のエネルギーキャリアとして注目されており、アンモニアの人工光合成には大きな可能性がある。7月 17 日付のドイツ化学会誌Angewandte Chemie International Edition のオンライン版に発表した。同じ研究グループは金微粒子などで水の光分解、水素と酸素の発生にも成功し、7月2日付の同誌に発表した。いずれも、可視光による人工光合成に道を開く重要な成果として注目されている。 半導体の光触媒として現
イノベーションは今後も目覚しく進むだろう。しかし、その予測は難しい。10年後の未来の生活に影響する「2025年の世界:10のイノベーション予測」を、国際的な情報サービス企業のトムソン・ロイターが7月23日発表した。 現在の科学論文の引用傾向と特許データを包括的に俯瞰して、発生しつつある技術の動向を分析した。まず、現在注目を集める先端研究の10の領域を特定した。さらに世界の特許データから、出願日が2012年以降で、発明数がより多い特許分野10を決めた。そのうえで、ビジネスと科学研究で関心レベルが高い分野を絞り込み、近い将来に最大の新発見につながると期待される技術革新のホットスポット10を探しだした。 こうしたイノベーションの長期予測は、トムソン・ロイターとして初めての試み。選定した10のイノベーション予測には多様な分野が含まれており、順位はつけていない。病気・健康では、認知症の減少、インスリ
生物は多様である。雌の多様性と雄のセクハラの軽減が生物種の繁栄にとって鍵を握ることがわかった。アオモンイトトンボの雌の色彩多様性が集団の繁栄の程度(増殖率や密度、安定性など)を高める傾向があることを、東北大学大学院生命科学研究科の高橋佑磨(たかはし ゆうま)助教と河田雅圭(かわた まさかど)教授らが野外での観察と実験、数理モデルで検証した。 生物を繁栄させるのには、見た目の多様性と、それに関連したセクハラの抑制が重要であることを裏付ける研究として、進化や生態学の教科書に載るような新発見といえる。東邦大学の大学院生の香川幸太郎さんと、スウェーデンのルンド大学のエリック・スベンソン教授との共同研究で、7月18日の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。 アオモンイトトンボは体長3、4センチとやや小型のごくありふれたトンボで、5、6月に本州以南に出現する。その雌には、体の色彩
ゾウは鼻が長いだけでなく、嗅覚も抜群なことが遺伝子レベルでわかった。哺乳類13種の嗅覚受容体遺伝子を調べたところ、アフリカゾウが最も多く、約2000個もあり、イヌの2倍以上、ヒトの5倍にも上ることを、東京大学大学院農学生命科学研究科の新村芳人(にいむら よしひと)特任准教授と松井淳(まつい あつし)特任研究員、東原和成(とうはら かずしげ)教授が見いだした。 この哺乳類13種にある1万個以上の嗅覚受容体遺伝子を対象に、遺伝子の進化の道筋も解明した。嗅覚受容体の生理機能やヒトの嗅覚研究に刺激を与える成果として注目される。7月23日付の米科学誌ゲノムリサーチのオンライン版に発表した。 研究チームは、ゲノム(全遺伝情報)が解読されて公開されている13種類の哺乳類で、におい分子を認識する嗅覚受容体の遺伝子を塩基配列から調べた。嗅覚受容体遺伝子の数は種ごとに大きく異なっていた。アフリカゾウが約200
異性の存在が性ホルモンの分泌をすぐ変化させる脳内の仕組みを、早稲田大学教育・総合科学学術院の筒井和義教授と戸張靖子研究員らがウズラの実験で突き止めた。一目ぼれを分子レベルで解明する発見として世界的に注目されている。7月16日付の米神経科学会誌Journal of Neuroscienceのオンライン版に発表した。 動物は、群れで生活するか、はぐれて1匹で過ごすか、雌雄のつがいでいるか、社会環境の変化に伴って、行動や生理条件を急速に変える。ヒトも、好みの異性と向き合えば、性ホルモンの分泌が変わり、胸がときめくことは誰もが経験する。しかし、社会環境の違いが脳の中にどのような変化をもたらしているか、は謎だった。 性ホルモンの分泌はかなり込み入っている。脳の深部にある視床下部から生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)が分泌されて、下垂体に作用して生殖腺刺激ホルモンを放出させ、次いでそれが生殖腺
鳥類の脳の奥深くで、神経細胞が光を直接感知して、恋の季節である春の訪れを知る光受容器を備えていることを、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の吉村崇(たかし)教授と中根右介(ゆうすけ)博士らが見つけた。目とは異なる光の感知システムが繁殖活動に関連することを実証する研究として注目される。7月7日付の米科学誌カレントバイオロジーに発表した。 哺乳類以外の脊椎動物が脳深部で光を感じることは100年以上前から知られていたが、脳深部の光受容器の実体は謎だった。今回、研究グループはウズラの脳深部に存在する「脳脊髄液接触ニューロン」が光に応答することを突き止めた。他の神経細胞からこの神経細胞への入力を遮断しても、光に対する応答性は消失しなかったため、直接光を感知していることがわかった。 この神経細胞の細胞膜には、「オプシン5」という光受容タンパク質が発現している。オプシン5の働きをRNA干渉法
強い茎を持って倒れにくく収量の多いイネをつくるのに、名古屋大学生物機能開発利用研究センターの平野恒(こう)特任助教や北野英己(ひでみ)教授らが成功した。草丈を小さくしなくても倒伏しない超多収穀物という育種の新しい戦略に道を開く成果として注目される。7月3日付の米オンライン科学誌プロスワンに発表した。 20世紀後半の「緑の革命」による穀物生産量の飛躍は、コムギやイネの草丈を小さくして倒れにくい品種が開発されて達成された。しかし、地球全体の人口は増え続けており、穀物の収量をさらに増やすことが急務で、第2の「緑の革命」が待望されている。研究グループは「今以上の超多収品種を実現するには、草丈をさらに低くするのは限界で、強靱な茎を持つ新品種づくりが必要」とみてイネの品種改良を試みた。 まず、1000以上のイネ突然変異体の中から茎の強度が特に高い値を示すイネを探しだし、SMOS1という遺伝子に変異が入
乳がんは長い年月の休眠を経て、再発、転移する場合が少なくない。その長い休眠の仕組みの一端を、国立がん研究センター分子細胞治療研究分野の小野麻紀子研究員と落谷孝広(おちや たかひろ)分野長らが突き止めた。骨髄中の間葉系幹細胞が分泌する微小な小胞エクソソームが乳がん細胞の休眠状態を誘導しており、その休眠からの目覚めが再発や転移につながることを初めて明らかにした。乳がん治療後の診断などに手がかりを与える発見で、7月1日付の米科学誌Science Signalingオンライン版に発表した。同誌は表紙にイラストでこの成果を伝えた。 乳がんは、日本人女性のがん罹患数で最も多い。標準治療の確立が進んで、生存率の高いがんだが、手術後10年、20年と長い期間を経て再発、転移する場合が少なくないのが特徴の一つで、患者さんにとって不安となっている。この長い年月を経ての再発、転移は、がん細胞の発生の大元であるがん
理科がかわいくなったら、理科に興味をもってくれる人が増えるのでは?カワイイをきっかけに理科を好きになってもらいたい!Kawaii理科プロジェクトでは、理科をかわいくする取り組みを行っています。 「コンテスト概要」 小学校の理科室にかわいいフラスコがあったら... 生活の中にかわいい理科グッズがあったら... フラスコがかわいい小物入れになったら... 女子が思わず手に取りたくなる、かわいいフラスコのアイデアを募集します! 「募集内容」 お題「フラスコ」 かわいいフラスコのデザイン フラスコを使ったかわいいもの フラスコに入れてかわいいもの のアイデアを募集します。 「応募方法」 アイディアスケッチ、もしくは写真をメールで送付してください。 応募先アドレスは kawacon@mst.nagaokaut.ac.jp です。 「賞」 web上で皆様に投票していただく他、長岡技術科学大学の学園祭来
電子が持つ電荷とスピンの両方を併せて利用するスピントロニクス。半導体素子などの小型化や今後の新しい機能の創出に欠かせない新技術として急速に発展しているが、その電子スピンの計測に役立つ画期的な技術が登場した。1000兆分の1秒の電子スピン運動を捉える顕微鏡の開発に、筑波大学数理物質系の重川秀実(しげかわ ひでみ)教授らが世界で初めて成功した。6月29日付の英科学誌ネイチャーナノテクノロジーのオンライン速報版に発表した。 この顕微鏡は、原子1個を見ることができる走査トンネル顕微鏡(STM)と、1000兆分の1秒の超高速現象を解析できるレーザー技術を組み合わせて実現した。それぞれ幅6nm(1nmは10億分の1m)と8nmで作製した量子井戸の中で、向きをそろえた電子のスピンが1000 億分の1秒ほどで乱れていく様子を、たった1つの量子井戸からの信号として直接捉えた。 量子井戸は、半導体の超薄膜が異
「科学コミュニケーション百科」 JST科学コミュニケーションセンターフェローで東京大学教授の佐倉 統氏が、様々な分野で活躍する人を迎え、科学と社会をつなぐ科学コミュニケーションの課題や展望についてインタビューします。第1回目は同センター研究主監で東京理科大学教授の北原和夫氏。専門の統計物理学から科学リテラシーや科学教育にかかわるようになったきっかけ、科学者が社会とかかわることで生まれる新しい学問の可能性について伺いました。 - どのようなきっかけで、科学リテラシーや科学教育、科学コミュニケーションに携わるようになったのでしょうか? 東京工業大学では物理学の理論の研究をしていましたが、1998年に国際基督教大学(ICU)へ移り、学生が自然科学、社会科学、人文科学を同時に学べる仕組みを知りました。アメリカでポスドク(博士研究員)をしていたころ、アメリカ人の友人から「リベラルアーツ・カレッジで学
錯覚は身近にあふれている。青く見える人間の静脈は実は灰色で、錯視によって青色に見えていることを、立命館大学文学部の北岡明佳(きたおか あきよし)教授(知覚心理学)が発見した。北岡教授は「理科の教科書や医学書でも静脈は青色で示されており、小さい頃から当たり前だと思っていたことなので、驚いた。『青筋をたてて怒る』は、物理的に言えば『灰筋を立てて怒る』になる」と指摘している。 人間の視覚には、同じ色が周囲の色との対比によって、異なる色に錯覚して見える現象がある。錯視研究の第一人者である北岡教授は、灰色と肌色が混在した絵を見ていて、灰色が青色に見えることに気づいた。「人間の静脈も同じ原理で青色に見えているのでは」と仮説を立て、検証した。 腕や脚を写真で撮影して、画像処理ソフトで色の3原色のR(赤)G(緑)B(青)の数値を解析したところ、静脈の部分は黄色がかった灰色の値になった。黄色がかっているのは
3月28日 農業は地球の環境悪化の緩和に重要な役割を果たす フランス農学・獣医学・林学研究院 アグリニウム会長 マリオン・ギュー 氏 3月8日 近未来SF漫画で描かれるテクノロジーの未来 漫画家 山田胡瓜さん 12月28日 「世界中の望遠鏡が協力して中性子星合体を観測 ―重力波と光の同時観測『マルチメッセンジャー天文学』の幕開けは、何を意味するのか?」 理化学研究所仁科加速器研究センター 玉川 徹 氏 4月2日 《JST主催》「トップサイエンスによる社会変革への挑戦」―JSTの第2回ACCELシンポジウム開催 サイエンスポータル編集部 3月22日 第84回「日本発のデザインバイオロジー確立に向けて」 科学技術振興機構 研究開発戦略センター ライフサイエンス・臨床医学ユニット 山本秀明 氏 3月9日 市民の感情に「科学的知見」を持つ科学者はどう向かい合うか―AAAS年次総会2018レポート
ホタルは日本の初夏の風物詩。そのホタルを発光ダイオード(LED)の光で誘引したり、同調させたりするユニークな実験に、金沢工業大学の平間淳司(ひらま じゅんじ)教授(電気電子工学)らが金沢市郊外の水田地帯で取り組んでいる。 平間教授らはLEDの光にホタルが反応することを見つけ、2007年(当初は金沢大学の鎌田直人准教授=現・東京大学教授=と共同研究)から、野外と室内で実験を重ねてきた。日本のホタルは、ゲンジホタルと、やや小型のヘイケホタルに大別され、光への反応も異なっている。研究グループはまず、それぞれのホタルが好む光が存在することを突き止めた。 ゲンジボタルは、約1秒光って約1秒消える2秒周期程度のLED発光に同調発光する。ただ、性質が慎重なのか、光には近づかない。一方、ヘイケホタルは約1.2秒周期のLEDの光にどっと誘引されてくる。2種のホタルの複眼の網膜内の光反応の特性も調べたところ、
日本列島の植物の保全は急務である。そのことを知らせる研究が報告された。日本で維管束植物(シダ、裸子、被子植物)の減少傾向が現状のまま続くとした場合、100年後までに370~561種の絶滅が起こる可能性があることを、国立環境研究所の角谷拓(かどや たく)主任研究員と九州大学大学院理学研究院の矢原徹一(やはら てつかず)教授らが示した。 植物1618種の絶滅リスクを分析した結果で、その絶滅速度は世界全体の維管束植物で推定されている値の2~3倍にも相当する。国立・国定公園の区域内と外で個体数の減少傾向を比較したところ、公園内では減少傾向が最大で60%程度改善されていることも確かめた。絶滅危機を警告する定量的な分析として注目される。 国立環境研究所、日本自然保護協会、徳島県立博物館、神奈川県立生命の星・地球博物館、神戸大学、岐阜大学、愛知教育大学、北海道大学、熊本大学、人間環境大学、横浜国立大学、
燃料電池の電極に使われている白金触媒の能力をはるかに超える水素酵素(ヒドロゲナーゼ)電極の開発に、九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の小江誠司(おごう せいじ)教授らが世界で初めて成功した。酸素に安定な酵素ヒドロゲナーゼ S?77を阿蘇山で発見し、燃料電池の電極の触媒としてその驚異的な性能を実証した。 高価な白金に変わる将来の燃料電池の電極材料に、新しい触媒を開発していく一歩を踏み出す成果として注目される。名古屋大学との共同研究で、6月4日付のドイツ科学誌Angewandte Chemie International Editionオンライン版に発表した。同誌は表紙に、この酵素を阿蘇山で見つけたイメージをイラストで掲げて、成果をたたえた。 水素と酸素から電気を作り出す燃料電池は、次世代の発電デバイスになりうると有望視されている。ヒドロゲナーゼは鉄とニッケルを活性中心に持つ金
アレルギーが急増しており、より有効な治療法が求められている。免疫細胞の一種のマスト細胞がアレルギー反応の原因となるヒスタミンなどの化学物質を放出する仕組みの一端を、九州大学生体防御医学研究所の福井宣規(ふくい よしのり)主幹教授らが解明した。 ヒスタミンが放出される際に、DOCK5というタンパク質が重要な役割を果たしていることを見つけ、その仕組みも確かめた。アレルギー疾患の治療法開発の新しい手がかりになる成果で、6月9日付の米科学誌Journal of Experimental Medicineオンライン版に発表した。 花粉症、ぜんそく、食物アレルギーなどのアレルギー疾患の頻度は年々増加している。生活の質を低下させるだけでなく、まれに生命を脅かす。このアレルギーに関わっているのがマスト細胞で、アレルギー反応が起きるときに、細胞内の分泌顆粒が微小管によって表面へ輸送され、顆粒に含まれるヒスタ
赤血球には細胞内呼吸を担う小器官のミトコンドリアがない。赤血球が分化、成熟する過程で、ミトコンドリアや核を取り除いて、酸素を体内に運ぶ役割に特化するためとみられている。この赤血球からミトコンドリアが除去されるのは、新しいタイプのオートファジー(自食作用)によることを、東京医科歯科大学難治疾患研究所の清水重臣(しみず しげおみ)教授と本田真也(ほんだ しんや)助教らが解明した。愛媛大学との共同研究で、6月4日付の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。 研究グループは2009年にマウスの培養細胞で、通常のAtg5遺伝子が関わるオートファジーとは異なる、新しいタイプのUlk1遺伝子関与のオートファジーを見つけている。Ulk1遺伝子の発現を止めて新しいタイプのオートファジーが起きないようにしたマウスを作製したところ、その赤血球の中にミトコンドリアが大量に残っていた。野生型やA
大学院を修了して博士号を取得したポストドクター(ポスドク)の就職難は誠に深刻である。その実態の一端を、科学技術・学術政策研究所の小林淑恵(こばやし よしえ)上席研究官と渡辺その子総括上席研究官がまとめ、6月5日発表した。 それによると、任期付きで不安定なポスドクの人が毎年、「常勤で任期なし」の正規職員に移行する比率は、男性で7.0%、女性で4.4%、男女平均で6.3%になっていた。この率は、ほかの調査(慶応大グループが実施している「慶応家計パネル」)が示した、契約社員や派遣職員らから正規職員への移行率に比べると、極めて低かった。ほかの学歴の比較では、男性の正規職への移行率が特に著しく低いことがわかった。 研究グループは、文部科学省基盤政策課(当時)が実施した「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査-大学・公的研究機関への全数調査(2009年度実績)」の個票データを用い、研究機関や大学で任
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『科学技術 全て伝えます サイエンスポータル / SciencePortal』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く